裏の表のそのまた裏は

篠宮

第1話

「愛してる。」


一世一代の告白。そんな言葉、言い慣れてそうなんてよく言われるが、そんなことは無い。むしろ言ったことがないくらい。

そんな大事な言葉を、今俺は隣にいる友人に伝えていた。隣で座りながら、驚いた様子で此方を見るが、直ぐに彼は空を仰ぎ見始めた。


「ほんと、最悪だわ…。」

「ごめん。そんなに俺の事、嫌いだった?」


その言葉に俺は少しショックを受け、項垂れる。組んでいた足を見つめ、次の言葉に何と返そうか考えていた。

この時、そんな予想外な言葉が返って来るなんて誰が想像しただろうか。


「逆だよ。俺も、お前の事好き。愛してるよ。」


空を仰いだまま、そうか細い声で呟く彼の横顔を見る。夕焼けのせいか、はたまた照れているのかは分からないが赤く染まっている彼の頬。

ちらっと此方を見やり、ニコリと微笑む彼は、この世界で1番美しく見えた。


「愛してるよ。」


とめどなく溢れるこの感情を抑えきれずに口から零れる、このありきたりな愛の言葉でも、俺にとっては、大きな幸せを産むのだった。

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裏の表のそのまた裏は 篠宮 @shino_27

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