31 繰り返す――!
現場は油のにおいが充満していた。もがれた戦闘機の翼から燃料が漏れているのだ。メグル達がそこに到着するや否や、カツコとタイガが戦闘機に飛び付く。タイガが手慣れた感じで外部レバーを引きコックピットをこじ開け、カツコがベルトをナイフで切り裂きパイロットを引きずり出した。
「黄土隊長……? 俺はいったい……?」
カツコに担がれたパイロットが微かに声をあげた。どうやら喋る元気はあるらしい、その言葉を聞いたカツコがこう返した。
「あんた怪獣に助けられたんだよ。あの超人に……」
その顔にいつもの笑顔はなかった。あるのは困惑、そして――
「ほんっとお笑いものよね。怪獣退治の専門家が怪獣に助けられるなんて」
そしてカツコはおもむろに無線機を取り出した。
「本部へ、攻撃待て! 繰り返す、攻撃待て!」
そしてその返答を待たずに無線を切る。パイロットをメグル達に任すと、タイガを睨み付けた。メグルはこんな表情のカツコを見たことがない。
「タイガ先輩。知ってたでしょ、この状況になるの」
「いや、全くの予想外だ」
タイガは白々しく両腕を広げた。
「今私の命令で爆撃を止めてますが、私が一言やれといったらいつでも再開できる状況です」
さらにカツコは懐から手錠を取り出す。
「また、特殊怪獣秘匿罪の罪であなた方をしょっぴく可能性もあります。くれぐれもお忘れなきように」
横にいるカケルに聞いたところ、特殊怪獣秘匿罪とは怪獣の子供や重大な情報を意図的に隠した時に課せられる罪だ。つまり完全にアウトである。
「で、何の用だ?」
一方タイガはそれがどうしたと言わんばかりの態度だった。
「あの巨人はなんですか?」
「知らん」
「あれの目的は?」
「さあ?」
「あれをどこまで知っていますか?」
「知らないことばかりだ」
どうやら最後までしらばっくれるらしい。カツコはどうしようもなくため息をはいた。
「……じゃあ最後に、あれは味方ですか?」
「――味方です!」
気がつけばメグルは声をあげていた。後悔もしなかった。タイガがバカ野郎と目線を送るが言ってしまったものはしょうがない。タイガが慌てて口を開こうとしたとき――
「よし!」
カツコはいつもの笑顔を見せていた。先程までの殺気付いた目はなく、何か吹っ切れた表情だ。そして無線機を口元に持っていく。
「本部へ送る。信頼できる筋から情報を得た、直ちに超人への攻撃を中止。及び超人への援護を開始してください」
最後に特殊情報部隊隊長の責任でと付け足し、カツコは無線を切ろうとする。だが向こうはまだ意味を理解していないらしい、カツコは無線機片手に叫んだ。
「繰り返す! 超人を援護しろ!!」
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