『声劇台本』【GUNTEST】<凶弾の向こう側>

西京功飛(さいきょう かつひ)

<プロローグ>

…ある晩、オレは夢の中で、銃口を突きつけられていた…。


ちょうどこの辺り…心臓の近く、身体のド真ん中だ。

それは凍えるように冷たく、深く押し付けられていた。


オレはすぐにでも目を覚ましたかった…だが、目を開くことさえ出来ない。

全身が硬直して動かなかった。


…これは、まさに“金縛り”だ。


必死にもがくと、両手両足の指先だけがかろうじて動くことに気づく。

俺は、残された意識を懸命に投げかけて、とにかく足掻いた。

足掻いて、足掻いて、どうにか振り解こうと思ったが、

その間にも銃口は次第に強く押しつけられ、息が苦しい。


これはもう、どうにもならない。


「最後に…俺に出来ること…」


俺はこの銃口の正体を見てやろうと思った。

目は開かないが、オレは、この見えない「銃口」を意識で必死にたぐった。


すると、そこには確実に“だれか”が居た。

誰かは分からないが、

これはそいつに突きつけられている銃口、それだけは分かった。

表情までは分からないが白い影…。


「こいつは…」


次の瞬間、一気に緊迫感が走る。

そいつはまさに、今、引き金を引こうとしていたからだ。


「…!!!…」


引き金が引かれる瞬間…一瞬だが、銃の形がハッキリと見えた。

見たこともない、映画の世界に出てくるような禍々しい黒い銃。


あとは、音も何も無く、ただ引き金が引かれた。

一瞬感じた凄まじい衝撃。だが痛みも血も何も無い。


…ただ記憶が崩壊していくさまを感じるだけだった…



『ピピピピピピピピピ…』


鳴り響く、いつものアラーム。


「…これが夢でなければ、いったい何なんだってんだ…?」


記憶には鮮明に残った夢だった。

もちろん胸には穴など無く、頭は妙にすっきりしていた。


尋常じゃない汗の量。このことを今すぐ書き留めておきたい気分だ。


だが、その後オレを待っていたのは、極めて平穏な日常。

平穏な月日が流れれば、都合の悪いことは忘れるものだ。



そう、オレは“都合よく”忘れていたんだ。

その銃が、現実に目の前に現れるまでは。



<「第1話 空前のガンブーム」へと続く>

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