告白宣言
学校に着くと奏多は鞄からバインダーとレポート用紙、ボールペンを取り出し校門の前に立った。
「轟、一応形的には没収だ。今日は何を持ってきたんだ?」
「CD、休み中に陸上部の友達に借りてたんだ、今日には返さないとって。」
奏多はやれやれとCDを受け取り名前と没収品のリストを書いた。
その姿はエリート検問官のようだった。
「2時間目終わったら取りに来てくれ今回も特例だから内緒だぞ。」
言っていることは風紀委員としては失格だが、一種の優しさだと思えば正当化できる
そうして私達と兄は別れ、兄は他の生徒の所持品を確認し始めた。
奏は隣を見る、先程のやりとりで轟はかなり嬉しそうだった。
羨ましい・・・ そう思ってしまう。
そんなジェラシーを感じながら私は轟さんと別れ、自分の教室に向かった。
教室に入ると奏はとぼとぼと自分の窓側の席に座り、窓から見える校門前の奏多を見ていた。
てきぱきと仕事をこなし生徒の違反物を没収している。
すると、前の席から自分を呼ぶ声が聞こえた。
「おはよう、奏ちゃん。」
この大人しく暗そうな子は白良技(しららぎ)蛍(ほたる)、奏の小学校時代からの親友だ。大人しめな性格で人もいい。
「お兄さん、今日も頑張ってるね。」
蛍も校庭を見るやはり兄はせっせと働いている。
「まぁね、風紀委員だしね。」
「・・・カッコいいな」
「ん?なんか言った?」
ハッと我に返った蛍は首をブルブル振りながら奏の前の自分の席に座った。
奏は首を傾げていると今度は後ろから自分の名前が呼ばれたことに気づいた。嫌な声だった。
「やぁ!靫空、おはよう!」
格好つけたような笑顔に見下すような目つき
「お、おはよ、蛇屋君。」
このキザな男は蛇屋(へびや)誠司(せいじ)、なんとも有名な医者の息子らしいが、性格は超ナルシスト、クラス替えで奏と同じクラスになった事でより一歩的に話しかけてくる回数が1日に何日も増えてきた。正直ウザい・・・
「靫空さぁ、今日放課後ちょっといいかな?話したいことがあるんだ。」
「いや、ここで言えば?」
「いや、ここで言うのはさ・・・恥ずかしいからね。フッ・・・」
キザっぽい所もまたウザい・・・
すると周りが一斉にコソコソと話をし始めた
「蛇屋告る気?マジで!?」
「絶対無理無理、だって靫空さんガード固いし。」
確実に無理な戦いに向かってくる勇気に答え、放課後出会った瞬間、勢いよく振ってやろうと奏は心に誓った。
◇
一方、奏多はHR開始ギリギリまで校門に立っていた。
現在没収物の数はまずまず。CD、ゲーム機、カードゲーム遊び道具が大半を占めていた。
「そろそろかな・・・」
奏多が腕時計を見ると校門が閉じるまであと20秒を切っていた。すると、少し遠くからドドドドと音が聞こえてきた。
「セーーーーーーーーーーーーーーフ!!だよな?」
「はい。セーフです。」
スライディングでダイナミックエントリーしてきたのは風紀委員会会長、草薙 撫子(くさなぎ なでしこ)だ。
学園では喧嘩最強、未だ不良との戦いで一戦もの敗北無し。その割に学園でも人気が高く、奏多も一目置いている。だが、風紀員というのに制服は真面目に着ずに、何時も学校のブレザーを肩にかけ、下にはタンクトップとかなり無防備だ。
長い黒髪をたなびかせ優雅に奏多に向かって歩いてきた。
「ご苦労、奏多。悪いないつも私の代わりをしてくれて。」
肩をバシバシ叩いてくるが奏多は一切表情を変えない。
「いえ、草薙さんが遅れてくるのはもう慣れてますから。」
ニッコリとそういうと、草薙もニヤリと笑う。
「おっ!言うねぇ!だが、生意気な後輩には・・・こうだ!」
奏多の頭をホールドしブルキングヘッドロックを掛けた。
草薙な豊満な胸が奏多の顔を埋めている。
だが奏多は冷静に肩をタップし技を解かせた。
草薙さん、せめてご自身が女性だともう少し自覚してください。はしたないですよ。」
後輩にしてされ草薙はカッカッカと高笑いした。
「あー、やっぱりお前は最高だ!!その調子でがんばれよ!じゃあな!!」
そう言うと草薙は全力ダッシュで校内に向かった。土埃が立ち、地面が若干削れていた。
「やれやれ。正に嵐だな・・・て、これ、草薙さんの仕事なんだけど・・・」
奏多は溜息をつきながらクラスへと向かった。
教室に着くといつも通り皆がワイワイ騒いでいた。
奏多は席に着くとお茶を一口飲み、落ち着いた。
「うぃーす、奏多。今日もお疲れ!」
「おはよう大前、どうも。」
大前 輝明(おおまえ てるあき)、奏多とは中学からの付き合いでクラスのムードメーカーだ、弓道部に所属しており、アイドルオタクという意外な一面がある。
「そういや、さっき風の噂で聞いたんだがお前の妹告白されんだとよ。」
奏多は首を傾げる。
「されたんじゃなくて、されるの?変な話だなあ。」
「相手は医者の坊ちゃん。でも性格は最悪らしい、結構やばい奴らしいぜ。中学時代にも女がらみで事件起こしてたって噂だし」
大前の情報はかなり信憑性が高いので不安に成ってくる。
「それは心配だな、でも奏は多分断るだろう。あいつはそんなに馬鹿じゃない。」
奏多はお茶をもう一杯飲み、落ち着いている。
だが、大前は呆れていた。
「お前、妹の恋愛事情は全く知らないのか・・・お前、完璧超人だが、鈍すぎるのがたまに傷だな。ハハハ」
その後授業が始まり、奏の事を気にしながら授業を受けあっという間に昼休みになった。
「奏多~飯食おうぜ。」
「すまない大前、今日は風紀委員会と生徒会のの集まりがあるんだ。」
奏多は弁当を持ち廊下に出た。
「そうか、あの面子でか・・・まぁ、がんばれよ。」
「うん、行ってくるよ。」
大前に見送られ、奏多は急ぎ生徒会室に向かった。
一方奏は教室で仲のいいメンバーで弁当を食べていた
「やっぱ奏の弁当は豪華だねぇ~」
「お兄さんの手作りでしょ?いいなぁ~」
奏は照れながらお弁当を開けると色鮮やかな食欲をそそる弁当だった。
だが、そこに何故か蛇屋が現れた。
「へぇ~素人の手作りにしちゃまぁまぁだな。でも、僕の家は一流の料理人が弁当を作ってくれるからね、使ってる素材も最高品、そんなので喜ぶなんてまだまだだねぇ」
その場にいるものを皆不快にさせるのがお上手な蛇屋を相手にすることなく楽しくなる食事がそがれていくのだった。
「しかも、何だいそのちゃちい犬と猫のキャラ弁、ハハハ、そんなの小学校で卒業だよ。こんなの作るなんて神経疑っちゃうよな」
「これ作ったのお兄ちゃんなんだけど」
「へぇ、あの完璧魔人がねぇ、可愛い感性をお持ちだこと、でもね知ってるんだよ、君のお兄さん、大したことないって」
カチンと来た、奏は言い返そうとしたが・・・が兄の言葉を思い出す。
『口ばかりの敵に耳を貸すな、去勢だけ張っている奴は大概弱い、だからやることは1つ・・・』
-無視だ
蛇屋に一切の関心を無くし、奏は周りの友人とご飯を食べ続けた
「お、おい!聞いてるのか?僕の話を!!」
だが、誰も反応せず、蛇屋は舌打ちをして教室を後にした。
私のお兄ちゃんは完璧すぎる 朱雀 蓮 @suzakuren
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