第41話:初任務
決まってしまえば元は教官持ちの任務、後は早い。
元から連也の任務は予定されていたのが、早めに取り組めた原因の一つでもある。
翌日の昼には連也達は港へと移動して準備を完了させていた。
メンバーは予定通りの五人。
「あ、あの、天木燐奈って言います。今日はよろしくお願いします」
緊張した様子で全員に挨拶をする琴音。
「あー、わたしも初めてだからよろしく!!」
「上城はリラックスしすぎだね、天木さんね。よろしく」
「岬っちだって落ち着いてんじゃん」
「岬っちは止めて欲しいんだけど・・・・・・僕は慣れてるからね」
初めての癖に全く緊張していない葵と慣れている様子の岬。
二人も会話する上で特に問題はなさそうだ。
さて、最後の一人はというと。
「・・・・・・天木燐奈さんは補助型だったわね。私も確か補助系の授業を受けたことがあるから、一月前くらいに一緒に受けた覚えがあるわ」
少しだけ間を挟んで口を挟む律羽。
「私のこと、覚えててくれたんですか?」
「ええ、一度話をしたじゃない。天木さんがペンを落とした流れでね」
「・・・・・・・・・」
そのわずかな出会いを最高の騎士が覚えていてくれた。
それは事ねにとっては信じらないものだったらしいが、連也達にとっては慣れたものだった。
彼女は記憶力は確かにいい方だが、人との出会いを絶対に忘れない。
全ての人間に真っ直ぐに向き合おうとしているからだ。
「それにね、補助の授業に前衛の授業も掛け持ちして頑張っていたから覚えてるわ。お姉さんにもお世話になってるわ」
あえて姉の話を最後に持ってきた。
彼女のことを覚えていたのなら、姉へのコンプレックスもまた記憶していたのかもしれない。
律羽は最初に何かを話しかけて、止めたようだった。
あれは天木姉の話だったのかもしれなかった。
「私、頑張りますから!」
「ええ、補助が足りないから期待しているわね。でも、気負い過ぎないでね。今回は難易度も低いはずだし、地上の生徒が経験を積むのも兼ねてるから」
しっかりと真面目な琴音が緊張しないようにフォローを入れる辺りもさすがだった。
小型の飛空艇と言っても、操縦室に会議室と個室数部屋を内包する程度の広さはある。
原理的にはエアリアルと似ているようで、生徒でも操縦できるようにしてある。
操作方法は地上のゲームセンターにあった車のゲームに似ている。
現地へのマップと現在地の表示が一体化しており、手元のレバーを操作して進路を変更して放出と停止をボタンで押すだけ。
だが、今回は何かあればということで通信先の飛空艇管理所に連絡が通じるようにしてある。
エアリアルにも使用されている浮遊システムのおかげで発展したのが飛空艇だ。
これは本来なら技術者や操縦者を積むのだが、構造も簡素で操縦は誰でも少し慣れればできる。
事前のメンテナンスを受けてさえいれば、飛空艇は生徒だけで操れる。
もちろん飛空艇の操縦の授業もあり、受けている生徒は岬と律羽と琴音が交代で操縦する。
ちなみに一か所に停止と前進させておくだけなら無人で可能だ。
「任務って言ってもこの周囲の探索でしょ?出ても雑魚、侮りは禁物なのはわかるけどさ」
最初の操縦担当の岬が椅子で欠伸をしながら愚痴る。
操縦はしばらく直進なのがマップでわかるので道によってはしばらくヒマだ。
「本当に油断は禁物よ。もしかしたら、強い魔物がいるかもしれないんだから。通常の獣災ならいいけど、
「はいはい、わかってるよ」
悪魔型とは景の授業の中でも触れられていた存在だった。
大きさは人型よりやや大型だが、その殺傷力は普通の獣災を遥かに凌ぐ。
現状で確認されているのは全身が赤黒い異形だが、遭遇すればまともにやり合うなが鉄則だ。
「そういえば芦原君。それは何?」
琴音がふと気付いて、連也の腕に嵌っている黒と金色の腕輪のようなものをに目をやった。
「ああ、俺の固有兵装」
「ふーん、あなたの固有・・・・・・って聞いてないわよ」
律羽は納得しかけたが一転ツッコミを入れる玄人の技術を見せる。
近日、連也にも固有兵装が与えられるという話は律羽にも言っているはずだ。
しかし、それが今日とは全く聞いていなかったようだ。
それは、これが天空都市から今日になって与えられたものではないからだ。
景に寮に運ばせたのはこれで、メンテナンスを依頼していたのだ。
今度は交替で葵の兵装がメンテナンス中だ。
「あまりにもさりげなく言うから聞き逃しそうになったわ」
「まあ、今日言えばいいかなーって思ってさ」
「まあ、いいわ。葵はまだなのね?」
「わたしのはメンテ中、もうすぐ終わるんじゃないかなぁ」
「それで能力は?知っておいた方がいいでしょ」
岬が突っ込んだ通りで事前に連携を組むのであれば能力は教えるのが普通だ。
何が出来るかによって成功率は露骨に変わるからだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます