年を取ると『老眼』なるものがあってだな。
なぬ? 年寄りの話はつまらんだと?
まあ、聞け。
『老眼』というのは近くがよく見えんのだ。
もちろん遠くも見えんのだが。
簡単に言うとな、ピントがとても狭い範囲でしか合わなくなるのだよ。
幼馴染というのはワシらの『老眼』のようなものでな。
当たり前のようにそこにいて、当たり前のようにほかの人と違う接し方をしとる。
そりゃそうだ、家族のようなもんだからな。
一緒に風呂だって入るし、一緒にゲームだってする。
もちろんお留守番など一緒にするに決まっとる。
だが、他人はそういうことをせんだろう?
そういうところすっ飛ばして、兄弟のようにふるまえるのが幼馴染というやつだ。
ただな。
兄弟にはできなくて、幼馴染にはできることがあるのだよ。
何、わからんだと?
だから最初に言っただろうが、『老眼』のようなもんだと。
ちょっとピントをずらして見てみるんだな。
自分の気持ちに気付くはずだぞ。
さて、年寄りの出番は終わりだ。
あとは若いもん同士でゆっくりとな。
隣の家に住んでいる、小さい頃からずっと一緒だった仲のいい姉ちゃん。
そう聞くと、恋愛脳としては、実は長年想いを寄せて、なんて展開を想像してしまいます。
だけど彼には全くそんな様子は無し。だって姉ちゃんは姉ちゃんだから。
でも、ホントにそうなの? 実は気づかないだけってことないの? いつ気づくの? まだ気づかないの? 鈍いよ、自分の気持ちくらい分かりなよ!
いったい何度、そんな想いを心の中で叫んだことでしょう。絶対好きだと思うのに、あくまで姉ちゃんだとしか思っていない彼。そしてそんな鈍感は姉ちゃんも同じ。さすがは姉弟。
いや、いつまでも気づかないままじゃダメでしょ。
果たして自分の気持ちに、恋心に気づくのはいつ?
仲良し男女のお隣さん。
これは幼なじみLOVEかとおもいきや、「姉ちゃん」なんだとか。
そして、その「姉ちゃん」には好きな人がいるらしい。
しかも、なんだか失恋したらしく、凹んでいる「姉ちゃん」。
主人公はなんだかモヤモヤしながら心配するわけです。
なんだか胸がちくちくするわけですよ。おかしいなぁ……病気か。
ここで、読者は思う。
「えっ、気づいてないの!」
すっかり、片想いしてるんだと思ったんですよ。
ヤキモチやいてると思ったんですよ。
牛乳吹きだしてショック受けると思ったんですよ。
でも、そうじゃない。
どこまでも「姉ちゃん」だそうで。
そんな鈍感主人公が、ついに……!
読みやすいテンポのいい短編。
仲良しな二人のやりとりも魅力いっぱいです。