23歳、男性…就職浪人中(2)



職場から駐輪場までは少し歩く。

眠い目を擦りながらインスタのストーリーをチェックする。




“同期3150” “今週もおつかれ” “この一杯のために頑張った”




「あぁ、そういえば今日は金曜日だったか。

だからやけにスーツの奴らが多かったわけだ。」




金曜日はスーツで乾杯のストーリーが多くなる。




「はいはい、社会人は大変だけど自分の働いているところは素敵な仲間がいますよー辛いけど楽しいですよアピールご苦労様でーす」




まだ見ていないのもあるが画面の電源を切る。

別に見たくないからではない。駐輪場に着いたからだ。







どうして自分はこうなってしまったんだろう。





別に他人と違う生き方がしたかったわけではない。

ましてや夢や希望があってこの道を選んだわけでもない。



普通のいわゆる一般企業で新入社員として働く予定だった。




大学なんて単位さえ取って卒業して、あとは周りと同じく過ごしていたら就職できると思っていた。




特に有名企業に就職したいわけでもなく、大手の商社などに勤めたいと思うわけでもなく、その辺の中小企業やどっかの営業マンにでもなるんだろうな、と思っていた。




でも現実はそうならなかった。




4年の春頃には内定を貰っていたり、最終選考まで進んでいたりする者もいたが、まだ就活を始めたばかりの者も多く、初めてすらいないと言う者もいたので、俺は特に焦りなどはなかった。



それ以前に、何社か二次選考まで進んでいけたので、選ぶ余裕すらあった。




もらうのは全てお祈りメール。



でも周りにもまだ内定をもらえていないやつは多い。




「自分は特に会社にこだわりは無いんだから、選り好みしなければ入れる会社なんて沢山あるだろ」

と、自分にはまだ選択肢があると思い込んでいた。




俺の周りの奴らは早い段階で内定をもらっていたので、卒業旅行の計画を立てたり、追いコンをしたりで、一度就活をやめて自分も一緒になって大学生最後の夏を満喫していた。




「夏休み明けてからまた探せば大丈夫」




「秋でもまだこんなに内定もらってないやつがいるんだからまだ大丈夫」




「サークルの先輩で卒業間近に内定決まった人もいたからこの時期なら余裕」




「今掲載されてるとこならまだあとでも載ってるでしょ」






俺のメール画面はお祈りメールでいっぱいになった。

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