11. アカイクツ
「あの子は、異人さんに連れて行かれた」
頭がその言葉を飲みこんだ時にはもう、足は波止場へと
霧につつまれた
異人さんの
荷物を運んだり、簡単な作業機械をあやつっているのは、僕らの土地の人。でも、
節分の鬼の面のような赤らんだ肌、おとぎ話のテングみたいに長い鼻。そして、何もかも
やはりみんなが言っているとおり、異人さんたちは鬼やテング、いや、それよりもおっかないバケモノなんだろうか。膝が
みつかることなく黒い船の奥にまで忍びこめたのは、神様が助けてくれたとしか思えない。
僕たちの国から運び出すたくさんの
細くて白い足にはもう、赤い靴がはかされていた。
うわさの通りだ。靴は血みたいに真っ赤だった。
あの子の血を吸っているんだから当たり前だ。あの子の血を吸い取って、異人さんのつくった薬と混ぜて、体をすこしずつ作り変えてゆく。船が異人さんの星についたら、すぐにでも異人さんのお家にはこばれて――。
気配を感じてふりむくと、異人さんが立っていた。
もう何も考えられないまま異人さんに飛びかかった。右手に握った刃物が、異人さんの目のひとつを刺しつらぬく。僕たちとちがう、涙をながすことも、ぬくもりを宿すこともない目。そんな目があざ笑っているように見えた。
異人さんの目は、ぱっと数えられるだけでもあと十個はあるし、もし無くなってもいくらでも作れるというのに。
両手両足と胴体に巻きついたのは、異人さんの長い鼻。
全身を引きちぎられる前に見たあの子の顔、その
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます