第5話 賞金首討伐開始

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必要ランク不問【賞金首退治】

依頼者:冒険者ギルド


迷宮都市アーバル~港街イーマンス間で新たに盗賊が確認されました。

人数は不明、装備も不明。

まだ情報を集めてる段階なので詳細不明の盗賊です。

見かけたら逃げて詳細を最寄の冒険者ギルドに報告をお願いします。


賞金を検討中ですが、盗賊を退治した場合には首と装備を持って来てください。

盗賊と確認されしだい、装備の質で賞金を判断しお支払します。

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ガタガタ、ゴトゴトと揺れる幌馬車もどき。


俺とセレスは上記の依頼をやるために迷宮都市アーバル~港街イーマンス間の臨時幌馬車に乗っていた。


盗賊を退治するために行商人を装ってるため、冒険者ランクC(一つ下の冒険者ランクD相当に偽装するため装備の質をワザと悪くしてる)が3人と護衛は少ない。


俺とセレスは、そんな行商人の幌の中に居る。

理由は装備がためだ。

デドラⅡ世は俺達が冒険者として活動することを見越して、店売りで最高品質の

装備を用意し、遺産の一部として受け取った。

俺達はとてもFランク冒険者に見えず、盗賊も警戒するから見えない位置で待機だ。

(Fランクでも装備が良いため足手まといに成らないと判断され、同行を許された)


『これなら盗賊に狙われそうだ』


これから盗賊退治、否、盗賊討伐。

当然、人を殺すことになるし、殺されそうになることもあるだろう。

そもそも、訓練もしていない俺に盗賊を倒せるのだろうか?


あるじは深く考えすぎだ。 盗賊なんて襲ってきたら倒すぐらいでいいんだよ』


宿主は嫌だと言ってたら、いくつかの候補からあるじに落ち着いた。


「襲われることを気にしても仕方ない。うまく遭遇すれば倒せばいいだけ」


御者に聞こえるかもしれないので亡霊と同じようなことをセレスが喋ってくれた。


「それは分かってるけど、不安なモノは不安なんだよ」


頭の中ではドナドナの曲が流れているほど不安だ。


『気持ちは分かるけどな、でも大丈夫だ。

どうやっても、盗賊ごときに負けようがない』


何故そこまで自身たっぷりなのかが分からない。


「大丈夫、盗賊になんて負けるはずが無い!」


セレスも亡霊の言葉と一緒の言葉で励ましてるみたいで、何故か頭を撫でられる。


「…………もう大丈夫だから、撫でなくても大丈夫だ」


30秒近くも撫でられて、さすがに恥ずかしくなった。


そんな彼女の装備は、髪の色と同じ氷をイメージする大鎌に、白く青の刺繍されたローブだ。

セレスに似合っていて、身のこなしも自然で着慣れてる感がある。


対する俺のは、年季が入ったツーハンデッドソード(180cmの実在する大剣)、防具はできる鎧の新品でサイズ調整した物を装備している。

セレスとは違い、良い装備をしても着せられてる感がする。


そんな彼女、セレスも盗賊討伐は初めてと言うより、争いごとが初めてらしい。

生まれて(作られて)から一度も人と争ったことが無いのだ。


不安だ。


そんな俺達の中で亡霊だけが経験豊富で、一人で盗賊団どころか敵国の騎士団を倒したと言う。


不安しかない。


空は今にも雨が降りそうだし、

並走して歩いてる冒険者も、強面なだけで大したこと無い様に思える。


そんな不安が的中してしまったのだろう。

場所は離れた所に森が見える草原と言った場所で、ポツポツと雨が降り始めて来た時だった。


雨で少し足を止めた冒険者の一人が銃撃され、同時に迷彩服ギリースーツを来た盗賊が十数人出て来た。


「ニール!?」


「アラン、それより周りだ!!」


周りには何も無いように見える場所だったのに、あっと言う間に囲まれ、特に語ることなく護衛の冒険者は全滅した。


水蒸気銃スチームガンの三段撃ちか、手馴れてるね』


俺達は荷台の幌に隠れてるから攻撃を受けなかったが、


「た、たすけてく……れ……」


襲撃に驚いてる隙に御者もやられた。


「嘘だろう?」


あっと言う間に護衛と御者の冒険者が死んだ。

思わず口を開けて呟いてしまったが、セレスは気にしないように


「それじゃ、行ってくる」


と言って、大鎌のカバーを外してから幌の外に出る。

外は全員皆殺しにされてるはずなのに、まるで散歩するような気軽さで外に出て行った。

同時に聞こえる、盗賊たちの叫び。


あるじも、出るときは鞘を外してから行けよ』


「勝てるんだよな?」


『……何を指して勝つと言うかによる。

あるじが死なないと言う意味なら勝てるぞ』


覚悟は決まらないが、女性のセレスだけに任せるのも不安と言うか情けなくなり、

鞘を外したことで覚悟を決め馬車から降りると、辺りは死体だらけだった。


「え」


パッと見で冒険者の死体が1体(他の冒険者は見えない位置)、盗賊の死体が3体、盗賊はどれもセレスの大鎌で斬られていた。


「こいつ強いぞ、気をつけろ」


「こ、氷の魔女?」


「馬鹿、あれは80歳を超えてるババアのはずだ。

もう死んだって聞いたぞ」


動揺したのか、それまで喋らなかった盗賊たちの声が聞こえ、


「黙れ、殺るまで喋んな!!」


それをリーダーらしき盗賊が黙らせた。


『元傭兵か何かか? 妙に統率されすぎてるな』


盗賊が戸惑った隙に、セレスは威圧するように魔法で冷気を展開。

迷彩服ギリースーツが冷気で硬くなり動きを阻害し始めた。


一歩、周りを囲んでる盗賊たちが後ろに下がった。

それを見て情けないが、これはセレスに任せて隠れた方がいいか?と思ってたら


「危ない!!」


セレスに突き飛ばされ遅れるように銃声が鳴る。


衝撃で後ろに吹き飛ばされるセレス。

それをポカーンと見ていた俺は隙だらけで、リーダーらしき盗賊の接近に気づかずに首を斬られた。


「え……、ごふぇ」


口から血が出て倒れる。


「ん?なんだコイツ、やけに骨が硬い」


思わず愚痴ってる盗賊リーダー(?)が言う通り首を両断されなかったが、それでも即死の一撃だ。

呼吸は出来ないし、血が流れるのと同時に死が近づいてくるのを感じる。


(何処が死なないだ、嘘じゃないか!!)


声は出ないが、最後に文句を言わないと気が済まない。


『慌てるな、ここまでは


慌てるも何も死ぬまで時間がない。

これから逆転の策が有ろうとも、俺は死ぬ。


そんな俺に亡霊の本性を現したような言葉が発せられた。


『死にたくなかったら、体を寄越せ!!』

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