山本ユウ❷
検定があっていつもより遅くなった帰り道、雨が降った。
梅雨の季節でもないのに雨が多いなぁと思う。寒いけど雨は好きだからいつまで続いてもいい。というのも、先日秀樹に送ってもらった日から雨が降るたびあの小さな出来事私にとっては大きな出来事を思い出して嬉しくなってしまうのだ。
紺色の傘をさして校門を出る。大勢の下校生徒で混み合ったバスに乗る。だんだんと人が降りていく中、私は終着まで乗る。
今日の課題を確認していると、空いてきたバスの座席、斜め前の方に見覚えのあるアディダスのウィンドブレーカーがあった。
あの時の……送ってもらったあの日の秀樹の服装がフラッシュバックする。
あれはもしかして、秀樹?あれはもしかして、秀樹?話しかけたいな、できるかな。何を話そう!
いつもと違う時間帯のバスに乗っているし、家もそう遠くないからここで会ってもおかしくない。少しの間見つめていると、その人影が動き出す。帽子をかぶっていたからよく見えていなかったけど、それは髪の長い女子だった。なんだ。
上着ひとつで見間違えてしまうほど私は秀樹のことを考えてしまっていたらしい。
いや、でも、あれは……
その女子の隣にいるのは、
低めの身長、ぽっちゃりした体型、メガネ。間違いない、秀樹だ。
「寒くない?」
秀樹は隣の女子の背中をさする。
「うん、ありがと」
秀樹は上着を着ていない。
あぁ……そうゆう、こと…?
その感情は驚愕でも嫉妬でも悲壮でもなく
ただ混乱 だった。
秀樹が女の子に上着を貸している。その光景が、あの日秀樹が私を傘に入れてくれた場面と重なる。
彼女かもしれないし、そうじゃないかもしれない。
どちらにせよあの人は、誰にでもそうゆうことをするんだ。
あれは私の幼馴染特権ではなかったんだ。
まぁ、そうだよな……。そんな可能性、最初からなかったんだよ……。
話しかけるどころではなかった。
私は呆然として、終点についたバスからしばらく降りられなかった。
始まったばっかりのはずだったのに、
恋ってこうゆうもんなの?
分かんない、分かんないよ。
遅めの私の初恋は、早くも終わりを見せていた。
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