第44話 探しても…探しても

『黒いの…どこ?』

 小さな猫が家の中をウロウロ…ウロウロ…

『ねぇ、黒いのどこにいったの?』

 家族の足元で小さな猫が鳴いている。

 クンクン…クンクン…

 鼻を鳴らして探してみるけど、黒い猫の匂いがしない。

 大きな黒猫、大人しくて人見知り、臆病でワガママで…焼き鮭が大好き。

 黒猫が2歳の頃、小さなキジトラがやってきた。

 黒猫と違って、やんちゃで黒猫を時々怒らせていた。

 たまに一緒に寝てるけど、家の中では別々で、それでも互いがいないと探して回る。

 変な関係。


「クロさんは、いないんですよ…チョビさん」

 僕の足元で眠る猫に静かに言い聞かせても、きっと伝わらないのだろう…。


 明日になって…明後日になって…1週間が過ぎて…1か月になって…


 クロさんの匂いは少しずつ…少しずつ…薄れて消えて…

「いつか忘れてしまうのだろうか、チョビさんは…」


『黒いの今日はいないんだね…明日は?』

 眠る猫、明日になれば、また黒猫の匂いを探すのだろう。

 いつか忘れてしまうまで…匂いが消えてしまう日まで…。


 探しても…探しても…どこにもいないのに。

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猫物語 桜雪 @sakurayuki

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