第32話 ブラックホールでアジャパー

 これは未来の話なのですが、実はわたくしシャーマンの能力があるシーマンで、ゆえにこの物語のキーマンであるわけで、決してただのくるくるパーマンなわけでも無いようなあるようなと自信満々に言えるわけではナイマンという選手が昔、南海ホークスにドイルという選手と一緒に入団しまして、ドイルというのが小柄な内野手で、しかも背番号1という往年のドン・ブレイザーを彷彿とさせまして、ああ、ブレイザーというのは日本でつけられた名前で、本当はブラッシングゲームと言うのですが、球団関係者が「これ、長すぎるわ。もっと短こうせんと、ファンが覚えられんわ」とブレイザーと省略したわけです。そのブレイザーがノムさんこと野村克也捕手に『シンキング・ベースボール』と言うものを伝授して、かの名将を生んだのです。ですから野村がプレイングマネージャーに就任した時、グランドでプレーしていた時はブレイザーがベンチで監督代行をしていたのです。しかし、野村はいわゆる『サッチー問題』で南海ホークスを解雇。南海ホークスの重鎮であった鶴岡一人とも絶縁してしまい、金田正一率いるロッテオリオンズに引き取られたのですが、両雄並び立たずで、カネヤンこと金田正一ともあまりうまくいかず、福岡でひどい目にあっていたのを西武(国土計画)の堤義明が買収して、埼玉に本拠地を移したライオンズに入団するのです。そこで、根本陸夫に出会ったことがセカンド・インパクトになるのです。


 さて、ブレイザー同様、日本人は外国人の長い名前をすぐ省略します。ローマ字でおなじみのヘボンさん。本当はヘップバーンさんなのです。オードリー・ヘップバーンと同じなのです。他にも探せばたくさんいるのでしょうが、面倒ですし、そんな余裕はいま、ありません。なぜなら、我らが宇宙艦隊は、宇宙海図にも載っていなかったブラックホールに引き寄せられ、そのあまりの引きの強さに、お手上げ状態なのです。

「このまま引き摺り込まれたら朕らはどうなるのじゃ?」

 わたくしは、脇汗かきまくりで、諸葛純沙に尋ねました。

「陛下、これはあくまで物理学上、一般相対性理論上で議論されていることなので、わたしもいまひとつ確信が持てないのですが、ブラックホールですら、今回わたしたちが引き摺り込まれるまで、論理上の天体でしたので、あえて言いましょう。この宇宙にはブラックホールとついになる、ホワイトホールなるものがあるそうです。なんでも引き摺り込むブラックホールとは逆に、ホワイトホールはなにもかも吐き出してしまうそうです。そしてブラックホールの入り口はホワイトホールの出口になっており、ブラックホールに吸い込まれた物質はホワイトホールから出されるそうなのです。ただし、どこにホワイトホールがあり、どこに吐き出されるかは全くわかりませんし、これはあくまで理論であり、天文学者の多くはホワイトホールを否定しています」

 純沙はごく冷静に言いました。

「我々がブラックホールから逃れられる可能性は?」

「ありません」

「ならば、答えは一つだ。朕たちはブラックホールにあえて突入し、ホワイトホールから脱出しよう」

「はい」

 わたくしたちの宇宙艦隊は全軍、ブラックホールに突き進むことにしました。反対する提督もいましたが、

「では、対案を出しなさい」

 とわたくしがひと睨みしますと、ビビって沈黙しました。

「よし、朕の旗艦『ブルー・ラビット・ホース』が先陣を切ろう。全軍後に続け!」

『ブルー・ラビット・ホース』は全速前進、ブラックホールに飛び込みました。

「ウォーッ」

 ものすごいGがかかりました。『科学忍者隊ガッチャマン』のゴットフェニックスが『科学忍法・火の鳥』を使った時の忍者隊の肉体的な苦しみのようです。

「グォーン」

 途轍もない加重です。ポンジュースになってしまいそうです。いいえ、バターではありません。わたくしは耐えきれず、気絶しました。


「孤雲庵さん、大丈夫ですか?」

 名無権兵衛全宇宙統合大学超名誉教授がわたくしを呼んでいます。

「気がつかれましたか。よかった」

「わたくしは一体?」

「日本涼国の痕跡を発掘している途中で気を失われたのです。この暑さです。無理をさせてしまったようです。申し訳ございません」

「いいえ、とんでもないことです。それよりも、純沙や十二神将はじめ、わたくしの家臣たちは?」

「あれ、あなたは今回お一人の参加ですよ」

「ええっ?」

「おそらく夢でも見られたのでしょう。あちらの木陰でおやすみなさい」

「あ、ありがとうございます」

 ああ、全ては夢だったようです。では当然純沙も夢か……


 わたしはショックを受けました。そこへ……

「名無超名誉教授の助手の諸葛純沙です。孤雲庵さまのお世話をするように言われました。どうぞ、よろしく」

「純沙……さん」


 さて、このあとどうなるのかは皆さんのご想像にお任せします。本稿はとても不評でしたので、ここでおしまいです。

 

 読んでいただいてありがとうございました。今後は『勉強家』シリーズでお会いしましょう。


 《おしまい》

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紛物・日本史 よろしくま・ぺこり @ak1969

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