番外編!お正月!

「うぉら!」


「んなっ?!」


 ま、不味い!このままじゃ!そうだ、これならば!


「羽アタック!」


「はい、鈴ちゃん反則負けだよー」


「えー!」


 まだまだ寒いある日の朝、身に染みる寒さの中隆継の放った一撃を翼で受け止めた僕は、審判をしてるちー姉ちゃんにそう言われ、渋々とちー姉ちゃんの元へ向かう。


「それじゃあ隆継君、筆と墨ね。どこに落書きしちゃうの?」


「そうだなぁ……よし、目の周りに丸を付けよう」


「冷たっ!」


「ふはははは。敗者は敗者らしく罰を受けるのだ。という訳でしっかり目ぇー閉じてろよー」


「ぶー……というか、なんで隆継は私服なのに僕は振袖なのさ!せっかくの正月遊びなのに、こんな動きにくい格好じゃ勝てるのも勝てないよちー姉ちゃん!」


 既にほっぺたにバッテンを書かれ、その上隆継に目の周りへ丸を描かれた僕は、手をバタバタ動かして来ている振袖の袖を大きく動かしながらそう抗議する。


「こらこらそんなに暴れないの。まぁでも、もうそろそろ皆も来るし、羽根つきはここら辺でおしまいにしとこうか」


 ピンポーン


「噂をすればなんとやらだー!」


「あ!鈴ちゃん顔ー……拭かずに行っちゃった。ま、知り合いだし大丈夫でしょ」


 てってってってってっとピンポンが聞こえた玄関へ、僕はちー姉ちゃんの声を背に受けながら振袖を乱さない程度に駆け足で中庭から向かうと、待っているお客さんに顔を出す。


「三浦せんせ!いらっしゃいませ!」


「おう……って、散々やられたみたいだなぁ鈴香」


 散々やられた……?


「あっ、えへへへへ……ととっ、そうだそうだ。あけましておめでとうございます、三浦先生!」


 僕の顔を見てギョッとした三浦にそう言われ、僕は今の僕の顔を思い出し少し恥ずかしがった後、そう言って三浦先生へ今年初めての挨拶をする。


「あけましておめでとう、鈴香。ほれお年玉だ。大切に使えよー?」


「わーい!ありがとうございます三浦先生ー!」


 そう、今日は元旦、年初めの最初の日であるお正月なのだ。


「あれ?そういや会長は?来るって聞いてたんですけど……」


「会長は急な仕事が入ってな」


「そうでしたか……」


「だが──────」


「梨奈はいるよー!おねーちゃん!」


「梨奈ちゃーん!いらっしゃい!あけましておめでとー!」


「あけましておめでとー!」


「お前ら仲良いなぁ……ま、そう言う訳で会長から梨奈嬢を預かってきた。今日1日いっぱい遊んでやってくれとの事だ。所で結は?」


「結君なら「振袖美少女コンテストに出てくるから!」って朝からさなちゃんと一緒に出てますよー」


「おぉぉ……楽しんでんなぁアイツ。まぁいい、とりあえずいつまでも外にいてもあれだしな、中に上がらせて貰ってもいいか?」


「はい!僕達もちょうど家に上がるつもりだったので!」


 むぎゅうっと三浦先生の後ろからひょっこりと出てきた梨奈ちゃんを抱っこしつつ、僕はそう言って三浦先生を家の中へと上げるのだった。


 ーーーーーーーーーーーー


「いっちにーさんしーごー……っと、えっと何何?尻尾が生えちゃった、驚きのあまり1回休み……わかるぅー……」


「実感が篭ってんなぁ……」


「ふふっ♪鈴ちゃんもこうなったばかりの頃は尻尾とか翼に驚いてたよねー。それに、最初は思った通りに動かすのも大変だったみたいだもんねー」


「おねーちゃんの尻尾凄いもん!私も欲しいー」


「ふふふっ、尻尾を使いこなすのは大変だぞー梨奈ちゃん。ほら、梨奈ちゃんの番だよー」


「はーい!あ、6出たー!」


「おぉー!えーっと「これを踏んだ君はラッキー!ゴール前までひとっ飛びだ!」えっ、梨奈ちゃん凄い!でもずるーい!」


「えへへへへへ♪」


 ーーーーーーーーーーーー


「めんこ?」


「そ、めんこ。この間実家から送られて来てねー」


「実家ー……っていうと、おばあちゃんから?」


「そうそう、せっかくのお正月なんだ、たまには古き良き遊びも楽しんでみなさいってさ」


「ほほう、なら次はこれやろっか!順番はどうする?」


「俺は最後でいいぞ」


「梨奈は二番がいいー」


「梨奈ちゃんは堅実だねぇ。じゃあここは僕からっ──────」


 ベチィン!


「…………い、今、凄い音したな……」


「おねーちゃん、これ張り付いて剥がせないよ」


「鈴ちゃん……やりすぎちゃったねぇ」


「あはははは……」


 ーーーーーーーーーーーー


「気を取り直して、次はだるま落としなんてどうだ?」


 張り付いてしまっためんこを代わりになんとか剥がそうとする三浦先生を横目に、先程ちー姉ちゃんがめんこを取り出した箱から隆継はだるま落としを持ってくる。


「おぉー!」


 だるま落とし!1回はやってみたかったやつだ!


「ただし鈴香、テメェはダメだ」


「へ?」


「はしゃぎすぎるとお前は力加減が出来ないだろう?モロ力を使うこれに関しては流石に参加させる訳にはいかん。だからな、大人しく見ててくれ」


「うっ……」


 隆継にそう言われ、僕はしゅんとなりながら大人しくなる。

 しかし苦戦する隆継や梨奈ちゃんを応援してる内に、そんな気持ちはどこへやら、すっかり二人のだるま落としに熱中してしまったのだった。


 こうして僕は、お正月遊びを満喫したのであった。


 そして夕方──────


 ピンポーン……


 あ、来た!


「いらっしゃい!あけましておめでとうございます!」


 僕はそう言って「皆」を御出迎えするのであった。

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ドラゴンガール!?〜現代社会に龍娘!?〜 こたつ @KOTATU64

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