5. 指
故郷を遠くはなれ、この東の島国で「仕事」を初めてもう五年になる。
警戒の手薄なこの国の文化財を持ちだして、闇ルートで売りさばくという稼業はなかなか
幸い、すぐ近くまで道路が切り
荒れ果ててがらんとした暗い本堂の真ん中に、目当ての本尊は放っぽりだされているも同然だった。
一抱えほどの大きさだが、小型のライトでさっと照らし出しただけで、その
黒い玉石を思わせる
売値への期待を通りこして、
いつの間にか、本堂いっぱいに膨れ上がっていた仏像は、燐光をおびた顔に、相もかわらず静かな笑みを浮かべて、しなやかな無数の指をこちらへと伸ばしてきていた。
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