4.勇気ある一歩
『フシュルルルルッ!! 見つけたぞ、クソ猫!』
大きなタヌキのようなバケモノが、
――
『神社の中に逃げ込もうとしたらしいが……あと一歩、足りなかったようだな。ざまぁない!』
しかし、おかしなことに、その目は黒白猫にだけ向いていて、ひばりちゃんたちのことをチラリとも見ようとはしない。
というよりも――。
(このバケモノ……わたしたちがみえていない?)
先ほどの突風のせいで、ひばりちゃんと孔雀くんは鳥居の
だから、「このバケモノには、鳥居の内側にいる自分たちのことが見えていないのではないか」と、ひばりちゃんは思ったのだ。
その
「どうしたのひばり? とりいのそとに、なにか、いるのかい?」
ひばりちゃんを心配する孔雀くんの声にも、バケモノは
どうやら、バケモノには鳥居より内側の人間の姿も見えていなければ、声も聞こえていないらしい。
おそらく境内にいる限り、ひばりちゃんと孔雀くんは
『よくも今まで
バケモノが笑いながら「ガァッ!!」という
ひばりちゃんの体にビリビリと
「ねぇ、どうしたんだいひばり!?」
「……とりいのそとに、おおきなバケモノがいるの……。とりいとおなじくらい、おおきい……」
「な、なんだって!?」
この神社の鳥居の高さは、
「ど、どんなすがたのバケモノなんだい?」
「タヌキににてるけど、ちがう。もっとほそながくて……からだはちゃいろっぽくて、かおにしろいせんがある」
「しろいせん? たて? よこ?」
「たて。かおのまんなかに……」
ひばりちゃんの言う通り、バケモノはタヌキにも似ていたが、明らかに違った。
全身は細長く明るい茶色、顔の中心に白い線が
「……それは、ハクビシンじゃないかな?」
「あ、そう、それ!」
――ハクビシンというのは、タヌキと猫を合わせたような姿の、四本足の
畑の
鎌倉でも、
けれども、ハクビシンは
「どうしよう、くじゃく。ネコちゃん……たべられちゃう!」
「な、なんだって!? ど、どうすれば……」
二人が手をこまねいている間にも、バケモノの大きな口が黒白猫に迫ろうとしていた。
黒白猫も必死に体を動かそうとするが、足はプルプルと
「……そうだ! ひばり、ちょっとまってて!」
「えっ?」
すると、孔雀くんが何やら思いついたのか、神社の
ひばりちゃんが呼び止める
(――にげた? ううん、でもいま「まってて」って……)
孔雀くんの考えていることが分からず、
そうこうしている間にも、
(どうしよう。ひいおばあちゃん、どうしよう!?)
何か自分にできることはないかと、ひいおばあちゃんから教わった色々な話を必死に思い出そうとするひばりちゃん。
――と。
『もしお化けに
ひばりちゃんの頭の中に、ひいおばあちゃんのそんな言葉が
お化けや妖怪を
(そうだ。いま、わたしががんばらないと、ネコちゃんはたべられちゃう! わたしが……わたしがたたかわなきゃ!)
手も足も恐怖に震えている。正直、立っていられるのが不思議なくらいだ。
それでもひばりちゃんは、なけなしの
『……アアン? なんだ、お前は?』
バケモノの
やはり、鳥居の外へ出てしまうと、姿が見えるようになってしまうらしい。
『バ、バカ! 鳥居の中へ逃げろ!』
黒白猫が、ひばりちゃんに引き返せと叫ぶ。
けれども、ひばりちゃんは更に一歩進んで――こう言った。
「やい、バケモノ! ネコちゃんはアンタなんかにたべさせないわ! わたしは……ぜったいにまけない!」
少しだけ
その声に押し返されるかのように、バケモノが一歩だけ後ろへ
『ヌァッ!? な、なんだこの
「なに……? このバケモノ、なにをいっているの?」
――ひばりちゃんは知らないことだが、このバケモノは今までにも度々に
けれども数十年前、ひばりちゃんのひいおばあちゃんの、更におばあちゃんに
『クックック! そうかそうか! そこのクソ猫が、我が
よかろう、
バケモノが再び、一歩前へと歩み出る。どうやらもう、ひばりちゃんの「圧」は
ひばりちゃんは慌てて黒白猫を抱きかかえ、鳥居の中へと逃げ戻ろうとするが――。
『
バケモノの大きな口は、既にひばりちゃんたちの体を
子供の足では、巨大で
(――あっ、ウソ……? これで……これでおわり、なの?)
バケモノの生臭い
だが――。
「ひばりぃぃぃ!!」
そこへ、ひばりちゃんの名を呼びながら、孔雀くんが駆けて来た。
その手には、本殿から持ち出したらしい何本もの「
「ええいぃ!!」
孔雀くんが破魔矢の
――とは言っても、幼稚園児の力だ。破魔矢はとてもゆっくりと宙を飛び、バケモノの
けれども。
――パァァァン!!
バケモノに破魔矢が命中した
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