34 障壁を破るな!

『なんとか横に倒して頭を吹っ飛ばせないか?』


「地球の常識で考えるのはよくないですよ! どこぞの機動戦士みたいに、頭を取っても生きてる可能性もあります!」


「そもそも横に倒すっていうのが無理だよねぇ」


 もはやチャットは大喜利と化していた。一撃でイージスを倒すなんて無理難題、出てくる答えは一つだけだ。


『もう諦めて核使っちゃいなよ?』


 凄まじいUSA理論だった。


「だーめーでーす! 東京が死の街になっちゃいますよ!」


「おいお前ら真面目に考えろ! 今から突貫で核爆弾なんか仕掛けられる訳がねーだろ!」


 タイガが半分キレながらハンドルを回す。こっちは命をかけて撮影してるんだ、お前らも命かけて考えろ! そんな抗議の声も飛んでくる。


「横に倒すのはダメ、直立歩行で。爆弾を取り替えるのも無理。もちろん下からの攻撃以外は通らない……」


 メグルがメモ帳を叩きつけた。あまりにも理不尽。全く、どうやったらこんなオーバースペックの生物が誕生するのか? 誰かが戦闘用にデザインしたとしか思えない。


「まあ、実際は宇宙を漂うデブリや宇宙線などから身を守るための進化で——」


 そこまで思い浮かべてカケルの頭に一つの案が思い浮かぶ。毒ガス。イージスの障壁は原子レベルの大きさの物には反応していない。ならば毒ガスも障壁で防がれずに通るのではないか? カケルは早速チャットで検討作業に入るが……


『いやいや、事前に察知されて結局障壁張られない? 障壁張ったら空気も隔離されるし』


『そもそも宇宙から来たんだから呼吸してないでしょ』


「くそぉぉぉ!!」


 メガネを放り投げたい勢いだった。せっかく思い浮かんだ希望が一瞬で消えたからだ。


「いい線行ってると思ったのに……」


 障壁、その言葉が引っ掛かる。何も通さない……空気さえも。そこに何かの欠陥を感じていた。窒息? 違う。奴はもともと真空で生きている。カケルの喉元に、何かが引っ掛かっていた。


 何か——


 何か——


 何か——


『イージスの障壁を利用して蒸し焼きにすれば?』


 その答えは、ドイツの友人が見つけたものだった。


 瞬間カケルは叫ぶ。全てが繋がった快感、そして先を越された悔しさに身を任せて。


 その作戦はこうだ。イージスを爆弾の上に誘導し、障壁を全方向に展開させる。その状態で爆破すると、爆風や熱が障壁で逃げ場を失いイージスの体に襲いかかるという寸法だ。イージスが直立歩行で、爆弾を変えずに、今すぐにでも行える。まさに完璧な作戦……のはずだった。


「で、どうやって障壁を展開させるの?」


 カツコの一言がカケルの胸に突き刺さった。

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怪獣ウォーズ 水田柚 @mizuta-yuzu

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