異世界転生は究極のプロットのひとつである


 異世界転生モノがネット小説界隈で流行っていることは、みなさんご存知の通りだと思います。恥ずかしながら、私はつい最近まで異世界転生というモノに難色を示すような作家の一人でありました。


 文庫畑から見た〝なろうの世界〟とは、どこか最初にライトノベルが出た時の様に〝文章が稚拙で劣っている〟というような悪い印象が大きかったんですよね。


 しかし、実際にその世界に触れてみると、その世界は恐ろしい魔境でした。


〝なろうの世界〟は、最初こそ、異世界転生のプロットの素晴らしさに引っ張られるだけの素人作家でも一発当てられるような世界だったのだと思います。しかし、今の〝なろうの世界〟は、文庫の世界とはまるで違う進化を遂げた物語たちで溢れているんですよね。


 今の〝なろうの世界〟は、なろう独自の需要を最大限に埋めるために特化した物語で溢れており、とても素人が一発当てられるような世界ではなくなっています。


 読みやすさというベクトルと、魅力的な要素の徹底的な効率化を図られたその世界は、一般文芸やライトノベルとは完全に別の世界で――とても深く面白い世界であるでしょう。


 さて、異世界転生モノが流行った要因には様々な事柄があるとは思うのですが、その中で最も大きな要因に、プロットが素晴らしいという点があげられます。


 異世界転生の決まり事を守るということは、それだけで物語として完成し、さらに読者の気を惹くことも可能となります。


 異世界転生のプロットは、私にとってはひとつの完成形のプロットであると思います。


 完全オリジナルで物語を考えますと、異世界転生であれば簡単に作り出せる設定を組むだけでけっこう大変だったりするんですよね。


 こんな発明がされていなければ、恐らく〝なろう〟がこれだけ発展することもなかったんじゃないだろうかと思うぐらいです。


 今回はそんな〝異世界転生モノ〟のプロットの具体的な素晴らしさについて書こうと思います。



1 主人公が物語の主人公でありやすい。



 そもそも物語とは、何か事件が起き、それを解決するまでの流れです。


 この全てに主人公が関わることで、その主人公はようやく、その物語の主人公になれるんですよね。


 事件の解決に主人公が関わらない話というのは、絶対にしてはいけない夢落ちに近いタブーだと私は思っています。


 事件を解決しない主人公とは、ただの視点装置に過ぎず、ただの語り部でしかありません。はっきり言うと、こういった主人公は最終的な魅力に欠け、これが主人公である意味があるのか?と読者は疑問を抱きます。


 さて、異世界転生モノの話に戻りますが、異世界転生とは、まず主人公が死ぬという事件から物語が発生します。そこから転生するわけですが、この時点で主人公はもう事件に対して対応せざるを得ない状況なんですよね。


 そして、主人公はその事件を解決するために四苦八苦していきます。


 事件を解決するために、主人公が動く訳ですね。


 すでに主人公の下地が作りやすい構造となっているのは伝わるかと思います。


 これを素直に物語の最後まで続けるだけで主人公が主人公になれるのですから、素人にも優しいプロットであると言えるでしょう。



2 目的がしっかりしており、それが序盤に明記されることで、読者が楽しむ方向性をすぐに見つけられる。



 目的付けとは、意外と大切な要因です。


 物語や主人公に目的が無い物語とはふわふわしており、読者にとって〝何を読まさせられているんだろう?〟という疑問を抱かせます。そういった物語は、続きを読ませる魅力に欠けるんですよね。


 異世界転生とは、そこもクリアしやすい構造です。


 なぜなら、異世界に転生した時点で〝生き返りたい〟という目的を主人公が持てるのですから。さらに〝生き返るためには魔王を倒さなければいけない〟とすれば、主人公は嫌々であろうとも必死に魔王を倒すために戦うでしょう。魔王を倒すために〝聖剣〟が必要であれば、聖剣を入手するためにも行動もできます。


 さて、ここで話しておきたいのは、物語とは小さな事件やエピソードの積み重ねであるという事です。


 物語にとっての最終目標が序盤に明記され、そこに向かって奮闘する主人公を描く。


 これはジャンプ漫画でもよくある構造です。


 NARUTOなら火影になりたいという夢があって忍者として奮闘しますし、ワンピースであれば海賊王になるという最終目標があり、そのために仲間を集めていくストーリーですよね。


 個人的な考え方になるのですが、もしも異世界転生を書く場合〝生き返りたい〟というのはとてもシンプルで強い基礎プロットに含まれる動機だと思います。もしも主人公が〝生き返りたくない〟人間であった場合、その時点で異世界転生としての良さを少し削ることになります(他に物語の最終目標がしっかりとしていれば良いんですけどね。そこについては一考すべきだと思います)



 プロットとして補足が必要そうな理由は上記の二つぐらいでしょうか。


 他にも異世界転生のプロットには素晴らしいところがたくさんあります。


 それは例えば、


◎物語的な二種類の面白さを組み合わせることが容易

 (私が4話目に話した奴です)

◎異世界という読者の知らない世界を、何も知らない主人公と共に体験できる。

 (舞台装置の説明が楽であるという事)

◎現代的な価値観を持ち込むことが容易でありながら、特殊能力を持ち込むことも容易。

◎現実世界では陳腐な設定でも、異世界と免罪符があれば当たり前のことにできる。

 (魔王とか、女神とか、魔法とかですね)


 等の理由でしょうか。


 とりあえず、異世界転生のプロットって奴は本当に素晴らしいと思って頂けたでしょうか?汗


 興味が出ましたら、書いてみるとけっこう面白いですよ。


 私も異世界転生モノを書いているので――是非!!(ダイレクトマーケティング笑

『異世界で俺は神になる!』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054889402205


 書き終えてからの次回作に活かす反省点も、近況ノートにありますから、気になりましたら――是非!!!(ダイレクトマーケティング2笑

『異世界で俺は神になる!』の反省点等、あとがき

https://kakuyomu.jp/users/Hosiura/news/1177354054889916778

 *反省の方は良いカ所のことはまとめてありません。悪い所について書き出し、次回作の目標を立てています。



 本日もお付き合いいただき、ありがとうございました!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る