第10話 ティータイム みずほと幸太郎暴露話

 みずほは、またいつもの喫茶店にいた。

商社の営業はみずほを追いかけまわすし、昼休み位携帯をマナーモードに設定して、ゆっくりしたかったのだ。

最近、灯が来ない。

やっぱり、きついこと言いすぎちゃったかな。

そんなことを考えながら。昼ご飯を食べていると、

遅番の従業員の松本 幸太郎が来た。

幸太郎は、みずほの席の空いている席に座ると、オレンジジュースを注文した。

「みずほ姐さん。こんにちは。」

「こうちゃん。久しぶりだねえ。」

ちょっと浅黒い肌をした幸太郎は、みずほを慕っている。

「灯はどう?元気?」

「今日、休んでますよ。」

「えっ?」

「何でも今日親に、例の彼氏を紹介するとかで、休んでいますよ。」

灯、啓介と別れなかったんだ。体も拒否っているのに、どうするつもりなんだろう・・・。

まあ、最終的には灯が決めることだから、知らないけどね。

と、思いながらも、みずほは面倒見屋さんだ。

「こうちゃんは、灯とは一番の友達だったよね。灯から何か聞いてる?」

幸太郎は、はあーとため息をついて、オレンジジュースに口を付けた。

「実は・・・この間、内田さんから連絡があったんですよ。夜中の1:00位でしたかね。生田さんの事、思い続けてれば恋人同士になれる。でもそれには私が逃げなくちゃとかそんなこと言ってましたねー。」

「逃げる?」

「男って、逃げる女性は追いかけるとか言うじゃない?とか言ってましたよ。生田さんは内田さんのホールでの態度に若干戸惑っているみたいでしたけどね。はたから見ていると、コントを見せられているみたいで、面白いですよ。僕は二人の状況を知っている唯一の人間だし。」

「はあ・・・灯まだそんなこと言っているの?どっからそんな言葉が出てくるんだあいつは。」

「なんか、この間やった占いダイヤルでそう出たんだとか言ってましたよ。今のところは、生田さんと恋人同士になる確率は0に近いが、内田さんが逃げることで生田さんが気になりだして、それで2人は恋人同士になれると出てた。と言ってましたよ。」

幸太郎は、灯と話したことを逐一漏らさず、みずほに打ち明けた。

「そんなことある分けないじゃない。生田君は好きな人がいるんでしょう?灯がなれるのは、せいぜい遊び相手に決まっているじゃない?なんであの子は分からないんだろう?」

みずほは、あまりの灯の自分勝手さに、飲んでいた水のグラスをダン!と置いた。

「しかも、啓介のことはどうするのよ!啓介に気持ちが無いのに、なんで今日両親に紹介しに行くのよ!意味が分からない。灯のやっていることが!!」

「みずほ姐さん。落ち着いて。どうどう。」

幸太郎はそう言うと、ウエイトレスに新しい水を持って来るように伝えた。

それを、一気に飲むみずほ。

「・・・私はね、別に灯が生田君と遊ぶなといってるわけじゃあないのよ。啓介と別れてから、遊ぶなり、付き合うなりしろと言っているのよ。だって、それが人として最低限のマナーじゃない?啓介は本気で灯と結婚したいのに、どうするつもりなのよ!」

「そうですよねー。本当にどうするつもりなんですかねー。」

気のない返事の幸太郎。

「あら、ごめん。こうちゃん。ちょっと感情的になっちゃったわ。」

みずほが幸太郎に謝る。

「いえ。いいですよ。僕はあくまでも部外者ですから。内田さんが本当に馬鹿なことをしているということに気付かない限り、分からないと思いますよ。」

以外と、幸太郎は冷めた面があった。

「ところで、僕のシャツ匂いませんか?みずほ姐さん?」

「なんで、急に?」

みずほが呟く。

「僕、匂い恐怖症なんですよ。自分が匂っていると感じてしまって・・・お風呂も朝と夜の2回入ってます。」

「そうなの?別に匂ってないけど?」

「そうですか?神経質すぎるのかなあ。」

くんくんと、自分の体臭を気にする幸太郎。はたから見ると犬みたいだ。

「あ、もうこんな時間だ。じゃあ、僕仕事行きますね。」

そういって、彼は喫茶店を出て行った。


みずほは遅い昼食を食べていた。彼女が昼休憩に入るのは大体PM3:30

だから、遅番の従業員がとっかえひっかえ来るのだ。

灯大丈夫かなあ。啓介に迷惑かけてなければいいけど・・・。

弱冠の不安がみずほにはあった。



6に続く






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