憧れのお姉ちゃんが私の子供を妊娠したと言ってきました
私の名前は
突然ですが、私には大学生のお姉ちゃんがいます。背が高くて、お胸も大きくて、長い黒髪が綺麗で、頭もよくて、優しくて、友達さんも多い、私の憧れのお姉ちゃんです。周りの人からはお姉ちゃん凄いってよく言われます。妹の私も鼻が高いです。えっへん。
そんな素敵なお姉ちゃんですが、つい先日、ものすごい変態さんだということが発覚しました。こんなところで言うのが
でも、お姉ちゃんの変態行為を咎めて以来、お姉ちゃんは元の「素敵なお姉ちゃん」に戻りました。一件落着です。
しかし、安心したのも束の間。私とお姉ちゃんの間にはとんでもないことが起きていたのです……!
◇
「お姉ちゃんね……赤ちゃんができたみたいなの」
「ほぇ?」
お姉ちゃんから爆弾が放り込まれたのは、パンツ事件から僅か二週間後のことでした。宿題をこなすために自室に籠っていた私を訪ねたお姉ちゃんは、深刻な顔をして言いました。
慌てた私はペンを放り投げてお姉ちゃんに向き直ります。
「そ、それって誰の子どもなんですか?」
「……琴音ちゃんは、どうやったら赤ちゃんができるのか、知ってる?」
「それは────」
かつてお姉ちゃんから教えてもらったことがあります。ええと、確か……。
「好きな人同士で手を繋ぐと子どもができるんでしたよね」
「よく覚えていたね琴音ちゃん。その通り、愛し合う者同士で手を繋ぐと子供ができるの。それでね、最近私と琴音ちゃんって一緒のベッドで寝てるじゃない?」
「そうですね……もしかして!」
「そう、このお腹の赤ちゃんはね────私と琴音ちゃんの子どもなの」
なんと……。どうやら私はママになってしまったようです。
ですが、まったく実感が沸いてきません。確かにお姉ちゃんのことは大好きですが、こんなに簡単に子どもができてしまうとは思ってもいませんでした。わ、私はどうすればいいのでしょうか!
「お、お姉ちゃん。私にできることはありますか!」
「琴音ちゃんには私を孕ませた責任を取ってもらう必要があります」
「せ、責任……」
「こちらの紙にサインをお願いします」
婚姻届。私の前に差し出されたそれは『妻になる人』以外の欄がすべて埋められていました。証人のところにはお姉ちゃんのお友達さんの名前が書いてあります!
私は筆箱からボールペンを取り出して「日比谷琴音」と拙い文字で空欄を埋めました。達筆でとても字が綺麗なお姉ちゃんの横に並ぶと少し恥ずかしいです。
「これで私と琴音ちゃんは晴れて夫婦になりました」
「え、え、私、結婚しちゃったのですか!?」
どうやら婚姻届とは「名前を書くと結婚してしまうもの」らしいのです。そんなこととは露知らず、何も考えずに名前を書いてしまいました!
「クーリングオフを要請します!」
「だーめ。これで琴音ちゃんは私のものだもーん」
お姉ちゃんは私を抱き寄せてほっぺをすりすりしてきます。お姉ちゃんの大きなおっぱいが私の身体にふよふよと当たっていて……はっ!
「そういえばお姉ちゃん、赤ちゃんはどうなのですか!? お名前とか、いつ生まれるのかとか色々考えるべきことがあると思います!」
「げっ、何も考えてなかった…………え、えーといつ生まれるのかはちょっとわかんないといいますか……あ、で、でも、私も琴音ちゃんもXX染色体保有だから生まれてくる子どもは必ず女の子になるの。だから女の子ベースで名前を考えるといいかも……ね?」
もう子どもの性別まで分かっているのですね!
どんな名前にしましょう。私とお姉ちゃんの名前から一文字ずつ取るのもいいかもしれないですが、ちゃんと意味とか画数も考えなければですね……あ、お母さんに聞いてみるのもいいかもしれません。
私は勢いよく部屋を飛び出すと、リビングにいるであろうお母さんに向かって叫びます。
「お母さん! 私とお姉ちゃんの間にこどむぐっ……!」
「あーお母さんごめんね! なんでもないよ! ほーら、琴音ちゃんはもう少しお姉ちゃんとお喋りしようね~」
勢いよく飛び出した私はあっという間にお姉ちゃんに羽交い絞めにされ、そのまま部屋に連行されてしまいました。
「琴音ちゃん、このことはお母さんとお父さんには秘密ね」
「どうしてですか?」
「ほら、サプライズってやつ。両親にとっては初孫になるわけだから、生まれてから報告した方が喜びも
「でも赤ちゃんのための準備とかもありますし、やっぱり知らせておいた方がよくないですか?」
「な、なんて正論……大丈夫、そういうことは全部お姉ちゃんが準備するから。あと、今回のことは絶対に他言無用でお願いね」
「わ、わかりました」
すごい剣幕でお姉ちゃんに迫られて、私は頷くしかありませんでした。
◇
「ほら、お腹撫でてごらん?」
「は、はい。えっと、赤ちゃん聞こえますか~。琴音ママですよ~」
「はぁッ、はァッ、琴音ちゃんにお腹撫でられてる……っ!」
「どうしたんですかお姉ちゃん。息が荒いですよ?」
「続けて……琴音ちゃん……ッ!」
「え、えぇ……よしよし、はやく大きくなってくださいね~」
「バブみがすごいよ琴音ちゃん……!」
お姉ちゃんの妊娠宣言から一週間。晴れてママとなった私はお姉ちゃんのお腹を撫でたり、赤ちゃんに話しかけたりといった日々を過ごしていました。お姉ちゃんの腰回りはくびれが凄くてお腹も引き締まっていて、とっても綺麗です。
そして、赤ちゃんに声をかけるたびにお姉ちゃんは息が荒くなります。もしかして赤ちゃんがお腹の中で動いているのかもしれません! 元気な赤ちゃんで何よりという気持ちと、お姉ちゃんの体をいたわる気持ちが半々で、何もできない私は無力感に苛まれてしまいます。私もそろそろ赤ちゃんについての勉強をした方がいいのかもしれません。
ということで週末、私は近所の本屋さんを訪れていました。
「あ、いらっしゃい琴音ちゃん」
「本屋のお姉さんこんにちは」
小さいころからお世話になっている本屋の店主であるお姉さんに挨拶を済ませると、私は育児コーナーに歩みを進めます。ふむふむ、種類が多くて迷ってしまいますね。ここは手持ちのお小遣いと相談しながら初心者向けの本を選ぶべきでしょうか。
適当に二冊ほど見繕って会計に向かいます。
レジを終えると、本屋のお姉さんは柔らかい笑顔で話しかけてきました。
「もしかして、とうとう琴音ちゃんもお姉さんになるのかな?」
「どうしてですか?」
「だって、育児の本を買うってことは、弟くんか妹ちゃんができたってことじゃないの?」
「違いますよ。私がママになったんです」
「……えっ」
「あっ、これ言ったらダメなんでした。秘密にしておいてくださいね」
「え゛っ」
固まってしまったお姉さんにぺこりとお辞儀をして、私は本屋をあとにしました。
「え……事案? 事案なの? それとも冗談? ど、どうしましょう……琴音ちゃんのご家族に相談するべきかしら……?」
◇
さて、本屋に行ってから一週間後。私は赤ちゃんに関する知識を着々と蓄えていました。おしめの変え方、ミルクの作り方からあやし方まで完璧です。一方のお姉ちゃんはというと────
「ねえねえ琴音ちゃん、今日もお腹撫でて?」
「いいですよ。赤ちゃんのためですから……よしよし、早く大きくなってくださいね~」
「ばぶぅ~」
「お姉ちゃんが赤ちゃんになってしまいました!」
最近、お姉ちゃんの様子がおかしいです。やたらと甘えてくるというか、幼児退行しています。おなかの赤ちゃんに意識が引っ張られているのでしょうか。憧れの綺麗なお姉ちゃんが赤ちゃんになったのかと思うと、何故かお腹のあたりがキュンっとしてしまいますが、私としてはお姉ちゃんの身が心配です。
「お姉ちゃん大丈夫ですか?」
「だいじょうぶじゃない。おっぱいほちい」
「えぇ……粉ミルクでも作りましょうか」
「やだやだ、ことねママのおっぱいほちい~!」
「困りましたね、私はおっぱい出ないのですが……あ、もしかしたらお姉ちゃんママならおっぱいが出るかもしれませんよ」
「……揉んでくれるの?」
「あ、お姉ちゃんおかえりなさい」
「ば、ばぶ~、おっぱいもんでほちい~」
一瞬戻ってきたお姉ちゃんの意識がまた赤ちゃんに乗っ取られてしまいました。
「おっぱいで服が汚れないように、脱いだ方がいいかもしれませんね」
「ばぶ~、脱ぐ~!」
お姉ちゃんは目を輝かせたかと思うと、勢いよく服を脱ぎ始めました。
って、な、なんで下まで脱いでるんですか!
「ことねママ、ひざまくらして?」
「え、ええ、構いませんが……」
ふにゅん。
全裸のお姉ちゃんを膝枕しながらおっぱいを揉む中学生の私……どういう状況なんでしょうか、これ。
おっぱい出ないなーと思いながら揉んでいると、お姉ちゃんはビクンッ、と跳ねた後に糸が切れたように眠ってしまいました。
怖くなった私はお姉ちゃんに服を着せると、ベッドに寝かしつけます。
「お姉ちゃん、どうしてしまったんでしょう……本で調べた方がいいのかもしれません」
◇
そして週末。私は再び本屋さんを訪れていました。今度は「赤ちゃんのお母さん」に関する本を求めて。
私が本屋さんの扉をくぐると、本屋のお姉さんが血相を変えて飛んできました。
「こ、琴音ちゃん大丈夫!?」
「わわっ、どうかしたのですか?」
「もう、心配したんだからね~!」
お姉さんは私を抱きしめると、ものすごい勢いで頭を撫でてきます。
何が何やら分かりませんが、ふと、思いついたことがありました。
「お姉さんに聞きたいことがあるのですが」
「なになに、お姉さんに分かることならなんでも答えてあげるよ。法律のお勉強もいっぱいしたんだから!」
「妊娠したら幼児退行するってことがありますか?」
「幼児退行……?」
私はお姉さんに相談を持ち掛けました。以前、私が口を滑らせてしまったこともあり、ある程度の事情なら喋ってもいいのかなという思いつきです。
「琴音ちゃん、幼児退行してるの?」
「私じゃないです。お姉ちゃんのことなのです」
「お姉ちゃんも妊娠してるの……!?」
「はい。妊娠してから赤ちゃんみたいに甘えるようになってきたんです。何か心当たりとかありませんか?」
「そ、それって要は妊娠のショックから幼児退行を引き起こしているということよね……いったい町一番の美少女姉妹に何があったというの…………警察に通報するべきだわ!」
「け、警察さんに通報するのですか!?」
「ええ、もう黙っていられないわ。ねえ琴音ちゃん、辛いかもしれないけど聞かせて。琴音ちゃんとお姉ちゃんに何があったの……?」
「えっと……私とお姉ちゃんの間に赤ちゃんができたことが始まりで────」
「……はい?」
本屋のお姉さんがお姉ちゃんの部屋に入ってから三十分ほどが経ったでしょうか。ガチャリ、と扉を開けて本屋のお姉さんが出てきました。
「あ、あの、お姉ちゃんは大丈夫なのですか?」
「ええ、何も心配はいらないわ。すべては琴音ちゃんのお姉ちゃんが話してくれるだろうし」
本屋のお姉さんに頭を撫でられます。なんでしょう、無機質な笑みが怖いです。
お姉さんは菩薩のような悟り顔のまま我が家をあとにしました。
私は、お姉さんを見送ってからお姉ちゃんの部屋へと向かいます。
そして、扉の先には以前どこかで見たような光景が広がっていました。
「申し訳ありませんでした!」
お姉ちゃんの土下座です。
◇
とりあえずお姉ちゃんに頭を上げさせ、話を聞くことにしました。
「最初はほんの冗談だったんです。妊娠ドッキリからの婚姻届にサインさせようという企画でした。悪ふざけというかなんというか、友人にも協力してもらって遂行しました。でも、思った以上に琴音ちゃんが本気にするので引くに引けなくなってしまって……ええい、ままよ! と投げやりになっているうちにだんだん美味しい思いができるんじゃないかと思い始めたわけなんです」
「ふむ」
「母親の自覚が出た琴音ちゃんにバブみを感じてしまいました。バブみが頂点に達した私は琴音ちゃんと赤ちゃんプレイをしたいと思うようになり、甘えまくりました。頭を撫でられたりお腹を撫でられる度に私は絶頂してしまう変態です。変態お姉ちゃんでごめんなさい」
「ええと、よくわからないのですが、お姉ちゃんと私の間に赤ちゃんはできていないのですね?」
「はい、そういうことになります」
お姉ちゃんの正座独白をベッドの上で聞きながら、ことの
「琴音ちゃん、お姉ちゃんのことを軽蔑した……?」
「軽蔑はしていませんが……ちょっと怒ってます」
「はい、その件に関しましては本当に申し訳なく────」
「お姉ちゃんとの子どものこと、楽しみにしていたのに残念です」
「えっ」
せっかく本で勉強もして、名前まで考えていたのに。お姉ちゃんと結婚もしましたし、私が高校生になったら娘と一緒に新居で三人暮らしをしたり……とか想像したりもしていました。
しかし、それらは全部嘘だったらしいので、ちょっと怒っています。
でも────────
「琴音ちゃん?」
「す、好きな人同士で手を繋げば子どもができるんですよね。だったら、一からやり直せばいいんです」
ぷい、っと顔を背けながら私はお姉ちゃんに両手を差し出します。これでやり直しです。
今度こそはちゃんと責任をもって、お姉ちゃんと生まれてくる子供との幸せな生活を夢見て────
「こ、琴音ちゃん!」
「はい、お姉ちゃん────って、なんで全裸なんですか!?」
いつの間にか全裸のお姉ちゃんに押し倒されていました。どうしたのでしょう、お姉ちゃんの目が怖いです。
「琴音ちゃん琴音ちゃん琴音ちゃん琴音ちゃん!」
「わわ、ちょっと、なんで脱がせようとしてくるんですか!」
◇
突然ですが、私には大学生のお姉ちゃんがいます。
「お姉ちゃんどうしたのですか、そんな深刻そうな顔をして」
「ちょっと自分の将来に思うところがあってね」
背が高くて、お胸も大きくて、長い黒髪が綺麗で、頭もよくて、優しくて、友達さんも多い、私の憧れのお姉ちゃんです。周りの人からはお姉ちゃん凄いってよく言われます。妹の私も鼻が高いです。えっへん。
「血の繋がった姉妹でも結婚できるように国の法律を変えたいから政治家の道へ進むべきか……それとも、同性間での妊娠に関する研究に携わるか悩みどころなの」
「どちらも凄く大変なことなのではないですか?」
「うん、死に物狂いで勉強しなきゃ叶わない夢だとは思うけど……可愛い妹のためならできると思うな」
そんな素敵なお姉ちゃんは、びっくりするくらい変態さんで、でも、やっぱり凄いお姉ちゃんなのだと思います!
憧れのお姉ちゃんは私のパンツを被って喜ぶような変態さんなのか 虹星まいる @Klarheit_Lily
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