壊れてしまった僕と彼女の話
花音
終わりのとき
ふふ、ととても楽しそうに笑う君と微笑む僕はとても仲のいい恋人のように見えるだろうか。
「ねぇねぇ、みてみて!」
彼女の手にはくたくたによれたロープ。その輪に迷わず頭を入れて、まるでメダルをもらった子どものように無邪気に笑う。
「似合う?」
そう問いかけられても、僕はもうこう返すことしかできない。
「うん、とても似合うよ。」
ふふ、とまた嬉しそうに笑ってスカートを翻らせながらくるりとまわる。その姿はとても楽しそうで。そしてどこまでも幸せそうに見えた。
軽やかな足取りで台に登り、梁にロープを括りつける。振り返った彼女は真っ直ぐな瞳で私に言った。
「愛してる。これからもずっとよ。」
「僕もだよ。これからもずっと。」
ふわっと満足気に穏やかな笑みを浮かべて彼女は台を蹴った。
ぎしっ、と嫌な音が鳴り彼女の首が締まる。苦しそうなうめき声。僕はそれをただ見ていた。もう、こうするしかないのだと。止めることは彼女を苦しめることになる、楽にさせてあげるのが最期に僕が彼女にできることだから。
「す、き」
息絶える前に彼女が言う、その顔は笑っていた。
僕は泣きながらその唇にキスをして、またねと呟く。
こうなる前にいくつもの分岐点があった。それを僕らは一つ一つ間違えてゆき、もうどうにもならなくなってしまった。
お願いだから僕を許さないで。
どうか次に出会った時は、生きて幸せになろう。
僕も笑いながら台に上りよれたロープに首をかけて足を離した。
壊れてしまった僕と彼女の話 花音 @kanon_music
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます