第43話 向こう側

「ごめんね…ごめんね…」

 ガラスの向こうで子猫を抱いた母親に手を振る女の子。

「なんで…あの子だけ…」

 母親が涙を零す。

 世界的に流行したウィルス、我が子が感染してしまうとは…

 隔離病棟に送られた我が子との面会はガラス越し、それが余計に悲しくさせる。

 可愛がっていた猫を抱いて、我が子に見せる母親。

「にゃん」

 と可愛げに鳴く子猫の声も、我が子には届かない。

 子猫はガラス越しの娘に触れようと必死にガラスを引っ掻いている。

「だめなのよ…ごめんね…早く治るといいね」

 母親が猫をなだめる。

 ガラス越しに小さな手のひらを押し付けるように幼い少女の口が動いている。

「………」

 なんて言っているのか…聴こえないけど…

 解るよ…解るよ…

「ごめんね、すぐ、よくなるからね…ごめんね」

 ガラス越しに小さな前足と手のひらを重ねて…


 やっと…触れたね…

 どうして、冷たいの…どうして話してくれないの…どうして…

 箱の中の幼子は冷たく、大きな写真は笑顔で…


 帰ってきたのに…寂しいままだよ…。

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