<第2話『光線銃を開発した男』>
■上演時間:10分
<登場順キャスト>(【】内は劇中表記)
■ナレーション【N】♂♀問わず 年齢自由
■鳥海由宇乃(とりうみ ゆうの)【ユノ】♂ 20歳
主人公。考古学を選考している大学生だが、
ほぼ授業には出ず、気ままな生活をしている。
■鳥海拓弥(とりうみ たくや)【タク】♂ 47歳
主人公の父。由宇乃の母が失踪したのを追って、
世界中を転々と放浪している。現在の消息は不明。
■真堂那弾(しんどう なびき)【ナビ】♂ 20歳
もう一人の主人公。チャラチャラした性格で流行に流されて生きている。
運が良いのか賭け事にめっぽう強い。
■テムジン秘書【テム】♂ 50代
ダブアールジャパンの社長秘書。モンゴル系の屈強な男。
実質的な日本支社の実権を握っている。
■サフラン博士【サフ】♂ 年齢不詳(お任せします)
レールガンの設計者。ダブアール社の前身「ロケットリード社」の時から
“会長”直属の研究者だった。現在は退社して穏便に暮らしているようだが…。
■謎の女性【謎女】♀ 年齢不詳(お任せします)
黒い上下スーツと帽子・サングラスの外国人女性(国籍不明)
FBIの様な印象で、銃の扱いには慣れていそう。
■受付嬢【受付】♀ 20代前半 (【謎女】と兼任を推奨)
ダブアール日本支社の受付係。
■広報室長 北条【ホウ】♂ 40代
ダブアール日本支社の広告塔で、弁がよく立ち、TV出演も多い。
社の内情のことは殆ど知らされていないはずだが…。
鳥海拓弥と組んで、何か動きがあるようだ。
■千川探偵(せんかわ)【セン】♂ 20代後半
北条に雇われた私立探偵。
レールガンの使用に関する調査の様だったが、
今回、雇用主の北条と敵対関係となる。
_____________________________
【N】「西暦2050年、日本。テクノロジーはますます進化し、
人類は今まで以上に快適な生活を送っていた」
【N】「今、世界中で一大ブームを巻き起こしている『光線銃ダストラス』。
高額なモデルガンだが、日本でも大人から子供まで誰もが熱狂していた」
【N】「1000個限定のプレミアアイテムに群がる民衆。
その陰で、更なるプレミア価格を持つとされる“引換券”が、
何故か父親から届けられた一人の大学生『鳥海由宇乃(とりうみゆうの)』」
【N】「この物語は彼を中心に、巨大企業が目論む未だかつて無い“闇”に、
飲み込まれ、翻弄されていくことになる…」
【N】「GUNTEST 第2話『光線銃を開発した男』」
… … … … … … … … … … …
【ユノ】「オヤジから届いた手紙…。
10年以上も勝手に放浪しているヤローのことなんて、今更どーでもいいが…」
(“引換券”を手に取る)
【ユノ】「問題はコレだ。ネットで500万のプレミアチケット。
なんでオヤジがこれを…ん? 地図も入ってる…。
これ、日本じゃないな」
【ユノ】「(手紙を読もうか迷う)………ッって、しょうがない読んでやるかっ!」
(手紙を開く)
【タク】「この手紙が、無事オマエに届いていることを切に願う。
今までの事は本当に申し訳なく思っている。
この10年、私は母さんの行方を追い続け、オマエには何もしてやれなかった。
世界中を飛び回っていたのは、母さんの足取りが世界中にあったからだ。
私は学者でアイツは冒険家…。オマエにも色々苦労を掛けたことと思う。
私はイギリスのセントヒルで…1年前、ある事実を突き止めた。
それが分かったとき、私は母さんを追うのを辞め、
ある場所へ旅立たねばならなくなった。
もうオマエとも会えないかもしれないが…しかしそれでも、
これからのことをオマエにも知っておいて欲しい。
それが同封した“チケット”と“地図”だ。
地図は海外のある場所を示しているが、今はまだ仕舞っておけ。
先ずは、そのチケットを持ってダブアール社の北条を訪ねていけ。
話はつけてある。
オマエが望むなら…、母さんに会えるチャンスはまだある。
だが、決めるのはオマエだ。約束は出来ない。
この手紙を無視することも出来るが…オマエの好きにしろ。
一方的ですまないが、今言えるのは…それだけだ。
私はそれでも…いつの日か、再会できることを願っている。父より」
【ユノ】「…何なんだよ、いきなり。
くだらねー冒険ごっこなんかに付き合っていられるかよ」
【ユノ】「このチケットだって、本当に500万で売れるんなら、
いっそ売っ払っちまおうかぁ…」
【ユノ】(考え込んで)「だがまあ…しかし。母さんのことは確かに気になるしな。…はぁ。なんだかろくでもない人生って感じがするが…。明日、行ってみるか」
(電話が鳴る)
【ユノ】「はい、もしもし?」
【ナビ】「(緊迫して)……ユウノか?」
【ユノ】「ナビキ? どうした。さっきはえらい興奮してたけど」
【ナビ】「ヤバイ。あの銃、ヤバイよ」
【ユノ】「銃? …例の“レールガン”か?」
【ナビ】「あれ、オモチャなんかじゃない。…なんなんだ、あれ。
目の前で、ひ…人が…!(口を押さえられて)うっ…うう…やめろ…
(ブツッと通話が切れる)」
【ユノ】「ナビキ! おい、ナビキ!! ん? ショートメール?
ナビキの現在位置…学校か!…待ってろ!!」
(家を飛び出す)
_____________________
【N】「ところ変わって、ここは山奥にあるバイオ研究所」
【テム】「ここにいらっしゃいましたか。探しましたよ博士」
【サフ】「(背を向けたまま)
…思惑(おもわく)通りの売れ行きで良かったじゃないか」
【テム】「あなたの設計・開発があってこそですよ、サフラン博士」
【サフ】「フン。開発がすんだら解雇、都合良く切り捨てておいて、
今更いったい何の用だ?」
【テム】「新発売の『ダストラス』。我々の計画のことはご存知かと思いますが…。
ひとつ予想外の事態が起きてまして…」
【サフ】「“照射”による副作用か」
【テム】「…ご存知でしたか…。
まだ数件の事例で、今のところ表には出ていませんが…。
もしや、あらかじめ何かお気づきだったのでは、と思いまして」
【サフ】「私は会長からの指示どおりに開発を進めた。それだけだ」
【テム】「…会長も、知っていたと…?」
【サフ】「何も知らんな。研究を奪ったのはお前たちだ。後は何とかするんだな」
【テム】「…わかりました。ではもう一つ、これを見てもらえますか?」
(何やら鉱石のような物体を机に置く)
【サフ】「…こ、この石…これは…まさか!?」
(手を伸ばすが、テムが再び懐にしまう)
【テム】「おっと。やはり…ね。これで概ね確信が持てましたよ。
会長があなたに何を頼んでいたのかをね」
【サフ】「テムジン…一体どうするつもりだ…」
【テム】「さぁ。ただ、私もしがない雇われの身ですから…。
上とのより良い交渉材料に使わせてもらいますよ。では、失礼致します」
(退出。サフラン、電話をかける)
【サフ】「…私だ。会長に繋いでくれ。緊急だ」
_____________________________
【NA】「一方、ユウノはナビキの安否を確かめる為、一路、
通っている大学へと向かっていた。位置情報は“学生会館”を示している」
【ユノ】「スマホの位置情報…、よし、ココで止まってるな…ナビキ!」
(長身の男に衝突する)
【ユノ】「ッ! ってーな、気をつけろ!…ウッ」
(別の誰かから背中に銃口が突きつけられている)
【謎女】「この銃口は、今流行のレールガンではない。分かるな?…乗れ」
(見知らぬ外車に乗せられる。車内。銃の女と、長身の男は運転手として同乗)
【謎女】「さて…。どこへ向かう途中だったのかな?」
【ユノ】「…」
【謎女】(銃口をさらに押し付け)
「フ。少しの間、おとなしくしていてもらおうか」
(車の走り去る音)
____________________________
(大学の学生会館ロビー)
【ナビ】「う…うぅ…。ここは…、大学の…。…そうだ! 例の銃!
…どこにもない。盗まれたのか…! くそっ。せっかく手に入れたのに…。
いや、そんなことよりも…。さっき遊ぼうとしていたら…先輩の“顔”が…。
先輩? …いない」
(立って歩き回り)
【ナビ】「そういえば、今、何時だ?もう暗くなり始めている。
…ん? ユウノからの着信。そうか、あいつに連絡していたんだっけ…。
今どこに…。ん? あいつ…、どこに向かってるんだ?? …山?」
________________________
【NA】「ここは、ダブアール社の一室。社員の北条がユウノを待っていた」
(ノックの音)
【受付】「北条室長。お客様がお見えです」
【ホウ】「どうぞ」
(ドアが開いて、一人の男)
【受付】「失礼します」(退出)
【セン】「…北条さん。一体これはどういうことですか」
【ホウ】「探偵さん。今日は…あなたとのアポはありませんよ。
それに…どうしました?その顔の包帯は?」
【セン】「あなたの指示通りに動いただけなのに、この顔…」
(包帯を取る:アドリブ)
【ホウ】「ほう。確かに想定外ですね。こんな近くに“適合者”が居るとは」
【セン】「あの“レールガン”の光線は人畜無害じゃなかったのか!」
【ホウ】「わたしはこの会社の広報室長でしかない。専門的な情報など、
何も持ち合わせていませんよ?」
【セン】「そんなはずはない! 依頼ついでに調べさせてもらったが、
ダブアール社の前身、ロケットリード社のときには、
宇宙工学の権威3人がトップに君臨して“ドクター”と呼ばれていた。
そのうちの一人は日本人。
…あなたはダブアール創設の時、会長じきじきの指名でこの会社に入ったそうだな。創設メンバーということになる」
【ホウ】「確かにそうですが…私の経歴など今は関係ないでしょう?」
【セン】「こうなることが分かっていたんじゃないのか?
(頭痛を伴い)ウッ…オレのような人間が現れることに…」
【ホウ】「一つだけ、お聞かせ願いたい。記憶に…。何か変化は生じましたか?」
【セン】「…ああ。とても口にしたくない内容だがね」
【ホウ】「フフフフ…、クックックッ…ッ、ハッハッハハハハ!!
そうでしたか、見えましたか!(銃をつきつけて口調が変わる)…ご苦労だったな」
【セン】「…それは、レールガンってわけじゃなさそうだな」
【ホウ】「もちろん実弾だよ。だが安心したまえ、殺しはしない。
他にもいろいろと聞きたいことがあるのでね」
【セン】「…フッ、なめるなよ。これを見な」
(ジャケットを広げると、ICレコーダーが動作している)
【ホウ】「…盗聴…か。くさっても探偵というわけだな」
【セン】「コピーはリアルタイムで送られてる。週刊誌に売ってもいいんだぜ」
【ホウ】「…用意周到じゃないか。…何が望みだ」
【セン】「元に戻して欲しい…と言いたいところだが、
今は、知らなきゃいいことを知っちまったんでね。それを確認したい。
…サフランって人に会わせてくれ。あんたなら居場所を知っているはずだ」
【ホウ】「…知らん名だな。そんな社員が居たような気もするが」
【セン】「3人のドクターの一人が“ドクターサフラン”。
初期のレールガンの設計もしていた。知らない訳が無いんだがね…!」
【ホウ】「フッ…思い出したよ。よく調べてる。まさか、そのサフランとはね」
【セン】「もう会社に居ないことは知っている。今はどこに?」
【ホウ】「何を聞くつもりだ」
【セン】「一緒に来たらどうだ? 会ってから話す」
【ホウ】「…良いだろう。だが、身柄は拘束させてもらう。妙な気は起こすなよ。
キミは我が社にとっては今や危険分子なのでね」
【セン】「今すぐ動くことが条件だ! さもなければこの情報を…」
【ホウ】「…電話を掛ける」
(どこかへとダイアルする北条)
【セン】「…北条です。…いえ、彼は未だ来ておりませんが、
“適合者”を見つけました。予定を変更させて下さい。…はい…はい、
代わりの者をつけますので大丈夫です。護衛も2名ほどお願いします。
…かしこまりました」
(電話を切る)(銃口を突きつけたまま)(口調が丁寧に戻る)
【ホウ】「…さて。迎えが来るまで、もう少しお喋りしましょうか…」
【N】「こうして、最初の事件が動き出した…。
レールガンは一体何の為にもたらされたのか…。
ダブアール社の思惑(おもわく)とは一体…? 次回へ続く」
_________________________
【N】「次回、GUNTEST」
… … … … … … … … … … … … … … … …
【ユノ】「山の中につれてこられたオレは、意外な人物に引き合わせられた。
こいつならオヤジの居場所を知ってるかもな」
… … … … … … … … … … … … … … … …
【謎女】「あなた、自分の血筋を分かっていないようね。あなたはね、
世界中から狙われる存在になるのよ」
… … … … … … … … … … … … … … … …
【ナビ】「ユウノ…関わるな、お前は関わっちゃいけない…!」
… … … … … … … … … … … … … … … …
【サフ】「ずいぶん、派手にやってるようだね、北条くん」
… … … … … … … … … … … … … … … …
【テム】「社長…。私を“会長”に会わせて下さい」
… … … … … … … … … … … … … … … …
【タク】「私は、かの地で待ち続ける。来るのはオマエか、あるいは…」
… … … … … … … … … … … … … … … …
【N】「次回、第3話。『暴走するサバイバルゲーム』へ続く」
<END>
『声劇台本』【GUNTEST】<凶弾の向こう側> 西京功飛(さいきょう かつひ) @saikyo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。『声劇台本』【GUNTEST】<凶弾の向こう側>の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます