第8話 ティータイム みずほと健一 重い女は遊ばれる編
3からの続き
「実は・・・内田さんのことで困っているんです。」
健一は、はあ・・・とため息をつき、ぽつぽつと話し始めた。
「灯のことで?」
「ええ・・・。最近内田さんが、どうやら俺のことが好きなのかどうかわからないけど、俺のことをジッと見ているんですよ。俺がその視線に気が付くと、サッと目を反らすし。休憩時間は一緒になっちゃうし・・・。」
はあ・・・とまた溜息をつく健一。
「それで、この間内田さんの彼氏が来た時に、またジッと見てるから、もうあったまきて、『お疲れ様』て怒った様に言ったんです。その後、彼女がどういう気持ちになったかは、知りませんけどね。」
「一緒になっちゃえばいいじゃない?それだけ好かれているなら。」
「嫌ですよ!何でそんな重い女と付き合わなきゃならないんですか?俺にだって、選ぶ権利はあります。そりゃあ内田さんは可愛いですけどね。一回はやってみたいなーという気持ちはありますけどね。」
「めんどくさいなー。結局あんたは何を伝えに私のところへ来たの?」
みずほが煙草を吸いながら、話す。
健一も、煙草を出すと、煙草を1本震えながら口元に持って行く。
みずほがそんな彼を見かねて、ライターで健一の煙草に火を付けてあげた。
「ありがとうございます。」
「それで?」
「俺。好きな人がいるんです。俺よく仕事が終わった後に、ダーツバーに行くんですけど、そこで最近よく来ている女性がいて、1本芯が通っているというか、かっこいいんですよ。ダーツの腕もあるし、年内中には告白するつもりです。」
「そうか・・・だから灯にこれ以上本気になってもらっては困るとそう言いたいのね。」
「ええ・・・それに、シオンは男女交際禁止ですし。今、此処を辞めるというのはお金にも困ってしまうし、分かっているんですかね、内田さんは。」
「分かってないと思うよ。灯はこうと決めると、飛んでっちゃうからね。」
「だから、困っているんですよ。このままでは、内田さんを傷付けてしまいそうで・・・。」
健一は、頭を抱えた。
「傷つけるって?」
「俺だって、男ですよ。気持ちはなくても彼女を抱くことは出来ます。だから、このままでは遊んじゃうんじゃないかなーと、思ってしまって・・・。」
「灯が望むなら、それでもいいんじゃない?そんな男と女はたくさんいるわよ。」
「それで、みずほ姐さんに頼みがあるんです。」
「何?」
「内田さんに、これ以上俺に近づくのはやめて欲しいということを、伝えて欲しいんです。」
「自分で伝えなさいよ。私は、傍観者だもの。」
「やっぱり、ダメか・・・。」
「男らしくないわね。はっきり伝えないと、灯は更に重い女になるわよー。」
みずほが、脅す様に言う。
彼女は内心楽しんでいた。
「みずほ姐さん。内心楽しんでいるでしょ?」
「あ、わかった?」
みずほが笑う。
「所で、健一君は一人暮らしなの?」
「母と妹の3人暮らしです。母は寝たきりで、妹と俺が働くしかないんです。俺、母の事好きだし。だから、今の暮らしに不自由はしていません。」
「ふーん。大変なんだ。お母さんの事好きなんだ。」
「はい。母は父と別れるまで働き詰めだったから・・・。尊敬しています。父はアル中で、働きもせずに酒ばかり飲んでいたから。俺も酒を飲むけれど、働かないということはしません。適度に働いて、適度に遊ぶ、それが俺のモットーです。」
健一は、ひとしきり話すと、帰って行った。
「健一君も大変なのね~。男はやっぱりママが好き~てか。」
みずほが、煙草を吸いながら椅子にもたれていると・・・
『プルルルル』
携帯の音が鳴った。
やべ、会社だ。
「はい。香山です。」
「香山さん。やっと掴まった。いま何処にいるの?」
営業の木下からの電話だった。
「はい。今帰ります。まだ昼休み中ですよね。」
「それは、分かっているんだけど、君が帰らないと話にならないのよ。クライアントが『香山さんを出せ!』って、聞かなくてさあ。頼むよ。帰って来て。」
「分かりました。今帰ります。」
そう言い、みずほは電話を切った。
テーブルには、食べかけのオムライスが残っている。
「仕方ない。今日もカロリーメイトかあ!」
そう言い、みずほは会計を済ませた後、喫茶店を出た。
5に続く
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