<第1話 空前のガンブーム>

<キャスト>(【】内は劇中表記)


■鳥海由宇乃(とりうみ ゆうの)【ユノ】♂ 20歳

主人公。考古学を選考している大学生だが、ほぼ授業には出ず、

気ままな生活をしている。


■真堂那弾(しんどう なびき)【ナビ】♂ 20歳

もう一人の主人公。チャラチャラした性格で流行に流されて生きている。

運が良いのか賭け事にめっぽう強い。


■ルース社長【ルー】♂ 20代後半

ダブアール日本支社の社長。日系アメリカ人。若くして冷徹な経営者。


■テムジン秘書【テム】♂ 50代

ルースの右腕。モンゴル系の屈強な男。実質的な日本支社の実権を握っている。


■広報担当 北条【北条】♂ 40代

ダブアール日本支社の広告塔で、よくTV出演している。

弁は立つが、実は社の内情のことを殆ど知らされていない。


■通行人A【A】♂ 年齢自由


■通行人B【B】♂ 年齢自由


■アナウンサー【アナ】♂♀問わず 年齢自由


■ナレーション【N】♂♀問わず 年齢自由

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【N】「西暦2050年、日本。テクノロジーはますます進化し、人類は今まで以上に快適な生活を送っていた」


【N】「今、世界中で一大ブームとなっているのがレールガンと呼ばれる“光線銃”だ。それは精巧に作られたモデルガンで、老若男女を問わず話題の的となっていた」


【N】「その技術を一手に引き受けて製造しているのが、ダブアールと呼ばれる元ロケット製造会社だ。今や世界的な玩具メーカーとなっている」


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<街頭>(※可能であれば雑踏BGM)



【A】「お~、スゲー。また“ダブアール”のCM流れてるな~」


【B】「ホントホント。また新しいオモチャでも開発したのかねー。今や世界有数のメーカーだからなぁ。就職倍率も超高いし」


【A】「俺たち、書類選考でソッコー落とされたもんなぁ。技術力ハンパ無いよ、あそこ。しかも、新しい社長になってからというもの、もうイケイケだよな~」


【B】「わぉ! 見てみろよ。今回の光線銃はスゲー!透視センサーが付いてるってよ。ノゾキ出来るじゃん♪」


【A】「バーカ、そんなオイシイ機能ついてたら、それだけのために買い占めまくるっての。所詮オモチャだよ。あと、光線銃じゃなくて“レールガン”な」


【B】「はいはい。…でもほら、値段よく見てみろよ…98万円って」


【A】「オモチャの値段ってレベルじゃねーぞw」


【B】「でも、金持ちは買うんだろうなぁ、マニアとかさ」


【A】「変わった商品ばっかり、次々に出してくるよなダブアールは」


【B】「よほど、変人の社長なんじゃね?」


【A】「言えてる言えてる」

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<ダブアールジャパン 社長室>

(ルースとテムジン、高層ビル最上階から眼下に街並みを眺めている)


【N】「ダブアール・ジャパン、社長室」



【テム】「これで、宜しいですか社長」


【ルー】「あぁ、なかなかのインパクトだ。まずはコレでいい」


【テム】「しかし、98万円での販売とは…。原価は1000万円を超えるというのに」


【ルー】「…口が軽いぞ。今回の計画には強力なスポンサーが居ることを忘れるな。機嫌を損ねたくは無い」


【テム】「…はっ。申し訳ありません」


【ルー】「まずは、限定版の1000(いっせん)個、日本にばら撒け。誰の手に渡っても構わん。CMは今の2倍流せ」


【テム】「かしこまりました」


(電話が鳴る)


【ルー】「私だ。…分かった。会長には予定通りと伝えておけ。全て順調だとな」


(電話を切る)


【ルー】「…私は本社へ飛ぶ。後はまかせたぞ」


【テム】「お任せ下さいませ」


(ルース退出)


【テム】「…フフフ。面白くなって来たな。これから日本がどう変わっていくのか、見ものだな」

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<都内アパート1階>


(目覚ましアラームの音)(アラームを止める)



【ユノ】「ふぁぁ~よく寝たなぁ…アラーム何時にセットしたっけ…って! もう夕方じゃんかよぉ。ふう、また休みの日、潰しちまったな…(あくび)ふぁぁ……ん?なんだ?郵便受けに何か入っているような」


(郵便受けを見て、封筒を取り出す)


【ユノ】「ん?なんだこれ?(開封する音)チケット?」


【ユノ】「なになに、限定版・ダブアール新製品優先購入券“タイプA”?」


【ユノ】「へぇ、何かのキャンペーンかな。応募してたっけ?…ちょっとネットで見てみるか…どれどれ…タイプA…と。…うそぉ! なんだこのプレミア価格…500万円?…マジかよ」


(電話が鳴る)


【ユノ】「だれだよ…(通話する)…もしもし? おおナビキか」


【ナビ】「(おい、例のアレ、手に入れたぜ!!!!)」


【ユノ】「え? 何のこと?」


【ナビ】「(お前バカか! 今、TVで持ちきりのアレに決まってるだろがよ!)」


【ユノ】「テレビ?」


【ナビ】「(とにかく、あとでまた電話するからよ! いやぁ、たまんねぇなぁコレは。じゃあな)」


(電話が切れる)


【ユノ】「お、おい、ナビキ! …とにかくテレビ見てみるか」


(TVを点ける)(TVから流れてくる音声:ワイドショー)


【アナウンサー】「さあ、今回の目玉はまさにコレです! ダブアール社が開発した最新の光線銃!その名も…『ダストラス』! その実物が今ここにやって参りました!」


(TVから聞こえてくる観客の拍手)


【アナウンサー】「えー、今回は解説に、ダブアール社の広報担当、北条さんにお越しいただいております。北条さん、ご紹介宜しくお願いします」


【北条】「はい! 今回の商品も非常に高額かと思いますが、まさに究極のオモチャ、なんですよ」


【アナウンサー】「と、言いますと?」


【北条】「小さいころあこがれたTVのヒーロー。大人になって忘れかけた遊び心。そこにインサートした今回の商品なんです。近未来を彷彿とさせるデザイン、素材も特殊合金を使用していましてね。重さはたった500g。何とペットボトル1本分ですよ!?」


【アナウンサー】「女性や子供でも大丈夫ですね!」


【北条】「今回のプロジェクトのコンセプトはですね…、もし遠い未来に、戦争が起きてしまったり、天変地異がおきたり、あるいはエイリアンが侵略したりしてね(笑)。まあありえない話なんですが、そんな空想の世界をゲームとして楽しめる様にと企画されたんですよ」


【アナウンサー】「ただ、今回はかなりの限定品だと伺っておりますが…」


【北条】「そうなんですよ。初回は限定1000個のみとなりますが、もちろん追加で製造中です。是非皆さんで手にしてみて、この感触を確かめて欲しいところですね」


【アナウンサー】「視聴者の皆様、転売・トラブルの無いよう、宜しくお願い致します」


【北条】「あ、そうそう。今回手に入れられなかった皆様には抽選で、次回の新商品を格安で購入出来る、限定のプレミアチケットを送らせて頂いております。タイプAとタイプBがありまして…それぞれ“もれなく”ゲット出来ますので、届いた皆様はどうぞお楽しみに!」


【アナウンサー】「北条さん、本日はありがとうございました!」


(TVを切って)


【ユノ】「コレ…とんだプレミアチケットだったんだな…。でも何でおれ宛に…? あれ? 差出人が書いてある。…鳥海拓弥(とりうみたくや)…オヤジから? 手紙も入ってるな」


【N】「突如、父親から送られたプレミアムチケット。そして子供から大人まで、空前の光線銃ブームに浮き足立っている日本。だが、このブームが巧妙に仕組まれた“罠”であるということには、まだ誰も気づいていなかった…」

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【N】「次回予告」


【ユノ】「音信不通だったオヤジからの手紙。そこには、ダブアールのプレミアチケットと建物の地図が入っていた。オレに“とある人物”に会うように書かれていたが…」


【ユノ】「次回、『第2話 光線銃を開発した男』。…このブーム、ただのブームでは終わらない気がする」

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