エピローグ

 一時間後。ムアラ基地

 会議室に閣僚達とリッグス達が顔をそろえている。その中にはアコードの如月長官と一緒にソランも出席していた。

 「まずソラン殿に聞きたい。あの光る模様のある連中は何だ?」

 ハサン総司令官は口を開いた。

 「あれはフィランが連れてきたエイリアンです。「レギオン」という金属生命体です。性格は凶暴で好物は機械生命体や金属生命体です。動物や人間も食べます」

 ソランは答えた。

 「では乗物と合体して現れたがなぜかね?」

 ルキア国王がたずねた。

 「彼らは元々宇宙船と融合して生命体や資源を喰い尽します。時空の揺らぎを通過すると異世界から持ち込んだ物はここでは使えません。現地調達になります」

 ソランが答える。

 「なるほどね。だから廃船置場や退役した艦船と融合していたのか」

 納得するリッグス。

 「ブルネイに行く前の「かが」で初めて出会った時は心が読めなかった。でもあのレギオンと君は同じ気配がする」

 ダスティが核心にせまる。

 「僕達「宇宙漂流民」とレギオンは遥かな大昔は一緒の種族だった。それがある日、時空侵略者の口車に乗せられた。自分達のいた惑星は老いていて活力もなかったから移住可能な惑星を探す穏健派、住んでいる住民を追い出して強奪するかの強硬派に別れた。でもそれが時空侵略者のワナと気づいた時は遅くて戦争になった。周辺の惑星も破壊するような戦争でメチャクチャになり僕達は惑星を取られて放浪生活になって今に至る」

 ソランは重い口を開いた。

 「今でも自分達が住んでいた惑星を取り返したいと思っているのですか?」

 グラン大使がわりこむ。

 うなづくソラン。

 「それは地獄だぞ。国を取られるならまだしも惑星を取り返すというのは長い年月をかけて探し当てたとしても元に戻せるかわからないぞ」

 言い聞かせるように言うグラン大使。

 「それは異星人にも同じことを言われました。そうしないと種族の結束がなくなってしまうからね」

 ソランはうつむく。

 「君は地球へどうやってやってきたの?」

 頼仁がたずねた。

 「僕達はケンタウリアルファ座にある惑星アヴァロンから宇宙船に乗ってやってきた」

 ソランが答える。

 「僕達?」

 聞き返すダスティと頼仁。

 「僕達は時空管理局と一緒に時空侵略者からどう戦うかどう守るかレクチャーしながら監視活動をしている。レギオンを追って来た。そしてそれを招き入れた仲間も捕まえにやってきた」

 はっきり言うソラン。

 「時空管理局?監視活動?」

 どよめくリッグス達。

 ざわつく閣僚達。

 「君は宇宙船と融合しているの?」

 ダスティが聞いた。

 「ここでは護衛艦「いずも」と融合している。監視活動で地球には宇宙船がないからね」

 ソランが答える。

 「レギオンの目的は?」

 雅楽代が話を切り替えた。

 「フィラン達の目的は人類だけでなくこの宇宙の生命体を戦闘奴隷にして資源を奪う事だけどレギオンはただ資源や生命体を食い尽くして自分達が住みたいようにテラフォーミングするだけだ」

 ソランは答えた。

 「あいつらと戦ってわかったのはオッドアイに興味があって仲間にしたい感じだった」

 それを言ったのは本宮である。

 「それは私も感じた」

 雅楽代と京極がわりこむ。

 「それにレギオンは魔術が使えないようだ。射程のある光線で攻撃してきた」

 ウラジミールが思い出す。

 「波王の船体をえぐったらメタリックに輝く卵や艦船のおもちゃのようなものが大量に出てきた」

 リッグスがあっと思い出す。

 「メタリックに輝く卵はレギオンの卵で一度に数千個を生む。おもちゃめいた艦船はあれは波王が生み出す兵器の一部だよ」

 ソランが答える。

 「海底で僕達は程府達と戦った。そしたら程府はレギオンが融合した潜水艦を呼んだ。

行方不明の「ドミトリードンスコイ」と程府の部下の何隻かはレギオンだった。そいつらも射程のある光線を発射してきた。そいつらは魔術は使えないみたいだった」

 ザカリンが説明する。

 「潜水艦のレギオン?」

 驚くソラン。

 「その様子だとどこかにレギオンの総司令部と潜水艦隊基地がある」

 指摘するオニール。

 「そうするとどこかに情報収集船がいるわ。幸運なのは戦闘機や哨戒機がいない事ね」

 ローズが声を低める。

 「レギオンは重力が強い惑星では推力が得られなくて飛べないからだ。だから艦船を中心に融合している。それにもともと生物も生命体もいないような死の世界で生息するからこの宇宙も地球も環境が合わない」

 ソランは指摘する。

 「それはある意味幸運だ。でも地上部隊が現れるのも時間の問題だね」

 それを言ったのは如月長官である。

 「まずレギオンの巣を突き止めないといけない。波王がレギオンの女王だろう」

 マッシュがわりこむ。

 「レギオンと遼寧と楊兄弟は一緒にいたよな。金流芯一味もレギオンの海警船といた。中古船や退役した艦船を集めていたのも中国企業で国産空母や駆逐艦、海警船もレギオンが融合していたなら中国国内にある基地や韓国国内にも巣がいくつかあるのではないかと思っている」

 スタイナーが地図を出して説明する。

 「中国とは距離を取った方がいいだろう。検疫も強化しないとレギオンの卵を入れる事になってしまう」

 それを言ったのは月島司令である。

 「またレギオンと一緒にやってくるのでしょうか?」

 心配する頼仁。

 「俺達は二十隻くらいのレギオンのコアをえぐった。沿岸警備隊チームは五隻のレギオンを倒した。南海艦隊の艦船のミュータントも二十隻くらいコアをえぐって、戦闘機のミュータントを撃墜して魔物の群れも退治した。次はそんな作戦では来ないと見ている。中国政府はアメリカ政府に停戦交渉を打診してきている」

 リッグスが時系列を整理して説明する。

 「中国政府は今回の事は一部の将校がやったことで政府は関係ないと言ってきているがとうていそれは考えられない。韓国政府は日本から先に攻撃したと難癖をつけているが先に攻撃してきたのは楊兄弟だ。こっちには証拠の動画もある」

 月島司令は楊許比、許実の写真を出してタブレット端末を出した。

 「俺達がさっきのパトロールで録画していた動画だ」

 あっと声を上げる本宮。

 あの時は夢中で気がつかなかったがもしものためにいつも録画をしている。

 「南シナ海ではしばらくはにらみ合いが続くという事ですか?」

 頼仁がたずねた。

 「そう言う事になるだろう」

 うなづく如月長官。

 「そうだな。ここはいったん報告に戻ろう。何か動きがあれば再び集まる事になる」

 月島司令が提案する。

 「そうですね。我々も監視を続けます」

 ハサン総司令官はうなづいた。


 「頼仁さま。宝物庫に保管されていた貴金属類の中にこれがありました」

 ルキア国王とブルネイ人の執事が箱を持って近づいた。

 頼仁とダスティが身を乗り出す。

 「虹の眼だ!!」

 頼仁が思わず声を上げた。

 リッグス達が振り向いた。

 「なんでブルネイに?」

 「この時空遺物も流れに流れてやってきた。先人達は名前を変えてオブジェや名画の中に隠して保管していた」

 ルキア国王は困惑しながら答える。

 「日本にお返しする」

 執事が頼仁に渡した。



 北京にある中南海

 執務室に入ってくるフィラン。

 ジャスミン茶を置く龍詠平主席。

 振り向く安遜和首相達。

 「なにかお呼びでしょうか?」

 フィランはたずねた。

 「フィランよ。これはいったいなんだ?」

 ロイター通信や共同通信、その国の主要な新聞を机に出した。


 ”南シナ海でゲートスクワッドメンバーとアコード、自衛隊、ブルネイ軍と戦闘になる”

 ”中国軍と一緒に魔物の群れが出現”

 ”中国軍と一緒に韓国軍の「セジョンデワン」「デジョヨン」もくわわるのを目撃されているが韓国政府は知らないの一点張り”

 ”きっかけは韓国軍のミュータントが先に手を出した事”

 ”時空侵略者が連れてきたエイリアンは「

レギオン」である。生態はハチやイナゴと一緒で資源を食い尽くす。好物は人間、動物だけでなくマシンミュータントも喰う”


 いずれも第一面には退却する南海艦隊の艦船とそのミュータント。そして逃げ出す遼寧と「セジョンデワン」が映っている。他の新聞には退治された魔物の群れや新たに現れた宇宙生命体は「レギオン」であるという記事が書かれていた。

 「この戦いでブルネイから占領するハズだったがそれは失敗だ」

 声を低める龍詠平主席。

 「南シナ海にある周辺国と交渉して次に日本で台湾だった」

 呉孫健党軍事委副主席が核心にせまる。

 「その様子だとタイムラインが消えたね」

 武柵碁公安部長が怪しむ。

 「いや・・・それはなくて想定内」

 目が泳ぐフィラン。

 「作戦を持ってきたのは韓国側では?」

 孫零端外交部長が思い出す。

 「虹の眼を手に入れろ。それだけだ」

 龍詠平主席は声を低める。

 「そのつもりです」

 フィランはそう言うと退室した。

 

 

 ムアラ港

 港から海側に突き出た突堤に座る日紫喜。

 電子脳のすみっこにある表示板に中国軍の艦船の位置や商船、漁船の位置が表示される。

自分は潜水艦と融合したからもう慣れている。それにこの制御補聴器を外すと海底や海中の音だけでなく周囲の音まで入ってくる。

 近づいてくる六頭のイルカ。

 「私は潜水艦と融合しているの。任務以外は変身はできない」

 イルカの鳴き声に答える日紫喜。

 イルカ達の言葉や音波はわかる。一緒に泳ごうと言っているがこのは主要な港で基地も近い。

 「日紫喜さん。すごいねイルカと話ができるって」

 不意に声をかけられ振り向く日紫喜。

 彼女の横に座るダスティ、頼仁、リード、本宮と蜂須賀。

 「僕もクジラや動物と話ができたからわかるよ。他のミュータントから変な目で見られていたからね」

 リードはどこか遠い目をする。

 「俺は精霊としゃべっていて変な目で見られたことがあるからわかる。このチームは変な者同士が集まっている」

 本宮がフッと笑う。

 「そうかもしれないわね」

 うなづく日紫喜。

 自分だけ変なのかと思ったが世界は狭い。自分と同じように変な能力があるのは他にもいたのだ。

 「ウラジミール、オニール、カリナとザカリンの四人は黒海艦隊からウラジオストク基地に異動になる。それにゲートスクワッドの沿岸警備隊チームも発足する。海洋安保で来た三人のインド人も日本に常駐する事になる。これまでおとなしかった連中が動き出したね」

 蜂須賀は推測する。

 「そうだね。今までは事件だと思っていたけど点と線がつながった。二人の教官を殺害したのは中国のスパイだ。時空侵略者とレギオンの存在が世界中に知れ渡った」

 ダスティはうなづく。

 「頼仁。日紫喜。日本政府には感謝している。アジア沿岸同盟やゲートスクワッドの正式な発表やブルネイへの派遣といい中国軍の侵攻はなくなった」

 リードは頼仁の肩をたたいた。

 うつむく頼仁。

 「ダスティ。君が留学しなかったとしても事件は向こうからやってきて君は巻き込まれていたと思う。これからはレギオンの巣をたたく作戦やフィラン達やそれを利用する連中との戦いになる。海上保安庁としても君や頼仁さまの力は必要だ」

 本宮は真顔になる。

 「わかった。協力する」

 うなづく頼仁。

 「僕も協力する」

 ダスティはうなづいた。

 

 

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ダスティとオッドアイたち 失われた紺碧の眼と虹の眼 ペンネーム梨圭 @natukaze12

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