第68話:試験開始前
そして、学園外の騎士が来るとするならば。
浮かびそうになる笑みを堪えて連也は教官の話に耳を傾ける。
こんな顔をしているのを見られれば今後に差し支えるだろう。
「つまり、騎士やら何やらも今回の試験は見学することになる。だらしない試合はするなよ。以上だ」
そして、今回の試験のルールが書かれた紙が配布される。
当日までに準備は進めておけということだろうが、今回の試験で律羽に勝つのはさすがのやりすぎだ。
勝てるかはさておき、勝てると仮定した場合に上手く戦闘を棄権する方法も必要になってくる。
優秀であると上に示すのは必要だが、過度に注目されれば必ず標的に近付く際に何か不都合が発生する。
地上から来た人間にしては優秀なので今後の成長に期待したい所、その程度の評価で構わないのだ。
騎士達は各自で準備を進める。
ある者は己の優秀さをアピールする為、ある者は優秀たる自分を維持する為。
ある復讐者は目標に少しでも近づく為に準備していた。
そして、ついに試験の当日を迎える。
朝の弱い葵も今日ばかりはしっかりと起きて早朝訓練だ。
「ふわぁ、それで今日は連也は本気でやるの?」
「ああ、本気ではやるつもりだ。ただし、ゲオルギウスの能力は一部使わない」
「一部って・・・・・・?」
準備体操をしていた葵が首を傾げる。
完全に使わないのではなく、一部という意味が彼女には測りかねたのだろう。
「最初はゲオルギウスはほぼなしで行こうかと思ったんだけどな。手の内を全部見せるわけにもいかないからな」
「でも、先っぽだけ使う感じ?」
「言い方・・・・・・。それはともかく、俺は近い将来に新しい武器を手に入れるつもりだからな。手の内を見せた所で問題なくなる」
「・・・・・・新しいって、まさかアレ?」
「ああ、烈のエアリアルは俺が使うつもりだ」
学園に侵入したことは葵にも伝えてあり、いずれは烈のエアリアルを手に入れることも教えてあるのだ。
その為に学園に侵入して、色々と探ったのだから。
「使うって、同じエアリアルを二つなんて無理じゃないの?」
「ああ、普通はな。だけど、少し考えがあるんだよ」
エアリアルを併用できないのは周知の事実だが、それはなぜか。
単純に兵装とはエアリアルの装甲と周波数を調整してあり、別の兵装の能力を発動すれば極端な負荷がかかる。
増してや自分の兵装と他人の兵装を一度に操って二刀流、なんてやろうとすればすぐに制御できないレベルまで脳にダメージが行くだろう。
だが、その周波数の問題は連也が烈とほぼ同じエアリアルの使い方と調整を行っているので解決できる。
問題は兵装を同時に操る方で、それに関しては連也は知恵を振り絞った。
そして、完全な使用とはいかなくても戦力を倍増させる手段を思い付いた。
そもそも烈のエアリアルを手に入れる方法すら少し疑問なのだが。
「まあ、とにかく今回は律羽とやるんでしょ?」
「ああ、俺が逃げた所で律羽に宣戦布告されたしな。逃がしてくれないだろう」
「たぶん、わたしが自分のエアリアル使ってても勝てたかビミョーって感じだし・・・・・・強いよ、律羽」
「知ってる。伊達に筆頭名乗ってるわけじゃないだろ」
あの制度に操作技術、烈を将来的には超えてもおかしくない眩い才能が連也に全力で向かってくるのだ。
果たして、どこまでやれるのかを試す貴重な機会でもあった。
「まず、律羽と戦う所まで行かないとな」
今回のルールは二クラス合同の戦闘専門の騎士によるバトルロワイヤル。
何人倒したか、どんな成績の相手を倒したかが加算される仕組みだが、一人目で倒された場合でも内容や相手の成績も考慮するらしい。
初戦が律羽で負けたとしても内容次第では試験の成績も上がるというわけだ。
誰と当たるかわからないバトルロワイヤルの仕組みを緩和する良心的なシステムである。
加えて厄介なルールが一つだけあった。
―――持てる燃料タンクは一人一本。
そして、そのタンクは最初に支給された物を使うので満タンとは限らない。
今ある燃料でどこまでやれるかを考えるのも騎士に必要な技能と言うわけだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます