第2話 放浪者は対象者
「さっきのは一体何だったんだ?」
電柱の横で薄暗く光っている照明器具は灯りがついたり消えたりしている。時間帯が遅いせいか都会と言うのに人がいない。ロキは薄汚れたベンチに座りながら路地裏で起こった出来事を思い出す。
(斧を持っていた人間離れした雰囲気を持つ謎の生き物。もしかしてさっきまでの事、いや
今僕が見ていて感じているものは夢?)
「夢なんかじゃないさ。全部現実だよ」
突然声がしたのでロキは考え事を中断し声のする方を見る。夢ではない?現実?何故僕の考えている事が分かったの?
ロキは頭上にハテナを浮かべた。
「全部声に出ていたよ」
あぁ。余程焦っていたのだろう。心の声がダダ漏れだったらしい。
「貴方は...」
「私?私はエドガー=フェノール」
「僕はロキ=アベル、エドガーさん!さっき路地裏で」
ロキは立ち上がりさっきの事をエドガーに話そうとした。信じ難いことが起こったのだ。誰だって不安や恐怖に陥った時は誰かに話そうと思うのが一般的な考えだろう。
「知ってるよ。だって全部見てたから。あれは擬人者と言う人に化けた魔物さ」
「擬人者?」
確認するように問う。
「あぁ。詳しい事を知りたいだろう?着いておいで」
エドガーはロキに背を向け公園の出口に行った。本当に着いて行っていいのか。さっきの奴らみたいに鎌をもって襲ったりしてこないか。エドガーの背を見つめ考えた。
「はい!」
この人は信用出来る。結論を出した。
置いてかれまいと走ってエドガーを追いかける。ロキは野生の勘でこの人は信用で出来る、そう思ったのだろう。
エドガーに連れられたロキは古ぼけて今は廃墟と成りかけている工場へと足を踏み入れた。敷地内に進んでいくと扉らしき物を見つけた。扉というか、隠し扉的な物だ。扉が開くと地下へと繋がる階段が続いていた。
「さ、こっちだよ」
エドガーは歩き出す。ロキも置いてかれまいとその後を続く。
「エドガーさん、此処に何か有るんですか?」
「あぁ。そう慌てなくても直ぐ分かるさ。後、エドガーでいい、敬語も外してくれ。私は堅苦しいの嫌いなんでね」
「分かった。」
階段を降りると、金属で出来た扉があった。
エドガーがドアノブを回し扉を開けると金属の扉特有のキィーと言う耳に響く音がした。
部屋入ると一番最初に目がいくのはテーブルだった。そこにソファーが向かい合うように二つ置いて合った。
「さ、此処が私達の拠点だ。」
「拠点?」
「まぁまぁ一先ず此処に座り給え」
エドガーはソファーに座ると向かい側のソファーに指を指した。
座れ、という事なのだろう。
ロキはエドガーが指を指したソファーに座る。
「まず、君は何処から来たんだい?」
唐突にエドガーは質問をした。
「トルカ島っていう自然豊かな島だよ。」
「へぇ。だからか。」
「何が?」
「君がさっき擬人者に襲われた時、反射神経がとてもいいと思ったよ。自然豊かな環境と言うのはあらゆる危険が有るだろう?そういう環境で育ったからこその反射神経なんだなって思って。」
「うん、島には肉食系の動物も結構いたよ。図鑑には載ってないような見た事のない種類もいた。多分よく分からない魔物なのかもしれない。さっきエドガーは擬人者は人に化けた魔物って言ってたよね?擬人者って言うのは一体何?」
さっきからずっと思っていたことだった。擬人者とは一体何でエドガーは何者?それにさっき言っていた拠点とは...ロキの頭の中には沢山の疑問が生まれた。
レイタント 泉橋あんず @wananan_0319
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。レイタントの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます