けもフレ奇譚
はいいろわんこ
かばんとさーばるとなぞのいんせき
「うわあああ!うひひひ!えひひひひ!」
黄色いケモミミ少女、サーバルは走っていた。
「うわああああ!捕まえないでください!」
赤い服のヒト、かばんもまた走っていた。
「みゃー!そこだー!捕まえた!」
サーバルはジャンプするとかばんに跳びかかった。
「うわあああ!」
かばんはとっさに身構える。
ドカーン!
そのとき突如として巨大隕石が降ってきた。
爆風で辺りに砂埃が立ち込める。
「みゃー?!かばんちゃん!大丈夫?」
「うん、こんなこともあろうかとかばんに防爆シートを入れておいたんだ。」
「よかったー!さすがかばんちゃん!でもこれじゃあ狩りごっこは中止だねー…」
「中止?やった!」
「なんでうれしそうなのかばんちゃん!」
「それよりサーバルちゃん。見て。爆発したところに大きな穴が。」
「大きいねー!中に入ってみよう!」
「うん。気をつけて行こうね。」
慎重にクレーターを降りていくかばんとサーバル。
クレーターの中心には丸い鉄の塊があった。
「何なんだろう?これ。」
かばんは不思議そうに塊に触れた。
「熱っっ!!」
「大丈夫かばんちゃん?!」
「うん、びっくりしたけど平気。でもこんなに熱いなんて…そうだ!」
かばんはかばんをまさぐると、鍋を取り出した。
「サーバルちゃん!これがあれば火が無くても料理ができるんじゃないかな?ちょっと一緒にやってみない?」
「うみやあ!やってみたーい!」
かばんは次々に調理用具と食材を取り出してゆく。
「かばんちゃん!今日は何をつくるの?」
「ボルシチ」
「ボルシチだね!わかったよー!あれ?」
「どうしたのサーバルちゃん?」
「かばんちゃん!油がないよ!」
「そうだ切らしてたんだった。」
「でも近くから油のにおいがするよねー!あ!あそこから油が出てるみたい!」
鉄の塊の一部から油が漏れだしているようだった。
「なにこれなにこれ!湧き水ならぬ湧き油?すっごーい!ちょっと変な臭いするけど。」
「すごいね。それを使おうか。取ってきてサーバルちゃん。ちょっと変な臭いするけど。」
サーバルは漏れ出る油を容器に汲むと、そのまま鍋の中に入れた。
「まずは肉を炒めて、次にニンジンを入れるよ。」
「え!ニンジン?やだー。私ニンジンきらーい!」
「ダメだよ好き嫌いは。」
「やだやだー!」
「何だあテメエもう一度言ってみろよ!」
凍りつく二人。
「え…かばんちゃんなんか言った?」
「い、言ってないよ…」
「じゃあ今のは誰が」
「ここだ!ここにいる俺様だ!」
声のする方を見ると、鉄の塊の中から奇妙なオレンジ色の生物が出てきた。
「うわあ!すっごーい!小さーい!」
「あなたは…フレンズさん…ですか?」
「フレンズ!?バカいっちゃなんねえ!俺様は人参星からやってきた人参星人様だ!」
人参星人はサーバルを指差して言う。
「そこのお前!人参が嫌いとか抜かしてただろ!」
「うみゃあ…確かにそうだけど、」
「そいつは聴き捨てならねえ!喰らえ!カロテンビーム!」
「わぁ!」
サーバルはカロテンビームを喰らい、血液中のベータカロテン濃度が3倍になった。
「うみゃあ…なんかちょっと健康になった気がする!」
「そうかな…」
「お前も喰らえ!カロテンビーム!」
「ふわあ!」
かばんもカロテンビームを喰らい、血液中のベータカロテン濃度が3倍になった。
「あ…なんか若干元気になった気がします…」
「そうだろうそうだろう。お前たちも人参の良さが分かったろう。」
「ははは…すごいですね人参星人さん。」
「そうだ!俺様は人参の素晴らしさを全宇宙に知らしめるために、この宇宙船にのって旅をしているんだからな!」
「これ、うちゅーせんって言うんだ!すっごーい!」
「おいこら触るな」
ドカーン!
サーバルが宇宙船に触れた瞬間、静電気が発生し宇宙船は爆発した。
砂埃が巻き上がり周りは何も見えなくなる。
「かばんちゃん!大丈夫!?」
「うん、こんなこともあろうかとかばんに防爆シートを入れてあるんだ。」
「さすがかばんちゃん!すっごーい!!」
「あれ、人参星人さんは?」
人参星人はいなかった。少し焦げた人参の破片があたりに散らばっているだけだ。
「そんな…人参星人さん…」
「うみゃあ、惜しい人参をなくしてしまったねー。」
「サーバルちゃん。この人参、食べる?」
かばんは少し焦げた人参の破片を拾い上げて言った。
「えー。いらないよー!」
「そうだよね。なんかばっちいもんね。」
拾った人参をポイ捨てするかばん。
「はは」
「あはははははは」
「ははは、ははははは」
笑い合う二人。
~~~~~~~~~
しばらくして、二人はクレーターから出ようとした。しかしクレーターはアリジゴクのようなすり鉢状の形になっていたため簡単には抜け出せなかった。
「うみゃあ…困ったなあ…」
「助けを呼ぼう。ラッキーさーん!」
三十秒後、ラッキービーストがやってきた。
「ここからぼくたちを出してくれませんか?」
「マカセテ」
ラッキービーストがアリジゴクに飛び込む。
滑り落ちながらサーバルたちの所へ来た。
「ココデハイパワージャパリバスヲヨブヨ。ドンナキュウサカデモノボレルカラアンシンシテネ」
「ボスすっごーい!」
「アワワワワワ…」
間を置かずにラッキービーストがフリーズした。
「ラッキーさん?」
「ケンガイ。ケンガイダヨ。デンパガトドカナイヨ。」
「えー!」
「そんなー!」
フリーズしたラッキービーストを放っといてかばんとサーバルは二人で話をはじめた。
「そういえばサーバルちゃん。一期の3話で崖を登っていたよね?それと同じ要領で行けないかな?」
「うみゃあ!やってみるね!うみゃみゃみゃみゃみゃみゃみゃ…」
サーバルは普通にアリジゴクを登りきった。
サーバルは上から声をかける。
「かばんちゃんも一期の12話で木を登っていたよね!それと同じ要領でやれば行けるよ!」
「やってみるよ。うみゃみゃみゃみゃみゃみゃみゃ…」
かばんも普通にアリジゴクを登り切った。
残るはラッキービーストだけだ。
かばんとサーバルは上からラッキービーストに声をかける。
「ラッキーさんは該当シーンがありませんからこれから作ってくださーい!」
「大丈夫!ボスならできるよ!」
そう言い残し二人は去っていった。
「アワワワワワ…」
取り残されてしまったラッキービーストから悲しい電子音が木霊する。
それから三ヶ月間、ラッキービーストはクレーターから出られないでいた。
「サーバル、カバン、サンニンデノタビ、タノシカッタナ…」
「おーいボス!そこで何をしているのだ!?」
諦めかけていたそのとき、なんとアライグマが現れた。
「なにか困っているのだな!アライさんにおまかせなのだ!」
アライグマはクレーターの中に入っていった。
「よいしょっと。お待たせなのだ。」
「……」
「よくわからないが、ここから出してあげるのだ。」
「……」
ラッキービーストは頷いた。
そして例によってアライグマもクレーターから抜け出せなくなってしまった。
「うぅどうすればいいのだぁ…アライさんも一期の5話に該当シーンがあるはずなのに…もうお腹が空いて力が出ないのだあ…」
ラッキービーストがぴょこぴょこと跳ねた。
「どうしたのだ?ボス?え?こっちに来いって?」
ボスについていくと、なにか草が生えているところに案内された。
「これは…野菜か?」
アライグマが目の前の草を掘り返す。
「これは…ニンジンなのだ!しかもただのニンジンではないのだ高麗人参なのだ!」
ラッキービーストが食べるように促す。
「ポリポリ…これは!メチャウマなのだ!うおお力が漲る気がするのだ!」
アライグマの血中ベータカロテン濃度が3倍になった。
そのおかげでアライグマはラッキービーストを連れてクレーターから脱出することに成功した。
「やったのだ!やっぱり好き嫌いなく食べることは、課題解決に繋がるのだ!」
「ヨイコノミンナモアライグマヲミナラッテ、スキキライナクナンデモタベヨウネ。」
終わり
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