第二話 転校して来たるは変人である
「えーと、今日は転校生を紹介しまーす。確か、父親の仕事の都合により──」
武林が心底やる気なさそうに言う。
この女教師はこのクラスの担任と生徒指導もかけ持ちしているのだが、基本的に生徒指導(武力)をしている時ぐらいしかやる気になっている所を見たことがない。
(転校生の紹介ぐらいはやる気を出してやればいいのに……)
まぁ、そんなことを本人に言うつもりは毛頭ないが。言ったら僕はあの担任に
現にこの前、『先生は素材は良いからアラフォーでも多分もっとやる気を出したり笑顔を見せればダメ男の1人や2人くらいは釣れると思いますよ?』と親切なアドバイスをしてあげたら
何が悪かったのか分からないが地雷を踏み抜いてしまったらしく一応は反省している。
ちなみに武林の年齢は31歳らしい。
それを聞いた時は、年齢が思ったよりも若くてあの時の僕と山本は腰を抜かしてしまうほど驚いき、ついでに
さしもの『死神』こと山本と僕の二人がかりでも様々な武術の心得のある
「おーい入って来ていいぞー」
僕が余計なことを考えている間先生からの大まかな説明が終わったらしい。
「はい」
武林先生の言葉に可愛らし声が返ってきたあと、教室の扉が開かれ1人の少女が入室してくる。
「「「おおぉー」」」
クラス中から感嘆の声を上げる。
その少女の外見は、金髪のストレートで肩まで髪が伸びていて、服の上からでも分かるほどスタイルがよく、顔は若干幼く見えるもののどこか大人びた雰囲気を帯びていた。
まぁ、何が言いたいかというと、要するになんだ……ものすごく美人だった。
確かに噂通りの美少女、いや、それ以上と言っても過言ではないほどだ。
僕は滅多に3次元の女子に魅力を感じることはないが(2次元の方が可愛い上に性格もいいから)、その僕でさえ思わず
これほどの美少女の写真を平野が見逃すとは思えない。今頃平野は盗撮(多分ローアングルと胸の写真多め)に励んでいることだろう。もしそうなら後でその写真を買わなければなるまい。級友である僕にはアイツの
「はじめまして皆さん。
黒板の前に立って礼儀良く転校生──久我山さんが自己紹介をはじめた。
(よかった……)
僕はこっそり胸を撫で下ろす。
どうやら自己紹介を聞く限り古賀山さんとやらは常識人のようだ。
フラグのような気がしないでもないがこのままなんの問題もないと大変ありがたいなぁ。
「先ほど武林先生が仰っていたように父が左遷──じゃなくて、仕事の都合によりこちらに転校してきました。趣味は──」
……ただ、少しドジというか、おっちょこちょいのようだ。左遷と仕事の都合を言い間違えるとはどうやらドジっ子の素質があるのかもしれない。
というかそうでないと反応に困る。父親の左遷に転校してきました場合とそうじゃない場合では印象がかなり違うから。
とは言え、それ以外は特に
「──ご主人様にいじめてもらう妄想をしながらオナニーすることです♡︎」
前言撤回。
転校生もまともとは程遠い存在、即ち!紛うことなき変人、もしくは変態であった!
変人が増えたという事実に僕は思わず頭を抱えざるを得ない。どうやら僕の
「………………(ダバダバ)」
あと
◇◇◇
昼休み。
僕はいつも通り自分の席(窓際の後ろから2番目というなかなかの好ポジションだ)で落ち着かない気分でライトノベルを読んでいた。
(普段なら今頃安らかな気分でいるはずなのに……)
原因は分かっている。自分の後ろの席の美少女、久我山さんだ。
別に彼女の周りに人が群がって騒がしいからという訳では無い。寧ろ静かだ。久我山さんは朝からずっと独りで過ごしている。
彼女が独りでいるのと僕が落ち着かないる理由は原因は同じだ。彼女が自己紹介の時に発したある言葉である。
えーと、なんて言ったんだっけ?確か──
『私は普通の人には興味ありません。この中にドSの方、調教したい方、雌豚が欲しい方、肉便器やオナペットで性処理をしたい方は私をめちゃくちゃにしてください。以上!』
──だった気がする。
とあるライトノベルのヒロインの
ついでにその発言を聞いた想像力豊かな
問題なのはその発言を聞いたクラスメイトの久我山さんに対する印象だ。
女子に話せる相手がいないから確証は得られてないけど……べ、別に悲しくなんか無いよ?とりあえず推測だが女子からはドン引きされている(女子を含めたクラスメイトの約三割が変人だから今更な気がするけど)し、男子は『OHB』に所属する
要するにみんな久我山優姫という自称ドMの変人美少女との接し方に戸惑っているとういことだ。
まぁ、それ自体は気にしないように出来なくはないのだが、物理的に美少女と距離が近いせいか『OHB』のみんなの視線が痛い。あれれーおっかしいぞー?足の震えが止まらなーい。
『あいつ羨ましいな転校生と席が近くて』
『全くだ。しかも美少女だし』
『とてもつもないレベルの変態だけどな』
『それがいいんだよ。自己紹介を聞いた時思わず鼻血出ちまったよ』
『俺なんて勃っちまったぜ』
『あんな美少女とお近付きになりたい!』
『『『『『確かに!』』』』』
『そんな娘と物理的お近付きなんだぜアイツ』
『『『『『『チッ!憎しみで…人を、コロせたなら……!』』』』』』
「……………」
……何故だろう?
やめて!人を殺しかねないような怨念を込めた視線をこっちに向けないで!
「ハァハァ………(ポッ)」
あと、さっきから久我山さんの息づかいが荒く顔も真っ赤だけど、それはきっと熱があるのか、或いはみんなに見つめられて余程恥ずかしいようだ。決して羞恥プレイの一環として興奮してしまっているわけではあるまい!………多分。
「……まぁ、気にしないようにすればいいか……」
幸いというかなんというか、自己紹介通りなら久我山さんは僕のような凡人には興味無いだろうから何も行動を起こさない限り僕は背後にいる変態少女と関わらないはずだし、
「ねえ、ちょっと」
僕がそんな楽観的なことを思ってるそばからから後ろの席の住人──久我山さん方から話しかけてきた。
(あれっ!?なんで僕に話しかけるの!?)
僕パニくる。
そして同時に悟る。ここが僕の命を左右する分水嶺になるだろう。
その証拠に──
『おい、念の為に野球部は釘バットを、陸上部は槍投げ、砲丸投げ、ハンマー投げ等で使う投擲物を部室からありったけ持ってこい』
『『『サー、イエッサー!』』』
『それ以外の者はペンチ、灯油、金槌、ライターといった処刑や拷問に使えそうな物の準備をしておけ』
『『『サー、イエッサー!』』』
──といったやり取りをみんながしている。
念の為という割にはマジで
とりあえず断言しよう。
ここで判断を誤れば僕は
……というか、僕も今までに何度も世話になったから今更な気がするけど……なんでうちの野球部の部室には釘バットがあるんだろう……?
変人どもの青春譚 MHR @31lord
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