12. 稚児
父を養子に
もっとも町の
西洋人よりも長く尖った鼻、鋭さでは鼻に負けず劣らずの凶眼、その上に
天狗とは
思い返せば、
さらに術を用いて人家に侵入しては、面白半分のように物を盗みだし、嫌がらせのような
祖父を大っぴらに
この災厄を
つまりは、女性の
春もたけなわの頃であった。
祖父がよく上空を飛行する町の公園。そこに白昼堂々、何人もの
桜の舞うなか、
祖父の襲来を恐れる町の者ら、ことに女は家からさえ出ず。
ただ情欲にすぐれる男たちのみが作戦の詳細を見守らんと公園へと押し寄せ、警官隊に制止される。
なんとも異様な光景であったと聞いている。
聞いている、というのは、私はその場に居合わせなかったからである。
早熟な同級生どもが公園へと
学校の
首筋にふと、
背後に首を向けると、祖父が
否、正確に言うなら、私のほうを
その両眼は普段にも増して
しかし何より異様だったのはその高い鼻であった。もはや赤黒いまでに
切なげなほどに、びくん、びくん、と脈動しつつ突進する鼻は、その切っ先を突き出してきていた。むき出しとなった私の尻を、貫通せんとばかりに。
羞恥。
恐怖。
そして、祖父の目と顔そして鼻にまぎれもない欲情を読み取ったことによる、更にまた倍加した恐怖。
黄色い泥のような軟便と
酸と腐敗の臭気をはなつ
高速で飛行してきた祖父は態勢を崩し、
地面にへばり落ちた祖父の身体は、糸の切れた操り人形のごとくだった。とりわけ、糞便まみれとなった首は、明らかにあらぬ方向へとへし曲がっていた。
それが祖父の
あれから数十年が経ち、私もまた祖父となった。
ことし十を数える
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