第21話 ティータイム みずほと健一 暴露話2
みずほは、いつものように遅い昼食をとっていた。
いつもの喫茶店で、いつもの味。いつものBL。
彼女にとって、この時間は至福の時であった。
今日こそは、全部食べるわよ。
マスターの作ってくれたオムライスを前に食べ始めるみずほ。
すると、いつものように健一がやってきた。
ちっ!また来たか!
みずほは、彼のことを気にも留めず、黙々と食事を続けた。
健一は、ブツブツ何かを呟きながら、みずほの席に座った。
みずほは、今日こそは言ってやろうと思っていた。
私は、一応灯の友達なのよ!
なのになんでみんな、寄ってたかって相談に来るかなあ。
と考えていた。
そこで、みずほはこう答えた。
「・・・何の用。」
「灯のことで、相談があるんですけど・・・。」
健一は、みずほのいつもと違う感じに一瞬ひるんだ。
「な・ん・の・そ・う・だ・ん・が・あ・る・ん・で・す・か!?言っとくけど私は灯の友達なんですからね。灯を愛人にする相談はもうやめてくれる?やるならよそでやって。」
「えー?冷たいですよ~。みずほ姐さん。」
「冷たいじゃねーよ。全く、灯のことを悪く言われる度に辛くなる、こっちの身にもなってよね。昼食食べているから邪魔しないでちょうだい。」
みずほは、いつもより、機嫌が悪い。
「そんなこと言わないでくださいよ。みずほ姐さん。今は姐さんだけが頼りなんです。俺もいろんな人に相談しましたよ。でも、あなたは灯と俺の中間に立ってよく見ている人だし、的確な答えが得られる人でもあるんですよ。だから、相談してるんです。」
健一も、みずほに負けない。
みずほは、彼の言葉を聞き、一理あるとは考えた。
確かに、灯と健一の中間に立っているのは私だ。私は、両方の意見を知っている。
ただ、あまりにもお互いの意見がくい違い過ぎて、聞いていて疲れるのも事実だ。
しかしみずほは、面倒見の良い女性であった。
彼女は、はあっと溜息をつくと、渋々ながら健一の愚痴を聞き始めた。
「で、今日は何?」
「灯とセックスが合うんですよね。」
「はあ!?」
みずほが驚く。
「それで、段々と灯に惹かれていく自分がいて、彼女といると楽しくて・・・マンションにも行きそうになりましたよ。・・・でも涼子のことを考えると・・・行けなくて・・・どうしたらいいのか分からなくなっているんです。俺。」
健一が、はあ・・・とため息をつく。
みずほは、暫く考えた。こいつ、灯に対して考え方が変わって来てる・・・。
彼女が答える。
「それで、周囲の相談した人たちは、なんて答えたの?」
「両方とも大事なら、両方共と付き合えば。と言われました。」
なるほどね。
みずほは健一の答えには応えず、心の中で呟いた。
それを私に相談するかあ!みずほは言ってやりたかった。出来れば灯1本に絞ってもらいたい。
しかし、こいつがそんなことをするわけねえよなあ。
と、みずほは考えた。
ずるい男は、何処までもずるい・・・。
健一は、本気で悩んでいるみたいだ。
こんなくだらないことを、何故悩む?どちらかに絞れ。
みずほは、一言言った。
「二兎を追う者は一兎をも得ず。」
「えっ?」
健一が、答える
「それが答えよ。ご馳走様。」
そう言うと、みずほはBLを読み始めた。
「二兎を追う者は一兎をも得ず・・・。」
健一は何かに気付いたかのように、彼女の元を去り、喫茶店を出て行った。
一人になったみずほの元へ、喫茶店のマスターがゆっくり歩いてきた。
「何かに気付いたみたいだね。」
「あら、マスター聞こえちゃった?ごめんねー。」
「いいんだよ。みずほちゃんには、色んな男の子達が来るから楽しく拝見させてもらってたよ。それだけみずほちゃんが、頼られているってことかな?」
初老のマスターは、笑いながら言った。
「そうですかね・・・。」
みずほは、そう答えながら、灯の本当の幸せを考えていた。
いい加減、目を覚ましてくれるといいんだけど・・・。
彼女は、思っていた。
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