65日目  堺ー新大阪


 さぁいよいよ最終日。まよったゴール地点は結局、旅行でしょっちゅうお世話になっている新大阪駅に決めました。そういえば新幹線の乗り換えばかりで、駅の外を歩くのは初めてかも。


 というわけで出発です。

 堺東駅前の道路、府道30号線を北へ向かう。ちなみに堺市駅っていうのもあるみたいなんだけど、それが堺東駅の東側にあるってどうなんだろう。

 駅前は繁華街だったけどさすがに少し進めば建物の密度も減ってくる。それでもマンションが並んでいて、住宅街でもさすが大阪は格が違う。

 大阪の地形はよく分からないけど、この道路は天王寺駅方面に向かっているようだ。ちょうどいいや。通天閣見てみたい。


 それにしても府道も道路わきの店のラインナップは変わらないなぁ。

 それでもしばらく歩いていると、急に空が広く感じられるようになってきた。けどそれは田舎になったわけではなく、川があるからのようだった。大和川である。そこそこ川幅の大きい川で、橋の真ん中からの景色は、久々に広々としたものだった。さすが大阪平野。どこまでも平地が広がっている。


 そして川を渡り切るとついに「大阪市」の看板が。ついにここまで……って言いたいところなんだけど、まだまだゴールは先なので感動はちょっと薄め。ていうか大阪市って意外と面積広いのかな。

 橋を渡ってそのまま府道を直進。この近くに我孫子駅があるみたい。我孫子って絶対関東人じゃないと読めないと思っていたんだけど、大阪にもあったのね。


 南海鉄道の線路を渡って先に進む。やっぱり国道と違って生活感があるというか、住宅地の間を抜けているって感じがする。何人も歩いている方とすれ違うし。

 そして住宅街ならではというか、右手にド派手な黄色い看板が見えて何かと思ったら、おお、スーパー玉出だ。関東人でも聞いたことのある激安スーパーだ。ああ、この雰囲気、ようやく大阪に来たって雰囲気になってきたよ。


 ちなみに府道30号線のこの辺りは、看板によると「あべの筋」といわれているみたい。あべのといったら、あべのハルカスだけど、そういえばさっきから前方のはるか遠くに、遠近法を無視したすごく高いビルが見えているんだけど、もしかしてあれがそうなのだろうか。

 しばらくそれを見ながら歩いていると、不意に道路の真ん中にバス……じゃなくて電車が。阪堺電車というらしい。恥ずかしながら大阪にも路線電車が走っていることを初めて知った。そういえばこの旅で路線電車を見たのは初めてかも。最後の最後にいい経験が出来た。

 その路線電車の阿倍野駅前を通過。どうやら前方にそびえたっているバカでかいビルはやっぱりあべのハルカスのようだ。間近で見ると、恐ろしく高い。


 天王寺駅前に到着。堺も周辺もそうだったけど、さすがに有名な駅ということもあって、都会である。せっかくなので、まずはあべのハルカスに寄ってみた。

 平日ってこともあってか並ぶことなくチケットを購入でき、エレベーターで60階まで。おお。すごい。さすがに絶景だ。天上回廊の名は伊達ではない。床がガラスになっている部分もあって、面白いし。この高さから見ると、改めて大阪が大都市であることが分かる。仁徳天皇陵は……それっぽいのが見えるくらいだった。残念。


 ゆっくりしたいところだけど、先があるのでささっと見るだけで、出発。

 次は府道30号線から左に曲がって、あびこ筋を進む。向かうのは通天閣だ。

 大通りを右に回り小さな路地を進んでいくと、でっかな魚や指が空を舞う異世界……じゃなくて新世界が。そして通りの先に通天閣の姿も見えた。玉出やハルカスもそうだけど、やっぱり大阪と言ったらこの光景だ。

 旅の最後くらいは名物をということで、お昼は串カツ。もちろん二度漬けはしません。

 いよいよ通天閣へ。でっかく「社会イノベーションの日立」って書かれていた。通天閣って日立製作所がずっと広告を出しているようだ。

 ハルカスに登ったので、通天閣は下を潜り抜けるだけにする。それでもこうやって道路の真ん中にまたぐように建てられていて下を潜り抜けられるデザインは秀逸だと思う


 次に向かうのは道頓堀だ。まっすぐ進み、阪神高速の高架の下を並行するように左に曲がって、また右に曲がって。

 そんな感じで進んでいると、不意に既視感が。あれ? これってどこかで……という感覚は、日本橋(にっぽんばし)という地名を見て納得。そうか、電気街。秋葉原に似ているんだ。同じ電気街ということは知っていたけど、町並みがここまで似ているとは思わなかった。面白い。


 その後も右へ左へと進み(ここまで複雑な道も旅を始めて初めてだ)、ようやく御堂筋に合流できた。

 そして北に行くと小さな川、道頓堀だ。

 阪神ファンが飛び込む場所とは違うかもしれないけど、小さな橋を渡って北へと進む。こちらの御堂筋はオフィス街といった感じだ。右も左も高いビル。あまり大阪らしさはないけれど、久しぶりに歩きやすい道なのでそのまま進み、中央大通りを右折して東へと進む。


 すると緑の木々が生い茂った大きな公園が見えてきた。大阪城公園である。

 大手門から入ったけれど、天守閣は見えない。それだけ敷地が広大なのだろう。そして観光客の数も圧倒的に多い。

 こちらも何度も来ているのでちらりと見るだけにした。それでも、がっかり扱いされることの多い大阪城だけど(実際自分も初めて来たときはそうだった)、何度か見ているうちに、これはこれでと思うようになってきた。外観の見た目はやっぱり豪華だし。


 というわけで、大阪城のチェックポイントも無事通過して、いよいよ新大阪だ。

 再び西に戻って中之島公園の辺りで大川を渡る。そういえば淀川は歩いて渡れるだろうか。そのまま西に進み、大阪-梅田駅前を通過する。これまでの中で最大級の繁華街だ。大阪駅と梅田駅、最初は歩ける距離だと知らなくて、色々乗換案内を見てしまった思い出がある。もちろん今日は歩いて移動である。

 駅を抜け北に進み、新淀川大橋を目指す。ずっと高架の道の下を歩いていたので、歩道があるか心配だったけど、ちゃんと橋へ上れる階段があった。そしてついに淀川の上に到達。さすがに川幅が大きい。大阪のど真ん中なのに空が広い。

 背後を通る車の音量がうるさくてあまり感傷に浸れないのが残念だけど。


 長い橋を渡り終えると、再び高架から降ろされて、上を通る道路を見るように進む。町中だけど繁華街ともオフィス街ともちょっと違う雰囲気。新横浜や新神戸のように、後から作られた地域といった雰囲気だ。

 そしてついに新大阪駅の南口のロータリーに到着。大きなお店も建物もなく、ただ白い駅舎が横にずーっと広がっていた。駅の外から眺めるのは不思議な感じだ。

 新幹線を使えば、新大阪から新横浜までは二時間ちょい。

 65日間の行程を考えるとちょっとむなしく感じられるけど、新幹線じゃ通らないところにもかなり寄り道したし、正確には出発した駅は横浜駅なので、新横浜からそこまでの時間を加えるともうちょっと長くなるし。ま、いっか。


 ここまで歩いてきて気づいたことはやっぱり日本って広いということだった。それと当たり前だけど、車がメインなので徒歩で何時間も移動する人向けではないということ(地方の宿の間隔とか)。この先、また歩くかどうかは分からないけれど、北陸の雪や北海道の熊は洒落にならなそうだし。

 ただ今回のように区間を決めて歩くのは悪くないかな。

 それじゃ最後になりますが、いつものように閉めましょうか。


 というわけで、今日はここまで。お疲れさまでした。



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日本一周を目指し、横浜から大阪まで歩いてみた 水守中也 @aoimimori

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