50才になったら

定食亭定吉

1

 戦艦みかさの復元を見物に、横須賀市へやって来たAとB。

「懐かしいな」

Bは元自衛隊。海軍に所属していた。復元とはいえ、戦艦を久々に見た彼女。

「そうなの?」

相槌を打つA。三十才独身男。二人は同じシェアハウスに暮らす。

 京急線で一本。都内から一時間ぐらいでやって来た。互いに年齢も近く、異性の友達同士だった。

「しかし、お前と二人きりとはな」

男勝りなB。ミニスカートがおかしく見える。

「みんな平日は仕事だからね」

A は就活中。Bはシフト制勤務。

「なぜ、Bは自衛隊やっていたの?」

「お金のためだけれど、体、動かすの好きだからね」

「なるほどね」

「そう。柔道やっていたし、お前ぐらいなら投げられるよ」

芝生でふざけて背負い投げするB。

「おい!」

スキンシップを取るのが好きなB。二人の仲には不思議な友情があった。

「中には入るぞ!」

手を引っ張り、Aを連れ出すB。

「しかし、何でここに来たの?」

「いや、私のお父さんが戦艦プラモデル作りが趣味だったから」

「えっ?関係ないだろう?」

時々、意味不明な事を言うB。

 係員に入船料を支払う、戦艦内へ。

「やっぱり、すごいな」

童心に返るB。

「うん」

解説を丹念にチェックするようなAに対し、Bは無邪気に大砲など、触れる事の出来る展示物に食らいつく。

「おい!」

迷子を予想し、仕方なくBを追うA。航海しているわけでないのに、何故か、あっという間に、戦艦の上部に上がった。

「眺めいいな!」

嬉しそうなB。

「しかし、何で展示されているのだろうな?」

「知らないよ。でも、平和の大切さを知らせるという感じではないな」

「そうだね。まあ、悲痛さばかりを伝承しても仕方ないしね」

急に真面目な会話をする二人。

「ここに立つのも怖いぜ、Bは平気なの?」

「みんな怖いでしょうね」

「それに相手の砲丸も受けるわけだからね」

「うん」

スマホで何枚か写真を撮り、高台から降りる。

「さあ、適当にぶらついたら帰ろうぜ」

「うん」

二人は一通り、戦艦内をぶらつく。平日だったので、他の見物客はいない。

「何か貸切りみたいな感じだぜ」

「平日だといいね。空いているし」

「それに。。。」

言いかけたA。

「何?」

「君とデート出来るし」

一瞬のうちに手を繋ぐ。

「おい!触るな!」

怒り出すB。

「俺が戦争に行ったらどうする?」

「どうもしない」

「付き合ってくれ!」

勢いだったA。

「今は無理だけど、五十才になって、お互い独身だったら結婚しようぜ!」

「ありがとう❗」

「それと、今の動作、気持ち悪かったけれど、男らしかったぜ」

「。。。」

何と返答していいか困惑するA。引き分けな感じだった。

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50才になったら 定食亭定吉 @TeisyokuteiSadakichi

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