第42話:初任務-Ⅱ
そして、簡単に連也はその能力を話すことにした。
無論だが固有兵装は今後の切り札なので能力の全容は伝えない。
あくまでも基礎となる部分だけを伝えておいた。
そうして、周囲の索敵システムを広げながらも敵と遭遇した時のパターンを確認する。
律羽も連也と葵の実力は信頼しているが、初任務となると何があるかわからないという判断らしい。
「それにして芦原くんも異常に落ち着いてるわね」
「取り乱すようだったら、初日から戦闘なんかしないだろ」
「・・・・・・そうだったわね」
ため息を吐く律羽と事も無げに返す連也。
「芦原君と月崎騎士長が会った日に何かあったんですか?」
琴音がその含みあるやり取りに何か感じたらしく、突っ込んで来る。
別に他人に隠すようなことではないので、教えても構わないだろう。
その時には既にレクチャー済み、という設定になっているのだ。
「僕も月崎と連也の馴れ初めは興味あるなぁ」
「藤川君、妙な言い方は止めて欲しいわね」
「でもさ、二人でデートしてたじゃん」
岬は容赦なくデリケートな部分に切り込んでくる。
遠慮しないのが交友関係と公言するだけあって、いい性格をしている。
「え、二人ってそういう関係だったの?」
「何があったかじっくり聞きたいなー」
目を丸くして驚く琴音と不機嫌そうにねっとりと連也に視線を向ける葵。
ついでに操縦している癖に非常に楽し気な笑顔を向ける岬。
「そういう関係じゃないわよ。それにあれは―――」
「デートじゃないって?」
「あ、あれは、デート・・・・・・だけど」
意外にもこの空気の中で素直に認める律羽を見て、少しだけ嬉しかった。
あの楽しい時間が嘘ではなかった、誤魔化していけないものなのだと律羽が思ってくれているとわかった。
「な、何をニヤニヤしてるのよ。あなたも当事者なのよ」
「俺は律羽とデートできて嬉しかったからな」
その堂々と返された答えに律羽はぐっと詰まって赤くなった顔で俯いた。
どうやら、少しは意識して貰えているようで何よりだ。
「やっぱり気のせいじゃなかったんだ。二人の仲がねっとり進展してる気がしたんだよね」
葵が腕組みしつつ唸り、ふんと鼻を鳴らす。
「進展なんかしてない。芦原くんの目が節穴じゃないってことがわかったからサービスよ」
「良かったね、連也。上城からしたら面白くないかもだけど。いっそ、二人とも連也と結婚すればいいじゃん」
「藤川くん・・・・・・!!」
「えっ、やっぱりハーレムオーケー!?」
さらりと告げた言葉に律羽は慌てて止めたが遅かった。
葵は瞳を輝かせて岬の方に視線をやり、再び律羽と連也に視線を戻した。
「・・・・・・言わない方が平和な気がしてたのに」
「ま、まあまあ・・・・・・いずれは知られることなので」
頭を抱える律羽を優しく宥める琴音。
岬がペラペラと喋ってくれた情報によれば天空都市は葵の調査通りに女性の方が少しばかり多い。
そうなれば人口が元から多くはない都市だ、後継者の問題も出て来る。
申請を出して審査項目をクリア、合意が確認されれば妻帯が最大二名も可能だそうだ。
「律羽、頑張ろうね!!」
「・・・・・・その気にならないで」
笑顔弾ける葵とため息連続記録が更新される律羽。
「連也的にはアリ?」
岬がひっそりと貝のように生きていた連也に話を振ってくる。
話を振られないように気配を消していたのに。
「・・・・・・俺にだけは触れないでくれって思ってたんだけどな」
まだ葵の気持ちにすら返事をできる状態ではないので、そんなことはわからない。
岬は連也が抱える事情など知らないだろうから仕方のないことなのだが。
何にせよ、葵はとても嬉しそうだった。
「はっきり言うのが僕の交友関係なんでね」
もちろん索敵の様子は確認している。
だが、久しぶりに気心の知れたメンバーでこうして和やかな話をした気がする。
どちらを嫁にするか、独り身のままかとかはともかくだ。
「さて、そろそろ着くよ。浮島はすぐそこだから」
談笑し続けていただけだが、岬は何だかんだで操縦をきっちりやってくれていた。
窓の外を覗くと周囲には不思議な光景が広がっていた。
島が何故か天空に浮いているのだ。
どんな原理かはわからないが、それも含めて島の材質調査も行うようだ。
ただ島の地面等を削って持って来ればよく、今回の調査対象の浮島はかなり小さいのですぐに終わるだろう。
確かに初心者向けの任務かもしれない。
「おっ・・・・・・?」
不意に岬が索敵マップを覗き込んで声を上げる。
ぽつりとマップには反応があり、はぐれた敵がいる様子だった。
全員の空気がそれだけで変わる。
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