第11話偶然10倍の力

「じゃあそろそろお別れね。」




神様は残念そうに言う。






「すいません、本当に色々と……ありがとうございました!」




俺は精一杯の感謝を伝える。




「それじゃ、世界を救うヒーローを目指して、頑張ってね!」






と言うと俺の体は何かに引っ張られるように浮き上がる。




「ぐえっ!」






ざわ……




久しぶりの神様以外の声が聞こえる。




俺は岩の上に倒れ込んでいた、 ちょうど先程とおなじポーズのまま。




皆俺を見ながら上に刺さっている剣をちらちら覗いている。




俺は急いで岩の上から降りる。




「だ、大丈夫ですか!?」




ロゼリーヌが心配そうに駆け寄る。




「大丈夫だよ、すごい風だったね……とりあえず実技試験の場所に行こう。」




曖昧な苦笑いを交えてとぼける。




そうして俺達は会場へと向かった。




会場につくと筋骨隆々という単語が似合う男がいた この人が試験官なのか?




男は周りを一瞥する。




「えーではこれより実技試験を開始する!!私の名前はデベル!!今回の試験官を務めさせてもらう!!」




声でっか!!




と耳をさすっている内にデベルは地面に両手を下げる。


なんだ?と思っていると……






割れる音、卵とかじゃない、もっと大きな亀裂が入る音。




割れた地面から巨大な岩の壁が出てくる、俺の身長の2倍ぐらいだから……340cmくらいか。




「この壁を1分のうちに壊せたやつが合格だ!!では名前を呼んでいくので順番に来い!!」




思ったより単純な試験だが魔物を倒すのに必要な腕っぷしを測るのなら理にかなっている。




といろんなことを考えていると前にいた男が俺に振り向き




「へっ!!何か考えてるみたいだけど、お前じゃ無理だろうな!あんな風に吹っ飛ばされてるようじゃなぁー?」




と嫌味を言ってくるが俺は男の筋肉に驚いた。




先程のデベルさん以上の筋肉だ




「俺の名前はアンレグ、いずれハンターの王になる男だ!!精々覚えときな!!」




そういってアンレグはてくてくと歩いていく、するとタイミングを見計らったかのようにロゼリーヌがくる




「凄い人でしたね……その、色々と……」




うむ、筋肉も自信も性格もいろんな意味で凄いやつだった。




「あいつが言ってたハンターってなに?」




「最近、魔物を討伐する人達をまとめてそう呼ぶようになってきた……とお父様が言ってました。」




ロゼリーヌは知らなかったのだろうか。






とそんな事を考えているうちに試験は始まった。




「ではまず……アンレグ!!」




うおぉ……あいついきなりか。




アンレグはこちらを見てニヤリと笑い岩の壁の前に向かう。




「では……始め!!」




開始の合図がなる。




「うおおおおお!!!!」




大きい叫び声からアンレグの一撃が放たれる……!!




そしてそこに残ったのは




「ぎゃああああああああああ!!いっていってえええええええ!!?」




傷みによって地面を転がり回っているアンレグ。




そしてそれは1分間どころか12分ぐらい続いた。






さらに試験は続いた……が……




なんと50人もの人間が落ちた、成功者はまだ出ていない。




50分の間に諦めたのだろうか俺たちの周りにいたのは10数人程度だった。




「次!!ロゼリーヌ」




「はい!!」




いよいよロゼリーヌの番だ。




デベルはロゼリーヌに




「王女様……貴方様といえど魔物を討伐する際に危険はつきもの 手加減はしません!!」




こっそりと告げる。






そういえばあのお父さんはロゼリーヌを止めたりしなかったのだろうか。




「始め!!」




と開始の合図と共にロゼリーヌは杖を回す




(物理的な強度は相当……それなら!!)




ロゼリーヌの杖に白青茶の3色の色が集まる。




「複合魔法か……」






どこからかそんな声が聞こえた。


「(まずは土で弾を創る……そしてそれを氷で硬化させる!)」




ロゼリーヌの周りに氷の弾が何個も浮かぶ




「(でもそれだけじゃあれは砕けない……なら!!)」




そして弾から強い風の力を感じる。




見ると全ての弾が風によって回転していた。






「(砕くのではなくて……削る!!)」




そして壁にいくつもの弾が放たれる。




弾は壁にぶつかるも砕けず壁をじわじわと削いでいた。




なるほど、これなら……








そして30秒ほどたったところで壁は勢い良く穴を開けた。




「良し!!合格!!」






デベルは叫ぶ!!ロゼリーヌは嬉しそうにこちらを向いて微笑む。






俺はサムズアップで返す。




「次、た……?タクミ!!」




少しどもりつつ俺の名前が呼ばれる。




やっぱり俺の名前はこの世界では特殊な部類なのだろうか。




俺は先程までの50分間スマートフォンをこっそりいじっていた。




そして確認したところこれは俺のステータスが映し出されている。





イメージを重ねることでステータスを運という最強の力で補填できるらしい。




純粋に運を使っても多分攻略できるだろうが俺はテストも含めて運から譲渡する力を使ってみようと思う。




俺は岩の壁を前にしてイメージする。






とりあえず……アンレグのあの体でビクともしないんだろう……?




アンレグのあの筋肉、普通の人の7倍ぐらいはあったぞ。




アンレグを350と仮定すると……とりあえず500くらいは必要だろう。




俺は頭の中で496分の運を力に変えるイメージをする。




よし、これでたまたま俺の力は500相当になったはずだ。




「始め!!」




開始の合図がなる。




でもこれ間違えたら相当痛いことに……




とりあえず俺は強度を確かめようと軽くデコピンをしてみる。




ドゴ




そんな音が鳴ったかと思うと岩は綺麗さっぱり俺が触れた部分から消し飛んでいた。




周りからざわめきの声が上がる。




いやいや




待て待て




アンレグで壊せなかったんだろ!?




と俺は自分の腕を見る。




先程までとなんら変わりない様子だ。




俺は気づいた、そして1人でにボソリと呟いた。




「この世界って……ステータスと見た目関係ないの?」




「ご名答……」


神様の声がスマートフォンから聞こえた




「アンレグくんの力は……48ね、あれは見た目を設定しただけでそれは実際のもの、ステータスとは違う場合


があるのよ……」






後ろを見ると拳を抑えながらアンレグが俺を驚嘆の瞳で見つめていた。




そして走って会場から出ていった。




とりあえず力戻そう、デコピンであれって……

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異世界で最強になったけど力も素早さも魔力も防御もいらなかったんだ イタチキツネ @paperhazar

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