エピローグ

家の郵便受けに何かが届いている。

結婚式の招待状だ。


「わーいケッコンシキだぁ!みなと、ドレスきるー!」

「もう、湊斗は男の子でしょ!結婚式初めてだもんね、スーツセット買おっか。あ、昔お兄ちゃんが着たやつ着れるかな」


「ケーキでる?ねぇ、ケーキ!まえみたいな、おっっっきいやつ!」

「北斗は静かにできるか心配だわ」

「もう5歳だし、大丈夫だろ。来年は1年生だなー北斗?学校行くんだもんなー?」

「うん!あ、パパ!iPadかして!」

「ゲームは1時間までな」

「ゲームじゃないもーん!カノジョのしゃしんとるの!」


「「……彼女!?!?」」


両親共々、息を呑む。


「うん!だいすきのカノジョー!」

北斗はまだ5歳だ。もう5歳だ。年長さんだ。


「ねぇ、パパとママのナレゾメは?」


……馴れ染めって言ったか?

そうね

いつそんな言葉教えたんだよ

教えてないわよ!

うちの子、どうしたものか……

私たちの馴れ染めなんて、口が裂けても言えないわよね

話すにしても、もっと大きくなってからだなぁ


両親の密談がややあって、タクヤは長男にiPadを託した。

万が一のため、電撃大賞の応募用に苦労して書いた原稿を、しっかりとクラウドに保存した。ユウへの愛を模して、長編恋愛小説を書きあげたのだ。


それにしてもやや晩婚だなぁ。

ふふ、晩婚ってほどでもないでしょう、私たちの方が先だったけど。

結局どんな子と結ばれたんかねぇ。


その結婚式の招待状とは、例の幼なじみ、秀樹からのものである。初な夫婦の幸せの日を、タクヤとユウは2人の息子を連れて祝う。


あ、私は仕事の休み、確実にしとかなきゃ。


ユウはある中学校を月に何度か訪問するスクールカウンセラーをやっている。出勤はそんなに多くなく、家事にも勤しめている。


「ほくとも、ちーちゃんとケッコンするんだー!」


初恋の時期は、遺伝とかないんだなぁ

そうみたいねぇ


今は模してなどいない中重家は暖かい。

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模擬恋愛 雨野瀧 @WaterfallVillage

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