そこにいるという生活

ボロ

第1話。そこにアイヌがいるという生活

走らない。


日本に産まれて、そだってきたので日本人だと思います。っで北海道民。

アイヌの血が混じっている。

父親はアイヌで母親は違う。じいちゃんもアイヌです。本人は、本土和人とアイヌの混血。彫りが深く、毛が濃く、耳たぶが大きく、唇があつい。いわゆるアイヌの特徴が顔に出ているようです。面影があるのだ。

本人はわからないけれども、北海道人ならば、一目でわかる。アイヌの面影。

がっつりアイヌではなく、なんとなくアイヌなのだ。でも、微かではない。


北海道人は見るからにアイヌの人にはアイヌと言わない。だって。言わずもがなアイヌだから。アイヌにアイヌと言ったところアイヌなのは仕方ない事だと知っているから。

何よりもつまらないし、差別だと知っているから。

アイヌにアイヌと言うのが怖いくせして、アイヌっぽい奴には、容赦なく。

「アイヌ!アイヌ!お前、アイヌだろっ!」「お前の父ちゃんアイヌだろっ!」と指差して何故か大勢で笑いながら大きな声で遠くから言ってくる年上や同い年。

時には、ニヤニヤしながら囁くように「アイヌなの?」

こそこそ、ひそひそ、でも聞こえるように「アイヌ。アイツ、アイヌ!」と同い年や女の人。

「ワァー!アイヌーッ!」と走って逃げながら同い年や女の人や年下。

周りの目を気にして誤魔化す為に「ヌーアイ、ヌーアイ、ヌーアイ、ヌーアイ、ヌーアイ、ヌーアイ」と連呼する年上や同い年や年下。

何度も、何度も、

何回でも、何回でも、

会うたび、会うたび、

暇で、つまらないとき、見つけたら、

飽きもせずに、何が面白いのかわからないけれども。しつこく。

アイヌと言われるときは、暴力はされない。

汚ないし、くさいし、何よりも何かがうつるらしいから、触わりたくないのだ。

万が一触れたら、触れた奴はみんなから「えんがちょ」されて、ちりじりに逃げられる。

誰かに何かを、うつすために鬼ごっこが始まる。

本人は参加したことがないから、どうやったら終わるのかわからない、誰かが誰かに何かをうつす、飽きてつまらなくなるまで永遠に続く鬼ごっこが始まる。

終わりはいつも、しらけるのを待つしかない。いつかくる、自然消滅をひたすらじっと待つ。何も思わずに。

本人は、どうしていいのかわからない。気にしたこともない。いい加減にして欲しい。

そういう時は、ただひたすら、相手を見つめながら黙ってることにした。

本人はアイヌかどうかもわからない。本人より、もっとアイヌっぽい奴がいるのに、そいつには言わずに、何故、本人ばかり言われるのかわからなかった。でも、差別されてるのはわかったので、寂しくて悲しい気持ちになった。

うつるのは人だけではない。本人か触った物ににも、何かがうつり汚染されて、汚ない物になり触れてはいけない物になる。触ると何かがうつるのだ。汚染されたものを片づけるのは本人だ。何も思わず、誰かに言われたわけでもなく、片づける。

都合のいいことに、汚なくくさいアイヌの本人がキレイに掃除するのは許された。そうすることで無いことになった。そのうち、何かが許されるので、何も思わず、本人は黙ってすすんで、文句も言わずに、人が嫌がることをやる良い子になっていく。


本人は何も思わずに、差別されてるので差別しない良い子になっていく。

まだわからなかった。本当は、本人や、誰かや、物に対してや、良い事。悪い事。好きとか嫌いとか、キレイや汚ない。恥ずかしい、恥ずかしくない。ありとあらゆる事が感じなくなってしまっていったことに。


マイノリティリポート


日本人で北海道人でアイヌとの混血。

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