第20話 密室

灯が激しい嫉妬に狂っている頃、健一は涼子と共にホテルにいた。

健一は、涼子をイかそうと必死であった。

しかし彼女はマグロ状態で、時折声を出す程度で、そんなに感じているようでも無かった。

健一が言う。

「感じるかい?涼子?」

すると、涼子が面白くなさそうに、起き上がった。

そして言った。

「あの子、誰?」

「えっ!?」

健一は、突然の彼女の言葉に絶句した。

「あの子って・・・?」

「シオンで笑いかけてきたあの子よ。女性。あの子健一の何?」

「別に従業員だけど?」

健一が、はぐらかす。

「あの子・・・健一の事好きでしょう?私にはわかるの。どういう関係?」

「どういうも何も・・・ただの同僚だし・・・。」

彼の額には汗が滲んでいた。

涼子はベッドから自分の下着を取ると、それを穿き始めた。

「帰るのかよ・・・涼子・・・終電無いぞ。」

「いいの、タクシーで帰るから。明日は電話してこないで。」

涼子は、機嫌が悪い。

「どうしたんだよ、涼子。何怒ってんだよ。」

「健一。浮気をするなら、私の目の見えないところでやってよね。同僚に手を出すのもほどほどに。じゃね。」

そう言って、涼子は部屋のドアをパタンと閉め、帰って行った。


涼子は、なぜ、今日シオンに行ったのか。

彼女は確かめたかったのだ、最近の健一の様子が変なことに気付いたから。

そこで、その原因は健一が勤めている、シオンにあるのではないかと思い至ったのだ。

すると、やっぱりビンゴだった。彼は先程の女性と一緒にいると、楽しそうだった。

階段からずっと見ていた涼子は、彼女が健一の浮気相手なのではないかと察したのだ。

先程の言葉は健一に対して、釘を刺した言葉だった。

私を怒らせると、怖いのよ・・・。

涼子は、タクシーの中で、一人先ほどの健一の表情を見て、クスッと笑っていた。


後に残された健一は、これは非常にまずい状況だと思った。

もう、涼子にばれている。これは何とかしなくっちゃ。

彼女とは別れたくない。

でも、灯とも楽しいし・・・。

しかし、まさか涼子が俺の職場に現れるとは思わなかった。

想定外のミスだった。

健一は頭を抱えた。


彼は、仕事中もそのことを考えていた。

そこで、みずほに相談したところ、灯を傷付けないと共倒れになると、言われたことを思い出す。

どうやって灯を追い詰めずに、向こうから別れてくれるように仕向けるか。

健一が、1階のミルキーウェイの台の、玉詰まりを直しながら考えて居ると・・・

「生田さん。内田さん。休憩をとってください。」

と、大友主任の声がインカムから聞こえた。

健一は、「了解しました。」と、言って休憩室に向かう。

彼が扉を開けると、そこには灯がいた。

健一は、バツが悪そうに「お疲れ様」と一言言った。


灯は、ふと考えていた。

健一、最近マンションに来ない・・・。

どうしてだろう・・・。

やっぱり、彼女の方が大事なのだろうか。

健一は、テーブルの上にあった、新聞を読んでいた。

その姿を、ちらっと見る灯。

健一、どうして最近私のマンションに来ないの・・・

そう言いたかった灯であった。


2人の思惑などお構いなしに、時は過ぎていく。

10分休憩の筈なのに、やけに長く感じる2人。

休憩室は、人が一人寝れるぐらいのソファがあり、それが2台あった。

灯と健一はそれぞれのソファに座って、お互いだんまりを決め込んでいた。

沈黙の時間が進む・・・。

やがて、健一は新聞を置くと、先に休憩室を出て行った。

灯は思った。

何故、大事な時間だったのに、何も言えなかったの?

せっかく、大友主任が一緒の休憩にしてくれたのに・・・。


だが30分休憩の時にも、大友主任は彼らを一緒の休憩にしたのだ。

今度は、灯が後から休憩室に入る。

すると、健一がパンをかじりながら、「お疲れ様。」と言った。

灯も持って来た弁当を、ロッカーに入っていたカバンから取り出し、食べ始めた。

黙々と食事を始める2人。

すると、健一からとりとめのない話を始めた。

灯が、それにこたえる。

2人は、久しぶりに和やかな雰囲気になった。

しかし、急にまた黙る二人

健一が、灯の方を向いた。

ドキッとする灯。

彼はずっと、熱い目で灯を見ていた。

彼は、その気だ。

灯は思った。

すると、健一が、灯の隣に座った。

そして、食事中の灯にそっとキスをした。

健一・・・やっぱり、私の事、忘れてなかったのね。

口づけをしながら、喜びに打ち震える灯。

健一が舌を入れてくる。

「う・・・。」

灯が、喜びの声を出す。

2人が唇を離すと、健一が灯をソファにゆっくり、押し倒す。

「健一、最近なんで、マンションに来ないの?」

「静かにして、聞こえちゃうから。」

そう言うと、健一は、灯のブラウスを上に捲し上げ、ブラを下ろすと、灯の胸をあらわにした。

形のいい、灯のピンクの乳首が見える。

彼は、それを舌で転がした。

灯が、喜びの声を小さく上げる。

健一は、更に灯を攻める。

もっと、健一私を攻めて!

2人は、すっかりその行為に夢中になっていた。

彼らの密室でのセックスが始まった。

健一が、灯の乳首を軽くかむ。

灯は、3分ともいかない頃に、絶頂に上り詰めた。

彼は、驚いた。

灯がこんなに感じやすいなんて。

マンションで、セックスをしていたときより凄い!

彼女は、ハアハア言いながら、ブラジャーを元に戻した。

時計を見ると、もうすぐで時間だった。


彼は、灯に「立てる?」と、言い灯を抱き起した。

幸い、誰も来る気配はない。

灯は、「うん。」と言い、乱れた制服をなおした。

健一が、灯に手を貸す。

それから2人は、連れ立って休憩室を出た。


健一は、考えていた。

何故、灯はあんなによがれるんだろう。

涼子は殆どマグロ状態だったのに。

そんなに、灯はセックスが好きなんだろうか・・・。

もし、灯がこんなに感じられるなら、俺とのセックスの相性がいいのかもしれない・・・

だとしたら、灯を離すべきではないのかもしれない。

でも、涼子は気付いてる。

どうするべきだろうか?

1階に戻った後も、健一は仕事をしながら考えていた。


一方灯は、地下のカウンターに戻ってからも、先程の余韻に浸っていた。

健一の、久しぶりの舌使いに興奮していた。

やっぱり健一は、私の事が好きなんだわ。だってあんなに激しく求めてくれたんだもの・・・。

私はそれだけで、幸せだわ。

あとは、健一がマンションに来てくれたら、本当に幸せなのに・・・。

灯は、元気よく仕事をしていた。

客の要望に応え、先程とはうって変わって、水を得た魚の様に仕事をした。

健一の気持ちが嬉しかった。

だって、休憩室であんなこと・・・。

単純な灯であった。


その後も、灯と健一の密室でのセックスは続いた。

休憩が一緒になると、二人共どちらともなしに求め合った。

灯にとって、30分の休憩は、まさに至福の時であった。

しかし、健一は帰るときはすぐに帰ってしまうし、マンションにも来ない日々が続いた。

灯にとって、試練の日々が続いた。


ある日、灯は健一に聞いてみた。

何故、最近マンションに来ないの・・・と

すると、健一は、「今、ダーツコンテストがあって、それに夢中だから。」との事。

灯は、「がんばって、応援しているわ。」と答えたが、やっぱり寂しかった。

今は、休憩が一緒になった時の密室でのセックスが、灯の生きがいであった。


そんな事を繰り返してそれから半年後

灯と健一は、地獄を見ることになる。




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