32 オタク集合

 状況は依然として拮抗していた。最強の盾イージス、人類と超人が手を組んでなおその盾は破れない。


「父さん、これからどうなるの……?」


「変わらねえよ。ギンギラにもKフォースにもあの障壁を突破する術はない。結局あいつを殺すには最初の作戦しか残ってねえんだ」


 地中爆弾による攻撃。残された手は初めからそれしか残ってなかったのだ。


 ところでメグルは一つ気にかかることがある、さっきから横にいるカケルが異様なまでに静かなのだ。よく考えてみたらカツコを車に乗せた辺りから、タブレットを見つめたまま黙り込んでいる。


「カケル、ちょっとは実況しなさい! 今、世紀の瞬間なのよ!?」 


「姉さん、少し静かに。今友人と連絡をとっています」


「はぁ!?」


 つまり職務すっとばしてチャットをしているらしい。メグルは勢いよくタブレットを奪い、画面をスワイプする。そこにカケルが貴重な情報を流していたら大変なことだからだ。しかし画面を見たメグルは目を点にする。


「え? なにこれ?」


 全部英語だった。しかも片言ながら外国人とも会話ができるメグルが見たことも無い単語ばかり。なに話してるのこいつら? かろうじて分かったのは56の数字、おそらくチャットの参加人数だろう。


「今世界中の友人に連絡をとっています。僕に負けないぐらいの怪獣オタクに」


 メグルがその理由を訪ねると、カケルはいつものようにメガネを光らせた。


「決まっているでしょう? イージスを倒すためです!」


 正しくはイージスに如何に致命傷を与えるか? それが論題だ。


「先程の作戦、効果はありました。イージスに膝をつかせたのですから」


「なら、それを続ければいいんじゃない?」


「いえ、イージスの再生力は強靭です。残り五回の爆破で倒せるかは疑問が残ります」


「……ならどうするって言うんだいカケル君?」


 あれ以外に攻撃方法がないと言ったのはそっちじゃない? カツコは恨めしそうに文句をつけた。


「確かにその通りです。ですから僕たちに考えれる方法は一つ、いかに爆破のダメージを致命傷に昇華できるか? それしかありません」


 例えばイージスの急所に爆破を当てる、もしくは爆破そのものの効率を上げる。世界中のオタク達は様々な案を議論していた。


「なるほど。で、お前達の結論は?」


 タイガの疑問にカケルは胸をはる。


「全く纏まらないので、もっと情報を寄越せと結論でてます」


「——了解、KKC出動よ!」


 その役目は私たちにある。メグルの音頭に他の三人は勢いよく車に乗り込んだ。見せつけてやるのよ、私たちのオタクパワーを! そんな謎の勢いがその場を支配していた。

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