中重タクヤ❷

慣れない道を歩いていた。暇な放課後は知らない駅で降りて雰囲気など見て回るのがマイブームだ。この辺は……確かユウの家の近くだったなぁ。まぁ、もう俺には関係のない人になってしまったけど。


駅前の店まで少し外を歩かなければいけなかったが折りたたみ傘を持っていたことが幸いした。バスが通り、水溜りがこちらへ跳ねる。制服のズボンが汚れる。やっぱり、ついてないな。シミになったら困るのでその場で軽く拭いていると、バスから人が降りてきて邪魔になるので避けた。


顔を上げた瞬間、目に入ったのはいつか見たアディダスのパーカーとそれにそぐわぬ小さな背中。一緒にいるのはポッチャリめの体型、メガネ、あ。


ユウの幼馴染みの男だ。女を連れている。

そうか、ユウの家がこの辺だから、幼馴染みの家もこの辺でおかしくない。


女を連れている。顔を見合わせて照れ笑いしている。俺にとっては好都合だが、ユウは知らない方が幸せだろうな。

俺が再び歩き出した頃、かなり遅れて降りてきた人がいた。

……ユウ?


無表情で降りてきた人はやはりユウだった。

ユウが俺を俺と認識するまでも時間がかかり、俺と目が合うと恥ずかしそうに顔を綻ばせた。割といつも冷静なユウにしては珍しく表情で、俺も戸惑ってしまう。


「ユウ、好きだよ」

あまりにも唐突な告白。ユウは静かに驚きの表情を見せたが、俺自身はもっと驚いていた。衝動的な告白だった。


この後どうしよう。言ってしまった言葉は戻せない。ユウを困らせてしまう。

しかしそんな心配は杞憂、ユウはゆっくり俺に寄り掛かった。あの状況を見てしまったなら、やはり混乱しているだろう。

まずはゆっくり、心を落ち着かせてやろう。いくらでも話聞いてやる。


こんなふうに触れ合ってる様子は、側から見れば長いカップルに見えていたかもしれない。そう見えてたらいいな。

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