3.心ちゃん、決意する
『三階のトイレに、花子さんが出るらしい』
そのうわさは、またたく間に学校中へと広がっていった。
ほとんどは「また聞き」のいい加減な話が多かったのだが、中には「自分も三階のトイレに入っていく、おかっぱ頭に赤い吊りスカートの女の子を見た」と言い出す子もいて、学校は少しだけパニック
中には「花子さんを
最初は「よくある
けれども、「トイレの花子さん」への対策と言っても、できることはたかが知れていた。
せいぜい「ただのうわさ話」「お化けなんていない」「きっと誰かのイタズラ」と、朝の会で先生が児童たちに話すくらいだ。怖がっている子たちには、そんな気休めの言葉では
そうこうしている間に、
(――きっと、あたしのせいだ)
「トイレの花子さん」を巡る一連の騒ぎに、心ちゃんは人知れず、心を痛めていた。
花子さんのうわさ話がされるようになったのは、心ちゃんが「アレ」を見た後からだ。心ちゃんは、「きっと自分が花子さんに気付かれてしまったから、学校全体に悪いことが起こっているのだ」と考えたのだ。
(あたしがなんとかしなくちゃ……)
心ちゃんは、ほんわかのんびりした女の子だが、
けれども、心ちゃん本人はそう固く信じてしまって、自分がなんとかしなければ、と思ってしまったのだ。
とは言え、心ちゃんにお化けを
(……とりあえず、お守りでも買っておいた方がいいかなぁ?)
そう思い立った心ちゃんは、学校から帰ると、なけなしのお
なんだか
心ちゃんが住む鎌倉は、大昔に「
近所にあるのも昔からある神社らしいので、ご
大きな石の
心ちゃんは、神社にお参りしてからお守りを買うことにした。
――お参りには、神社ごとに決められた、いくつかの
まず、
そこのお水を
次に、柄杓をまた右手に持ち替えて、お水を左の手の平に注ぐ。手の平に水が溜まったら、その水を口に入れて、軽くゆすいでから吐き出す。
そして、左手にもう一度水をかけて、柄杓を立てて残った水が
最後に、柄杓を元の場所に戻して、ようやくお参りの準備が終わる。
そのまま本殿の前においてある
そして
もっとも、心ちゃんもこの神社のお作法しか知らないので、他の神社も同じで良いのかまでは分からないのだが。
(さて、お守りは……)
お参りを済ませた心ちゃんは、目的のお守りを買うために「社務所」を探した。
辺りを見回すと、本殿から少し
「ごめんくださ~い!」
「社務所」らしき建物に近付いてから、心ちゃんは受付らしい
そのまましばらく待っていると――。
「――あら。お客さまなんて、珍しいわね」
突然、建物の方からではなく心ちゃんの背中の方から声が聞こえてきた。
心ちゃんがびっくりして振り向くと、そこには巫女さんの服を着た、とてもきれいな女の子が立っていた。
「……あっ。五年生の……
「あら、私のことを知っているのね? と言うことは、あなたも鎌倉西小の子かしら?」
それが、心ちゃんとひばりちゃんとの出会いだった。
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