レイタント

泉橋あんず

第1話 放浪者は対象者

ドード大陸の有名都市、ジャウサシティーに着くまで後1時間。


船の後方にあるハンモックで揺らぎ、満月は十分だ。と思う程にキラキラと輝いている満天の星を眺めている少年ロキ。

彼が小さい頃、父親が亡くなってからシングルマザーとして女手一つで育てて来た母と暮らしているが彼は母と喧嘩をして現在進行形で家出をしている。

「勢いで来ちゃったけど、僕、これからどうすれば良いんだよ」

ロキは星空に向かって呟き目を瞑る。


目を瞑っているうちにいつの間にか寝てしまったのか、気づいたら船長に起こされ寝ぼけたまま船を降りようとしてたらしい。

「わぁ島から出た事全然ないからめっちゃ新鮮だ...」

船を降り辺りを見ると、賑やかで人がわんさかと溢れかえっていることに対して思わず感激の一言が出る。

此処は船乗り場なのでいちなどの、小さなテントの下で売買が行われている。テントの先には巨大なビルが建ち並んでる。

そして、兎に角、人。人の数が多い。

船乗り場から少し離れた所へと足を運ぶ。慣れない都会なので彼は好奇心が湧いたのだろう。だが、そんな好奇心が後に恐怖心へと変わっていくことは当の本人は知る由もない。


どれくらい歩いたのだろうか。気付くと船乗り場からかなり離れた場所をさ迷っていた。それも路地裏だ。辺りには誰かが食べ残して捨てたと思われる何の食べ物だったかさえも分からない食べ物が倒れているゴミ箱の近くに落ちていた。ゴミ箱周辺には虫が湧いている。恐らくこの辺りは人の通りが全くと言っていい程少ないのだろう。ロキは直ぐに悟った。

「ぅあ」

「...!?誰!?」

さっきまで誰も居なかった筈の路地裏から微かに声が聞こえた。振り返ると人影が見えた。この辺は電灯がないので顔まではよく見えない。

「ぅう」

また人影の方から声が聞こえた。今度は声と共に此方に向かってくる足音が聞こえる。

冷や汗をかきながらも音のする方を見つめる。やがて、足音が止まったという時にタイミングが良く今まで雲に隠れていた満月が暗いジメジメとした路地裏を照らす。

「っ!?眼が...紅い!!」

路地裏が明るくなったと同時に人影の正体が露わになったのだ。ロキのすぐ目の前には眼が燃えるような鮮明な血の色をした紅い眼を持つ人間。いや、怪物擬人者がいた。

「主様に」

擬人者が言った言葉を最後まで聞き取る暇もなく攻撃を避けなければならない状況に陥った。擬人者が隠し持っていたと思われる木を切るような鎌をロキに振りかざしたのだ。間一髪持ち前の運動神経で避けたが、次はどうなるかは分からない。擬人者は勢い余ったのが鎌の先がコンクリートに刺さった。

「チャ、チャンスだ!兎に角此処から逃げないと...」

突然の事で動揺がある中おぼつかない足取りで路地裏から去り夜道を走り抜ける。


「やれやれ」

路地裏から飛び出して公園の中に駆け込んでいくロキを建物の上から眺めてる男。エドガーは建物の壁と壁の間を頼りに軽々しくキックしながら降りていく。

「さてと。居るんだろ?擬人者。出てきなよ」

さっきロキが飛び出した路地裏に足を運びながら問い掛ける。

「レイタントの連中か」

斧を持った擬人者が返答する。

「わざわざ殺されにき」

まだ喋り途中の擬人者にエドガーは躊躇無くすかさずポケットに入れていた隠しナイフで首を掻き切る。

鮮明な血が飛沫を上げて首を描き切られた擬人者は倒れる。

「C級か...」

残念そうに血で汚れたナイフを持参して来たハンカチで拭きながら呟く。

「さてと。もう1つやる事をしなくちゃね」

エドガーはロキが入ってった公園へと向かう。














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