第9話:学園生活の始まり
「
場所は変わり教室で連也は無難に挨拶を終える。
ちらりと律羽の方を見ると、やはり真面目に喋り切った連也を宇宙人を見る目で見ていた。
「人間的にも能力的にも問題ないってことでここに送られていている奴だ。ここの生活に慣れるのは難しいだろうから、皆で助けてやってくれ」
それを引き継いで担当教官である
少なくとも無難な言葉を選んだせいか、興味の目は注がれていたが思ったよりの悪意に満ちた目は少なかった。
「じゃあ、席は月崎の隣な。面倒見てやれよ、騎士長」
「はい、わかりました」
答える律羽の隣に腰かける。
「改めてよろしくな、右も左もわからないからさ」
「何か放っておいても勝手にやる気がしてきたけど・・・・・・まあ、いいわ。責任持って面倒は見る」
「ありがとな。そういう優しい所、俺は好きだぞ」
「だ、だから、そういう誤解を招く発言をするなって言ってるでしょう」
少し慌てたように教室内を見渡すが、幸いにも気にした生徒はいなかったようだ。
やや赤くなっている所からも男慣れはしていないようだ。
騎士長という立場がそうさせたのかもしれない。
「何にしても、大人しくしていることね。周囲から見られる立場なんだから」
「ああ、わかってる。言っただろ、喧嘩を売る気は全くない」
「・・・・・・どうだか」
ため息を吐くと律羽は前を向く。
そして、同じく前を向いた連也はわずかに笑みを浮かべる。
天空都市に暮らす人間に喧嘩を売る気はない、それは本当だ。
――—ただ、物事には例外も付き物ということだ。
「これからの授業だが、少しだけ基本にも触れるよう別の教官にも依頼しておくが、授業の進行に大きな影響が出ないように配慮するつもりだ」
前では今後についてを景教官が話を進めている。
地上から来た人間に全く配慮をしないわけにもいかないが、天空都市の生徒にも配慮をしなければならない。
これでは誰も連也達を担当したがらないのも納得だ。
「適性値は一番下から初めて貰うが、折を見て再度計測する」
この
クラスで受けるものを除けば好きな授業を選択するが、成績の基準が明示されている授業もある。
その基準となるのが、実技や過去の成績等を示す適性値だ。
連也はエアリアルの適性自体は高いが、実績がないので一番下のE判定をいただいた。
どうやら、こうして生徒同士の競争を促しているようだ。
「実技にも参加して貰うが、芦原は気負うなよ。とりあえず今日は授業を聞いて雰囲気を掴んでくれ」
「はい、そうします」
「よし。それじゃ、色々質問もあると思うが後にしろ」
気負うなよとは景教官は立場的に言ったものの、その目は何か別の意味を持っているようだった。
あまり目立つなよとかそういう意味だろうか。
この後はそのまま、景教官の担当する“
興味ありげな
歴史からエアリアルの構造にも触れていく内容で、基本となる授業なのでクラス共通の授業となる・・・・・・らしい。
「・・・・・・ううむ」
勉強や座学はそこまで得意ではない。
出来るか出来ないかと聞かれれば、それなりにはこなせるが好き嫌いとは別の話だ。
ピーマンは食えるが、嫌いだという話と同じである。
「何を唸ってるのよ?困ったことでもあったの?」
連也の様子を見咎めた律羽が声を掛けて来る。
「座学は嫌いなんだよ。お尻がむずむずする」
「その、お尻の奇病は知らないけど、座学が出来ないとここではやっていけないわよ」
「理科の実験みたいなのはないのか?アレなら平気だ」
「理科って何よ・・・・・・。実験は私達のやる範囲を超えてるから」
「そうか、我慢するか・・・・・・」
教科書は改訂の問題で一部はまだだが、事前に支給されているのでとりあえず捲ってみる。
教壇では既に景教官が話を進めていて、知り合いが教官をやっている事実が新鮮だ。
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