【盂蘭盆会{うらぼんえ}】

116 軒先の薄き火影に…… 四句切れ、本歌取り

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  盂蘭うらぼんをよめる


軒先の 薄きかげに みちびかれ いつしかゆかむ 人のみわざへ


・のきさきの うすきほかげに みちびかれ いつしかゆかん ひとのみわざへ

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[通釈]

 盂蘭盆会を詠んだ歌

 ((がんの視点)) まだ暮れきっていない薄暗い中、歩く先々の軒先にぼんやりと浮かぶ提灯の影に導かれ、さあて、早く行こう。祖先の霊を祭る仏事へ。

 ((彼岸の視点)) 死んでしまったあとにぼんやりと見える提灯の影に導かれて、さあて、早く行こう。わたしの霊を祭る家族のもとへ。


[補註]

・四句切れ。


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軒先の 薄きかげに みちびかれ いつしかゆかむ 人のみわざへ

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[本歌取り]

  題しらず

239 行く末をたれしのべとて夕風に契りか置かむ宿の橘

◯わが死後を、誰に思い出せよといって、この夕風の吹くときに、約束をしておこうか。そういう人も思い当らない。今、香りの高く、昔を思い出させる宿の橘の花よ。

   右衛うえ門監道具もんのかみみちとも

『日本の古典 10 古今和歌集 新古今和歌集』河出書房新社「新古今和歌集」、整形引用者。


―――――

軒先の 薄きかげに みちびかれ いつしかゆかむ 人のみわざへ

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(令和元年七月二十八日)(二〇一九年)(夏歌なつのうた

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