メジャーになったガンダム

1981年2月は、何をしていた

　1981年２月。大学一年生でした。高田馬場の四畳半アパート９千円。酒屋さんの経営する築何年か不明な、所謂木造モルタル造り。風呂無し、トイレ共同、電話はなく、酒屋さん取次。今の学生からは想像もつかない環境が普通の時代。フォークソング「神田川」の舞台になったといわれる銭湯も近くにあった。

ガンダムは、浪人時代に読んだOUT(アニメック ではなく)で、特集が組まれているのは見ていたが、予備校の寮生活を送っていたため、視聴はままならず。初めて目にしたのは、上京後のそのアパートの一室だった。

まだ、ビデオデッキは高価で、当然持っていなかったので、再放送をリアルタイムで必死に見た。

先に前評判の高さだけは知っていたから、初見にもかかわらず、追認するような気持ちで視聴した気がする。「凄いんだ」感の先入観があったのは、ちょっともったいなかったかな。

それでも、大気圏突入シーンのリアルさ(実際どうかは知らないのに)とか、リュウやマチルダさんの容赦ない死、何だかわからないニュータイプ概念と効果に感動したことはよく覚えている。

小・中学生時代に大好きだったマジンガーZ・グレートマジンガーの系譜や、ライディーン・コンバトラーV・ボルテスVとは一線を画した"兵器然"としたロボットは新鮮だった。"モビルスーツ"という言い方も。

驚きという点では、中学生の時に見た「宇宙戦艦ヤマト」の、「ドイツっぽい艦隊と日本の大和が宇宙で戦ってる!! すげぇ」感と並ぶものがあった。

そんな大学1年生時代の2月22日。同じ新宿区で、こんな凄いイベントがあったのに、自分は参加していない。

イベント告知が載っているアニメックは買っていたのに....なぜだ。

　記憶を辿ってみると、ちょうどその2月は、サークル活動に忙殺されていたのだ。1年生で参加したマンガ系サークルが分裂して、新サークルが立ち上がったのがまさに2月上旬。

その新しいサークルは「同人誌を作ってコミケなど即売会で売る」というのが、大きな目的で、サークル誌第一号づくりに没頭していた。分裂元のサークルは、そういう事はしないと明言していたので(ゼミと称して皆でマンガを楽しく語るのが全て)、目にもの見せようと必死だった。

ほぼ素人ばかりが、一か月ほどで作った創刊号は、3月中旬に刷り上がり、大阪の同人誌即売会(Gマート)に無事参加できた。

とはいえ、もったいないことをしたものだ、、、一日くらい行く時間はあったはずだけど、サークル立ち上げ以外の情報から遠くなっていたのだろう。

　そういうわけで、私が伺い知る「アニメ新世紀宣言」経験は、アニメックでの記述のみとなる。

"カリオストロの城"の、ルパンがクラリスをさらっていくダイナマイト(花火?)シーンが表紙の「アニメック　VOL.17」４８０円が、今も手元にある。

古本屋で買ったのではなく、当時新刊で買ったものなので、同時代感溢れる実物だ。

巻頭特集が「機動戦士ガンダム映画化最新情報」。その特集最後の17ページめに掲載されていたのが「アニメ新世紀宣言大会」の告知だ。

キャッチコピーは「メジャーになったガンダム」。

そこには、恐らく新聞広告がそのまま切り貼りされ、少々見づらい品質で

「２．２２アニメ新世紀宣言大会へ　新宿東口広場」とあった。

アニメ新世紀宣言全文と供に。

注目すべきは編集部による記事部分。少し引用する。

"ガンダム5000人キャンペーンの一環である新宿東口広場は、予想以上の熱気に包まれていた…と本来なら書くべきなのだが、２月17日現在では、まだトミノコ族出現のウワサも聞かない。　～中略～　サンライズ・松竹側がエントリーしたトミノコ族は約60人、編集部の呼びかけに応じてくれたのが約40人。いったいどのような混乱図が展開されるか、次号でその詳細を　以下略～"

トミノコ族というのは、恐らく当時社会現象化した『竹の子族』をもじってコアなガンダム(富野監督)ファンを表現したのだろう。ファンを100名ほど仕込んで、イベントの盛り上がりを創ろうとしていたことが伺える。雨天の場合を心配するなど、「メジャーになった」と書きながらも、誌面の半信半疑感がぬぐえない。

では、実際にどうだったかは次号、、、ではなく何と同じページの欄外に記されている。こちらも引用すると

"●急報　2.22アニメ新世紀宣言大会は、晴天の下、公称2万人(実数1万2千人)のファンが参加し大成功のうちに終了しました。多くのガンダムサークルの無償協力がなければ、この成功はなかったでしょう　～略"

あれ?　ということで、告知号のアニメックを持っていたのに、なぜ行かなかったと書いたが、実はそのアニメックVOL.17が出た時には、イベントは終了していたのでした。知ってもどうしようもなかった。。。とまあ、自己解決したのでした。