二〇一九年お笑い系マイベスト
もう新年になって一か月以上経ったけれど、私が去年一年間で撃ち抜かれたお笑い関係のナンバーワンを勝手にご紹介。
ちなみに、こちらは拙作エッセイ『ペンギン自由帳』の「二〇一九年マイベスト」のスピンオフ的な立ち位置である。よろしければこちらもどうぞ→https://kakuyomu.jp/works/1177354054887276308/episodes/1177354054893970831
・マイベストコント バカリズム「image」オープニングコント
バカリズムさんの単独は、毎回オープニングですごく伏線を張りまくり、それをすべて回収するのだから、心地良いし印象に残る。ライブ「image」も、バカリズムさんが何かをイメージすることについてから語り始める。
バカリズムさんが、「ペットを飼っています」「名前はシロです」というと、聞いている人は犬を想像するんじゃないかと語る。そこへ、「背中を撫でようとするとヒレが当たっていたいです」という情報が加えられると、背びれが付いた犬を想像すんじゃないかとイラストと共に教えてくれる。
そんな話から、バカリズムさん自信に関する世間のイメージの話題、そして、単独前にバカリズムさんが想像してしまう、ライブが大スベりしたらどうしようという恐ろしい話へ……。
もちろん私は芸人さんではないので、これは想像するしかないのだが、「単独ライブでスベったら」ということは殆どの芸人さんが思い描いているもしもではないかと思う。
そのイメージを、生々しく、そしてとんでもない演技力を持って、舞台上に表現するバカリズムさんは、なんだか恐ろしくなっていく。もちろん、そのイメージも、十二分に笑わせる内容で。
そして、話が進むにつれて鮮やかに回収されていく、最初に出てきたワードの数々。もしもこれを舞台で見ていら、きっと鳥肌が止まらなかったんじゃないかと思う。
「スベったら」という仮定から笑いを取れる人なんて、世界中でバカリズムさんだけではないか。
お笑い芸人として、常に付きまとうプレッシャーを跳ね除けたようでかっこよかった。
次点で、空気階段「タクシー」、かが屋「なんで?(通称・年金を払っていない女)」、ジャルジャル「空き巣」。
・マイベスト漫才 爆笑問題「ENGEIグランドスラム 二〇一九年三月三十日放送分」
爆笑問題のこの漫才は、「芸人放談」の回でやりたいと思っていたけれど、我慢できずにここで語ってしまおうかと思う。
爆笑問題と言えば時事問題で、数か月毎に新鮮な時事ネタを見れることが一番素晴らしい所だとは思うけれど、あの日の漫才は私にとって、別の意味合いがあった。
タピオカブームの話から、プラスチック製のストローのゴミが問題になっていると話す田中さん。それに対して太田さんが、「韓国紙幣を丸めて、タピオカを吸えばいいじゃない」と。
田中さんに突っ込まれても、太田さんは続ける「ピエールタピ」……このボケの意味、そして馬鹿馬鹿しさに、私は爆笑していた。
実をいうと、私は電気グルーヴの、そしてピエール瀧さんの大ファンだ。瀧さんのレギュラー・しょんないTVは毎週見ていたし、大河ドラマの『いだてん』も瀧さんが出るのを楽しみにしていた。
そのため、去年の三月のコカイン使用で逮捕のニュースは、非常にショックだった。もう電気グルーヴの曲も聞けないし、瀧さんの演技も見れないのかと思うと凹んで、テレビのニュースの芸能人の一言一言に一喜一憂して、かなり神経をすり減らしていた。
だけど、あの日の爆笑問題の漫才は素直に笑えた。いや、笑っていいんだとすら思えた。
その理由は分からないし、太田さんが漫才以外の場所で瀧さんについてどう語ったかのかも分からない(ラジオで発言していたのかもしれないが、意図的に私がシャットダウンしていた)が、爆笑問題の漫才で瀧さんの逮捕をいじってくれたので、変な感覚だが救われた気持ちになれたのだ。時事漫才の底力を見せつけられた日だった。
次点で、ミルクボーイ「最中」、金属バット「無人島」、霜降り明星「クリスマス」。
・マイベストバラエティ番組 『アメトーーク!』二〇一九年四月二十五日放送分
テーマは「芸人持ち込み企画プレゼン大会」。ゲストは、麒麟の川島さん、アキナ、狩野英孝さん、Aマッソ、スタンダップコーギー、岡野陽一さん、金属バット。
別の回で散々言っているが、金属バットにハマったきっかけとなった放送。
ちなみに、金属バットがプレゼンしていたのは、「三浦マイルド軍団」だった。メンバーに無名の芸人さんを羅列した後に、さらっとミキと霜降り明星という超有名芸人を記していたり、フリップにマイルドさんの写真をたくさん貼っていたり、居酒屋でマイルドさんを胴上げしたら天井を突き破ってしまいそれがそのままになってしまっているという明らかに嘘なエピソードとか、荒唐無稽なその言動にやられてしまった。
普段は優しいマイルドさんがこの話をしたら怒るという話題も普通に言ってしまうし、それに対して怒られた時の小林さんの反応も面白かった。あと、藤本さんに「スーパーモデル」とツッコまれた友保さんの台への寄り掛かり方とか、一番ひな壇の外側にいるのに背中を向けている友保さんの座り方とか、色々と痺れてしまった。
あの放送で、「マイルドさんは闇営業を吉本から許されている唯一の芸人」という話があって、それに対して宮迫さんが「絶対にダメですからね」と言っていたけれど、数か月後の騒動を考えると、なんだ悲しい気持ちになってくる。
そして、もしも宮迫さんたちが闇営業していなかったら、マイルド軍団は実現していたのだろうかとか、考えてしまう。
このアメトーークと同時期に流れていたネタパレでのネタで、金属バットのファンになった。
ここから、私のお笑い熱が再発して、こうしてお笑い関係のエッセイを書いていることになっていると思うと、感慨深い放送である。
次点で、『水曜日のダウンタウン』二〇一九年五月八日放送分「新元号を当てるまで脱出できない生活」、『激レアさんを連れてきた。』二〇一九年八月三日放送分「18歳で交通事故にあって、記憶喪失になり人間の生活習慣全部を忘れてしまったが、奇跡的に社会にカムバックを果たした人」。
・マイベストテレビ名場面 『勇者ああああ』二〇一九年五月二十四日放送分「ゲームかくし芸大会」
二〇一九年に見たテレビ番組で、一番笑った瞬間を選ぶとしたら、『勇者あああああ』でマヂカルラブリーの野田さんが自作したゲーム「頼むぜ!ボルタリング姉さん」のプレイ画面を見た時だと思う。
野田さんが描いたと思しき、お世辞にも美人とは言えないボルタリング姉さんが、おおよそボルタリングとは思えない動きで壁を横移動してゴールを目指すというゲーム。ちなみに、ゲーム映像がこちらにあるので、参考にぜひ→https://www.youtube.com/watch?v=P0S0NWr8gzg
この、ボルタリング姉さんがプレイされた瞬間から、本当に笑いが止まらなかった。二回ほど繰り返してみた。
どこがツボだったのか、私にも説明が難しい。かさかさというボルダリング姉さんの動きとか、ボルタリング姉さんの絵とか、果物を取って体力回復というルールなのに果物が分かりにくいというところとか、そういうのは後々冷静に分析できるのだが、あの時は脳みそを揺さぶられるように笑った。
余談だが、私はテレ東キー局がない地域で暮らしているので、勇者ああああはニコニコのネット配信で見ている。その時のコメントも、的確に突っ込まれていたから笑いを増長させていたのだろう。
なんとなく覚えているのは、「昔のフラッシュアニメみたい」というコメント。確かに、妙な懐かしさを感じたし、インディーズでも高いクオリティのゲームを作れる時代に、それと逆行しているものを目の当たりにしたから、より可笑しかったのかもしれない。
次点で、『全力!脱力タイムズ』二〇一九年二月二十二日放送分の「粗品さんが一緒に漫才をしていたADがメイクを落としたコウメ太夫さんだと気付いた瞬間の顔」、『相席食堂』二〇一九年四月九日放送分の「山の中でカレー粉をつけて食べる食材を探していた金属バットの小林さんが南天を口に入れた時に専門家からそれは毒だと告げられて、すぐに吐き出した瞬間」。
・マイベストネット動画 『しもふりチューブ』より「【オフ旅最終回】男せいや1人語りあなたとは縁でつながっています【霜降り明星】30/30」
URLはこちら→https://www.youtube.com/watch?v=AQhXUyy83wc
これは続き物企画で、多忙な霜降り明星が、毎日更新しているYouTubeチャンネルのために一日のオフに密着する最終回である。せいやさんの自宅訪問から始まり、道中に寄り道したり質問コーナーをしたりした後に、千葉にあるホテル竜宮城で料理や温泉を楽しんでいる二人の様子を流している。
この最終回では、粗品さんは体調不良のために先に帰宅していて、残っているせいやさんはこれまでお酒を約二十五杯飲んでべろんべろんの状態で撮影されている。そんな中で、せいやさんの一人語りは、酔っ払っているゆえの支離滅裂さはあるけれど、所々でグッとくることを言っている。
例えば、芸人の道に誘ってくれた相方への、そしてマネージャーとYouTubeスタッフへの感謝、漫才への熱い気持ちと忘れずにいる初心、最終的には、視聴者との縁と自身の祖父への尊敬の話になっていく。
コメントでもたくさん言われているけれど、泥酔しているときに感謝を述べている人は、素晴らしい人だと思う。途中で照れ笑いを浮かべているせいやさんの熱い気持ちは、ストレートに伝わってくる。
最後の一言は、「僕ら漫才師なんで漫才を頑張ります」というもので、M-1きっかけに霜降り明星を知った実としては、この上なく嬉しかった。その後のエンドロールも、目頭が熱くなってしまう。
次点で、『金属バットのもういっちょ』より「金属バット ロケ サーフィン対決【金属バットもういっちょ シーズン2 #2】」、第何回かは忘れたけれど、『金属バットのラジオバンダリー』より「友保さんが深夜の大阪の住宅街の坂道で、フレディ・マーキュリーを見た話」。
去年の個人的総括は以上である。
まあ、分かってはいたけれど、金属バット関係が多すぎる。去年ハマったので仕方ないけれど、これでも結構削った方だけど。
では、今年のお笑い界も明るく楽しいものでありますように。
また来年、機会があればやりましょう。
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