第32話:エアリアル・アーム
そして、幽霊の話題も終わり授業へと移る。
授業の前に景が近付いてきて言った。
“お前にもそろそろ任務受けて貰うからな。ちゃんと聞いとけよ”と。
連也は確かにエアリアルの心得はあるが、集団戦となると話は別だ。
理論的には教わったが、力があっても戦線を崩壊させる可能性があることはわかっていた。
その意味でも体裁抜きで景は釘を刺しに来たのだろう。
基本的に
その為には集団で出撃することが多く、集団戦のセオリーも覚えておかなくてはならない。
「さて、それでは集団戦に関しての復習な。死にたくなければ聞いておいた方がいいぞ」
ちなみに蒼風学園には学年という概念はなく、あるのは何回生という年齢を示す名称だけだ。
クラス単位で受ける必修科目以外はそれぞれが取りたい授業を取る。
大学に近いシステムではあるが、学年の概念がないのが異なる点だった。
今回の授業は数少ない律羽も葵もいない授業だった。
出来るだけ葵と連也は纏めて受けるように指示されたが、全て同じとはいかない。
連也の方が少し先に授業を受けてしまった関係でそうなった。
律羽はもう受講済みの授業だったようだ。
そして、それ以外に一つだけ問題があった。
「なあ、悪いけど教本見せてくれないか?俺、まだ入ったばかりでさ」
まだ連也は入ったばかり故に貰っていない教本もある。
色々な手続きもあったせいで、連也の授業の提出が遅れたのは無理もないことだ。
この授業の席は自由なので、当然ながら隣の生徒は顔見知りではない。
「あ・・・・・・はい、どうぞ」
隣に座る女子生徒は少し驚いた様子だったが、連也の友好的な様子を見て警戒を解いたらしい。
後ろで髪を一つに括り、優しげな色を瞳に浮かべた大人しそうな少女だった。
「悪い。俺は芦原連也、地上から来たんだけど仲良くしてくれ」
「あ、芦原さん・・・・・・?」
「おう、それ俺ね。あんまり友達いなくてさ」
「・・・・・・あ、私は
慌てたように挨拶を返してくる少女は自信なさげな口調ではあるものの、十分に会話が成立するレベルのコミュニケーション能力だった。
言う程に友達が出来ない性格にも見えなかった。
「授業で会ったら声かけてくれよな。こっちからも声かけていいか?」
「はい、私で良ければ喜んで」
大人しそうだがいい子だった。
教科書を共有しながら授業を真面目に受けることにした。
それにしても天木・・・・・・どこかで聞いた名だ。
無論だが彼女本人と面識がないのは間違いないし、天木さんくらいは他にもいるだろう。
「まずは空獣の基本から復習だ。確認されている型の一部な」
さらりと素早くイラストを黒板に記入する景教官。
巨大な鳥、トカゲ、ライオン、いずれも羽が生えている。
意外と雑ながら特徴を捉えており、絵心を感じさせられた。
その下にはそれぞれの名称である
それらは空に住む獣であり、外敵または
その為にもエアリアルは市民用と軍事用で分けられている。
軍事用が急速に発展したのはそう昔でもなく、騎士はまだまだ人材不足らしい。
「あれ以外も色々いるんだよな?」
「そうですね、
隣の琴音が質問に答えてくれる。
どうやら態度が固かったのも緊張からだったらしく、今は普通に受け答えしてくれていた。
「こいつらの性質を把握した上でお前らは固有か汎用かはともかく武器を振るうわけだ」
地上では古来、獣を狩る為に武器を創り出した。
強大な個体も存在する獣に対抗する為にはエアリアルを駆動するだけでは戦力不足だ。
そこで登場するのがエアリアル・アーム、通称は兵装。
簡単に言えばエアリアル用の固有武器。
誰にでも扱える汎用性エアリアル・アームに対して固有エアリアル・アームは高い戦闘力を持つ。
エアリアルとは飛行する為のシステムで人間の思考とリンクした動作が可能だ。
固有兵装は更に人間による思考と動作を要求して来る。
エアリアルを操りながら兵装の起動もこなす為、エアリアルを二つ操るレベルのセンスが求められる。
これは一種の才能で、個人の脳波の波長や速度によって最適な能力が変わる。
―――しかし、それはあくまでも科学。
時間を止めたりとか、回復魔法で怪我も全快なんて魔法は存在しない。
昔からすれば魔法めいた能力もあるにはあるが、確固たる理論で構築されている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます