第67話:変化の予兆
「光璃も試験があるんじゃないのか?」
戦いは苦手だと言っていたが、支援で出るにしろ戦闘形式には変わりない。
「私は・・・・・・戦闘専門で出ることになりそうです」
「・・・・・・大丈夫なのか?」
「出ないわけにも行きませんから。連也くんは戦闘専門ですよね?」
「ああ、俺の場合は律羽と一緒だからな。プレッシャーも大きいな」
同じクラスである時点で律羽や岬のような優秀な騎士も参加するだろう。
東間のように快く思わない勢力もこれを機に襲ってくるかもしれない。
それを掻い潜りながら戦い抜けるか。
いや、別に成績よりも大切なことがあるので一番になる必要もない。
ただし、この後の復讐を遂げるには実力を示して取れる行動の幅を広げなければならない。
北尾はある意味で学園の直接の関係者ではなかったが、これから先は学園の中でも信頼されるのは絶対条件なのだ。
だから、今回は律羽とも正面からぶつかることになる。
「月崎さんと戦うのは確かに・・・・・・皆、戦いを避けますからね」
「避けるつもりはないけどな、いい機会だし」
「・・・・・・・・・」
まともに彼女と戦う相手に初めて出会ったのか、驚き顔で光璃は連也を見返した。
律羽の能力はまだ全てを知っているわけではないし、ほんの片鱗しか見ていないので勝てるかはわからない。
葵との戦いを見ても相当出来るし、連也はゲオルギウスの真髄をその戦いでは使えない。
ゲオルギウスの力を全て見せるのは、復讐の際に立ちはだかる障壁を排除する時になるだろう。
あの力は天空都市に二つとして存在しない能力だろう。
「さて、それじゃ・・・・・・俺はそろそろ戻るな」
「はい、また遊びに来てくださいね」
「ああ、色々ありがとな」
手を振り合って、教室へと戻っていく。
本当に心優しくて良くしてくれるし、いい友人を持ったものだ。
困ったことがあるならば、出来る限り力になってやりたいと思う。
そして、教室に戻ると律羽は隣の席で待機していた。
「やっと戻ってきたわね」
「ああ、ちょっと寝てたからな。おかげですっきりしたよ」
「・・・・・・随分と仲いいのね。膝枕なんかして貰っちゃって」
「・・・・・・・・・ん?」
終わったころにはソファーで眠っていたはずだが、妙な言葉が聞こえた気がした。
「確かに仲良くはなったぞ。光璃はいい奴だからな」
「ふーん。まあ、いいわ。それよりも試験の話を先に話しておこうと思ったのよ」
「ああ、悪いな。ちょうど光璃から聞いたから後は授業で伝達があった時で大丈夫そうだ」
「そう、わからないことがあったら聞いて」
律羽はじとーっとした目をしばし向けていたが、気を取り直したようにそう言って前を向く。
もうすぐ教官が来る時間なので、長々と説明を受ける時間もなかった。
「最初に言っておくわ。私は芦原くんのことは友人だと思っているし、色々と恩義があるのも忘れていないつもりよ」
「別に忘れてくれていいんだけどな」
「そういうわけにはいかないわ。ただ、試験は別よ。私はあなたを全力で蹴落とすつもりでやるから」
「おいおい、騎士長様が新人をボコるなんてあっていいのかよ」
「多分、あなたには本気でやらないと勝てそうにないから」
珍しく好戦的な眼を向けて来る律羽。
騎士達は無論、天空都市を救うつもりで必死にやっている人間がほとんどだ。
しかし、騎士同士の競い合いも学園内で発生しているのも事実。
スポーツであり、戦う力であり、守る為の力を持つのが騎士だ。
だから、好敵手と認めた相手とは全力でやり合うのも騎士の務めなのだ。
「さて、授業を始める前に言っておくぞ」
担任として入ってきた景教官が教壇から教室内を見回して告げる。
「まず一つはお待ちかねの試験だ。今年は恐らくクラス合同のサバイバル形式になる。日にちは恐らく来週の中頃だ。調整はしっかりやっておけよ」
言葉から察するに多くの騎士の中から生き残った者を評価する形式のようだ。
そうなると新参の連也達は特に不利になるが、景はそんな配慮は無用だと考えるだろう。
同じく連也が烈の技術の多くを継承したのを誰より知っているのは景なのだ。
「それともう一つは、天空都市で北尾氏の殺人事件があったのは知っていると思う。犯人はまだ捕まっていないが、念の為に定期的に学園にも見回りを配備することになった」
「見回りって何をするんですか?」
生徒の一人が質問し、景はさもありなんと頷く。
「夜の見回り強化、そして・・・・・・学園外の騎士が視察に来ることになった」
エアリアルが発展したのは近年のことなので、戦力の多くは学園に集結していると言える。
ただし、それ以前にも烈のような優れた騎士はいたし、優秀な指揮官を元にチームワークを極めて戦うのが以前までの戦いの特徴だった。
それが学園に来るとなると、少し状況は変わりそうだった。
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