第5話 拒絶

「灯、俺お前の両親に挨拶に行くよ。」

「えっ!?」

吉谷 啓介が突然そう言い出したのは、灯が有楽町シオンに入って2年目だった。

灯と啓介の付き合いは5年目に到達していた。

その頃の灯はすっかり健一に気持ちが行ってしまい、啓介のことなど2の次になっていた。

小雪が舞い散る中、袖ケ浦の啓介の部屋で灯は聞かされた。

あんなにも待っていた啓介の言葉だったのに・・・。

嬉しくない。

そう。灯はその時啓介に別れを告げればよかったのに、告げられなかった。

「それで、そちらのご両親の都合のいい日を教えて欲しいんだけど・・・。」

「そうね、分かった。親と相談してみる・・・。」

灯は淡々と答えた。


啓介は、最近灯の様子が変だと感じ始めていた。

今までなら、啓介がそう言うことを言うものなら、物凄く嬉しがったのに・・・。

今の彼女にはそれが無かった。


彼が今まで灯の両親に挨拶に行かなかったのには訳があった。

実は啓介には、片思いの女性が居たのだ。

啓介は、あるスーパーの食品売り場の社員をしていたのだが、そこのパートで働く35歳の女性に密かな片思いをしていた。

2年越しの片思いだった。

彼は、ある日クリスマスを一緒に過ごさないかと、彼女に告白した。

しかし、彼女から出てきた言葉は、彼氏と過ごすという言葉だった。

啓介の片思いはそこで終わったのだ。

そして、啓介は灯に戻ったのだが、灯の反応が薄い。


彼は、灯を抱き締めた。

彼女は、されるがままになって居た。

灯の洋服と下着を下ろし、裸になった灯を啓介は愛撫し始めた。

耳の裏を軽くかみ、キスをする啓介。

灯はされるがままに、啓介のキスを受け付けた。

2人は溶け合う様にキスをする。

それと同時に、啓介は灯の乳房を揉みしだいた。

心は拒否をしていても、体は感じるものだ。

灯が仰け反る。

彼女の一番の感じる場所は乳首であった。

啓介は長年の勘で、灯の感じる右の乳房を揉みしだく。

そして、左の乳首を舌で転がし始めた。

灯の心が真っ白になっていく。

ただ、1点に向かってそこにいくために・・・。

「灯!好きだよ。愛しているよ!」

灯の感じる乳首を舌で転がす啓介。

秘部も人差し指でかき回し始めた。

秘部の蜜が滴り始める

もはや、灯は感じ過ぎていた。

もう、健一のことなどどうでもよかった。

しかし!

イクときは、啓介の顔ではなく、健一に切り替わっていた。

私・・・何で生田さんのことを?思ったの?

続いて、啓介は、ズボンとトランクスを下ろし、固く勃起したものを、灯に押し付けてきた。

いつものように、それを口に加え込む灯

上下左右にそれをなめまわす彼女。

すると、突然。

「うっ!!」

灯が彼のモノを口から出した。そしてトイレに駆け込むと、彼女は思いっきり吐いた。

「・・・何で・・・?」

「灯、もしかして、・・・妊娠したんじゃ・・・?」

「妊娠?」

びっくりする灯。

「灯、俺の子か?だとしたら、こんなに嬉しいことはないよ。」

「啓介・・・。」

「明日、一緒に産婦人科に行こう。」

「でも、違うかも知れないし・・・。」

「それは、行ってみないと分からないよ。とにかく灯はゆっくり休んで。もしかしたらってこともあるから。」

「わかった。ありがとう啓介。」

しかし灯は考えていた。どうして今啓介の子を妊娠しなければならないの?もう、気持ちもなくしてしまった彼の子供を・・・。

神様。酷すぎます。もう少し気持ちが生田さんに傾いていなかったら、私はこの状況を素直に喜べたのに・・・。

灯は、心の中で泣いていた。


翌日。

啓介の想いとは裏腹に、灯は妊娠していなかった。

ストレスからくる胃炎であった。

薬をもらって、灯と啓介は産婦人科から、灯のマンションに車を走らせていた。

車中。啓介も灯も話をしなかった。

啓介は、そろそろけじめをしっかりとつけないと、という思いだったし、灯は灯で、啓介と別れるということを、はっきりと言わないとという思いであった。

2人の心は交差しないままであった。

暫くすると、車が灯のマンションに着いた。

啓介は、マンションから近くのコインパーキングに車を置くと、灯のマンションへ向かった。

ドアを開けると6畳の部屋に灯が、小さいテーブルに肘を乗せて、座っていた。

その後ろから抱き締める啓介。

しかし灯は嬉しくなかった。

啓介が言う。

「今回は、残念だったね。」

何も言わない灯。

「近々、灯の両親に挨拶に行くよ。随分待たせちゃったね・・・。」

「啓介!」

「何?」

私、あなたと別れたい。私あなたに気持ちが無くなってしまった。

しかし灯は言えなかった。

だって、今の啓介はこんなに優しいんだもの・・・。

この時間を大事にしたい。

それに、やっと父と母に挨拶に行ってくれる。

そんな彼に、こんな酷な言葉をぶつけるわけにはいかない。

「・・・ううん。なんでもないの。」

「そうか・・・。」

啓介は、一言言うと、

「近々、職場にも顔を出すよ。何せパチンコは俺の得意分野だからな。」

といって、席を立った。

「帰るの?」

「うん。今日は疲れたし。ゆっくり休むとするよ。」

「わかった。気を付けて帰ってね。」

2人は玄関で軽くキスをすると、啓介は、階段を降りて袖ケ浦へと帰って行った。

彼女は、ぱたんとドアを閉めると、母に電話をした。

「もしもし。お母さん。」

「灯!元気なの?」

母の久しぶりの声だった。

「私は、元気。お父さんは、元気なの?」

「お父さんは相変わらずよ。ところで、吉谷さんとはうまく言っているの?」

「うん。・・・それなんだけど・・・。」

灯が、本音を言おうとした時だった。

「実はお父さんとも話をしたんだけど、灯がそんなに好きなら、今回の吉谷さんの事許してあげようと思ってね。お父さんもやっと折れたみたい。」

「・・・えっ?」

まじで!

「それで、お会いする日取りを決めようと思って、灯に電話しようとしたところだったの。」

何で?何で今なの?

「そうなの・・・。」

灯は唖然としていた。

今まで死ぬほど苦労してきたのに、決まるときはこんなに簡単に決まっちゃうなんて・・・。

しかも、私が生田さんに気持ちが言ってしまった途端に!

「わかった。・・・いつがいいの?」

もし、この時、母の陽子が灯の様子に気付いていたら、陽子は大恥をかかなくても済んだのに。

陽子は、灯の様子に気付かずに、日取りを決めた。









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