第40話:初任務への誘い
それから五日、宴会までも残り五日へと迫った日のことだった。
「そろそろ任務受けない?」
岬と教室でパンを齧っていた所で不意にそう切り出される。
そういえばそういう話もあったかもしれない。
岬は既に候補を絞っていてくれたようで、紙を一枚机に置いた。
「悪いな、探してくれたのか?」
「僕の独断と偏見・・・・・・って言いたいけど、石流教官からのお勧めでね」
「石流教官とお前、仲良かったっけ?」
「いや、全然。ただあの人、そういうのに顔広いから。色々、掲示されてない任務持ってるらしいんだよね」
任務は教官の所に来るものと生徒用に掲示されるものがある。
確かに転用技術学という重要な内容を任され、教官の中でもそれなりに発言力はありそうな印象だ。
新しい研究まで独自に行っているようだし、人造獣災の技術も彼女の評価には繋がっているのかもしれない。
あの研究は胡散臭い所もあるが、正しく使えば有用であることは間違いない。
「へえ、そうなのか」
「それで近場の探索を貰って来たってわけ。課題の提出のついでだったけどね」
「それで参加人数の制限とかはないのか?」
「四人かな。それ以下は参加不可。メンバー探しは任せたよ」
「四人、ねえ・・・・・・」
任務に向かうのはいいし、危険度の少ない任務を岬は選んできたのだろう。
というより、常識的に考えて教官が地上の人間を連れて行く任務に最初から危険度の高い物を選ぶのは有り得ない。
アクシデントは付き物なので絶対はないが。
「わかった、色々と当たってみる。少し待ってくれるか」
任務に行くのはいいが、少し準備をする必要があった。
場所を移動して物陰から景に連絡を入れておく。
この任務はあることを確かめるいい機会だ。
だが、その為に他のメンバーを危険に晒すわけにはいかない。
やれることは先にやっておかなければならない。
教室を出ると連也は別のクラスへと向かった。
誘う当てはむしろここしかなかった。
「え、私・・・・・・?」
別のクラスの天木琴音はその申し出を聞くと驚き顔で出迎えた。
「ああ、良かったらなんだけど俺の周辺って前衛しかいなくてさ」
律羽は多少は後ろからの援護も出来そうだが、騎士長を後ろで援護させるのは性質的に勿体ない。
最初から支援に優れた人間を一人雇っておくのは部隊の鉄則だ。
天木琴音は後衛としては、ナンバーツーの燐奈にもそれなりには認められる才能の持ち主だ。
「でも、私・・・・・・」
「もちろん、断ったからって文句を言う気なんかない。気が乗らなきゃ断ってくれていいよ」
琴音が断っても気に病まないように先に言っておく。
彼女が参加してくれれば嬉しいが、断るのは自由だ。
「うん、折角誘ってくれたんだし一緒に行ってもいい?」
「ありがとう、助かる。俺も知り合いそこまでいなくてさ」
メンバーは琴音が最適だったので、心からそう言った。
彼女には支援としての役割の他にも任務な必要な要素があった。
利用するようで申し訳ないが、参加したからには琴音にも実りのある任務にしたと思っているのが本音だ。
「メンバーはどうなってるの?」
「俺ともう一人男友達、律羽と同じ地上から来た葵を誘ってみようと思ってる」
「月崎さんにお願いすれば色々と人も集まったんじゃないの?」
「初任務だし、信頼関係が築けてるメンバーで行った方がいいって言われてな」
実はここに来る前に律羽には声を掛けてあり、二つ返事でオーケーだった。
その時に今回は連也が選ぶべきだと律羽からも言われていたのだ。
エアリアルが扱えようと最初の任務、背中を預けられる仲間と行くべきだと言われたのだ。
「あはは・・・・・・私、そこまで信頼に応えられるかわからないけど」
「燐奈にも言われただろ、後衛の才能があるって。それに天木はいい奴だ。それで十分だよ」
確かに実力の問題も任務にはどうしても付き纏う。
だが、こいつになら背中を任せてもいいと思える人間と組むのが一番重要だと思っている。
味方が自分の為に力を懸命に振るってくれている、その信頼感が自分の能力を最大限に発揮できる鍵だ。
こうして初任務のメンバーは決定した。
前衛が律羽、岬、葵。
中衛が連也、後衛が琴音。
このフォーメーションが一番バランスがいいと判断した。
今回の任務は周辺の浮島の探索。
律羽が今回は小型飛空艇の手配までやってくれて、無事に任務へと向かう準備はできたのだった。
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